顧客起点で再設計する「営業現場の働き方改革」

2018年9月19日(水)に日本マイクロソフト関西支店のセミナールームで、『顧客起点で再設計する「営業現場の働き方改革」』と題するセミナーが開催された。製造業を中心に多くの聴講者が集まり、会場は熱気に包まれた。「営業担当者が様々な作業に費やす時間は業務活動の約3分の1に当たる」「初回訪問、見積提出等、案件進捗の可視化により、営業スキルの平準化やノウハウの共有が図れた」等、示唆に富むメッセージを聞きながら熱心にメモをとる聴講者の姿が印象的だった。データを使って客観的に説明し提言を行う日本マイクロソフトの兼城氏、導入事例を通じて具体的に営業改革のポイントについて話す古野電気の永田氏とシーイーシーの土岐氏。他人事ではなく自分の課題として考え、気づきが得られるセミナー内容の充実度は、聴講者の満足した顔にあらわれていた。

AI 必須? いま求められる営業変革とは

営業担当者が営業活動以外に費やしている時間は67%

「お客様は営業担当者に何を求めていらっしゃるのでしょうか?」という問いかけから、日本マイクロソフト Dynamicsビジネス本部 兼城ハナ氏のセミナーは始まった。一瞬の間の後、兼城氏は衝撃的な数字を口にした。「80%近いお客様が、単なる商品の説明ではなく、自分もしくは自社に特化した情報、自社のマーケットに対する有益な情報を求めており、新たな視点や気づきをもたらしてくれることを期待されています。自分が知りたいことや話したいことを先読みして用意してきてほしいというのが、お客様の本音であることが、この数字から見えてきます」

大阪会場では、興味深いデータ分析の紹介についてセミナー参加者が熱心に聴講

デジタル時代において、製品やソリューションを選定する場合、すでに多くのお客様が様々な調査を行い、情報収集を行っている。「57%以上のお客様が営業担当者に会う前に、ほぼ意志決定をしているというデータがあります」と兼城氏は指摘し、「お客様の期待値に対し、現実はどうか」と新たな問いかけを行った。
お客様の期待に応えるためには、お客様の視点に立ち、多角的に情報を収集し考察を深めることが必要だ。しかし、そうした時間的余裕がないのが、営業担当者の現実である。営業業務の効率化を支援する営業支援システムも、営業業務を管理するツールになっていると兼城氏は指摘する。「上司に提出するレポートの作成や日報、勤怠管理、経費精算等、営業担当者が事務作業に費やす時間は週に1.5日、業務活動の約3分の1に当たります。また営業担当者が営業活動以外に費やしている時間が67%もあるというデータもあります」

データ収集の敷居を低くし、AI が気づきを生み出す

真に効果的な営業支援とは何か。兼城氏は、1. 営業の日常全方位を高効率にする仕組み、2. お客様が期待している自身のビジネスに役立つ情報、新たな気づきや示唆をもたらす提案といった営業活動をサポートする仕組みの大きく2つのポイントをあげた。この2つのポイントを満たすべく、マイクロソフトでは CRM と ERP の機能を統合した Microsoft Dynamics 365 と、Microsoft Office 365 を組み合わせ、社内実践による営業変革を推進していると兼城氏は話す。重要なポイントは、データ収集の敷居を低くし、集めたデータを AI により価値ある情報に変えていくことだ。
「営業担当者が普段利用しているメーラーやスケジューラーに入力した情報を自動的に収集し、一元管理を実現します。営業担当者に負担を強いることなく、収集したデータを使って機械学習を行い、アクションにつながる気づきや示唆を生み出します。AI が各営業担当者のアシスタントとして過去の提案資料、クレーム対応等の情報を提供するとともに、コミュニケーション不足の注意喚起や提案のタイミング等のアドバイスを行います。マイクロソフトの社内実践では、商談サイクルの短縮化や営業1人当たりの売上高拡大につながっています」
営業活動で最も重要でありながら、非常に難しいのが、自身のビジネスに有益な人物と良好な関係を築くことだ。人脈づくりは一朝一夕にはいかないものだが、兼城氏は「意思決定者にたどりつくための確実な線を AI が導いてくれる」と話し、その理由を説明した。
2016年、マイクロソフトは世界最大規模のビジネス特化型 SNSのLinkedIn(リンクドイン)を買収し、そこに AI を導入した。「営業担当者は LinkedIn の中で、社内の A さんは前の会社で一緒だったとか、B さんはその人のコメントをよくフォローしているとか、商談における意志決定者と関わり深い人物を探しあてることができます。また LinkedIn の記事やコメントをもとに、AI がこの相手にはこうした話題を話した方が良いといったアドバイスもしてくれます」

Microsoft Dynamics 365 とMicrosoft Office 365、さらにソーシャル上の人物情報である LinkedIn を連携させることで、営業スタイル革新が加速。

兼城氏は最後にこう締めくくった。「マイクロソフトは営業担当者が日々の業務で利用する Microsoft Dynamics 365 や Microsoft Office 365 に、 AI を標準機能として組み込んでいます。AI を利用していることを意識することなく、メーラーやスケジューラー等の便利な機能として自然に使っている状態が理想です。それでは Microsoft Dynamics 365 によって日々の営業活動をどう改革できるのか。具体的なお話はこの後に登壇される古野電気さんとシーイーシーさんからご紹介があります」

古野電気が語る!営業改革成功の秘訣と苦労話

お客様を軸とするデータ活用により営業改革を推進

「担当営業の勘や経験に頼る営業スタイルから、いかにして脱却したか。本日は実際の体験から、運用面の苦労話も含め、データに基づく営業改革のポイントについてお話したいと思います」と古野電気 システム機器事業部 事業管理部企画課 GNSS・通信ソリューション担当課長 永田靖徳氏はセミナーの冒頭で語る。
古野電気は、1948年に世界で初めて魚群探知機の実用化に成功して以来、舶用電子機器分野において独自の超音波技術と電子技術をもとに数々の世界初・日本初の商品を提供し続け、世界80カ国以上に販売拠点を有するグローバル企業だ。これまで培ってきた技術を活かし、ヘルスケア、通信・GNSS( Global Navigation Satellite System /全球測位衛星システム)、防災・監視ソリューション等、陸上における産業用電子機器分野の事業も展開している。売上全体の約80%を占める海上のビジネスに加え、もう1つの事業の柱として陸上のビジネスを育てていくことが重要な経営課題となっている。

古野電気株式会社
システム機器事業部
事業管理部企画課
GNSS・通信ソリューション担当課長
永田 靖徳 氏

陸上のビジネスを担う営業面の課題について永田氏は説明する。「従来は、報告方法もバラバラで、受注予測も担当営業の感性に依存しており、どういうプロセスで見積を出し、どれくらい経過したのか等、案件の進捗管理ができていませんでした。また過去の成功事例や失敗事例を共有し、次に活かす仕組みもなかったのです。現状を打開し営業改革を推進するべく、Microsoft Dynamics 365 を導入しました。クラウドサービスでスモールスタートにより初期費用を抑制できる点も採用のポイントとなりました」(永田氏)

株式会社シーイーシー
サービスインテグレーションビジネスグループ
第二営業部 部長
土岐 直路 氏

古野電気におけるデータに基づく営業改革で肝となったのが「お客様を軸に Microsoft Dynamics 365 の中でいろいろできること」と、今回の導入を支援したシーイーシー サービスインテグレーションビジネスグループ 第二営業部 部長 土岐直路氏は指摘する。「報告書や資料を作成する際に様々なツールを利用すると手間や時間がかかる上、データが散在してしまうことから一元管理も難しい。Microsoft Dynamics 365 は Microsoft Office 365 との連携もスムーズに行える等、お客様起点でデータを収集・蓄積、一元管理して活用するまでの仕組みを容易に構築できます」
1968年に創業した、独立系システムインテグレーターのシーイーシーは、マイクロソフトのパートナーとして10年以上にわたりMicrosoft Dynamicsの導入支援サービスの提供を通じ、企業の成長に貢献している。「近年、Microsoft Dynamics 365 のお問い合わせの9割が営業改革を目的とするものです」(土岐氏)

Microsoft Dynamics 365 は普段使い慣れている Outlook や Excel などとシームレスに連携。営業担当者の負荷を高めることなく、業務生産性向上に寄与する。

データを分析してアクションを起こしていく文化が根付いてきた

Microsoft Dynamics 365 の導入により古野電気の営業はどう変わったか。その変化を象徴するデモ画面が会場に映し出された。「初回訪問、プレゼンテーション、見積提出等のプロセスに対し、そのフェーズが終了したときに担当営業が Microsoft Dynamics 365 の画面上でチェックを入れることになっています。案件進捗の可視化により、上司はタイムリーかつ的確にアドバイスを行うことが可能です。また現時点の見積提出件数も把握できます。さらに初回訪問等で何をすべきかがメニューで表示されるため、営業スキルの平準化も図れます。お客様に複数の商品の担当営業が訪問した場合、他の担当営業の活動状況も簡単に共有することが可能です」(永田氏)
月に一度の営業会議も進化したと永田氏は話す。「従来、報告会に過ぎなかった会議が、徐々に営業「戦略」会議に革新し、紙やエクセルだった会議資料も Microsoft Dynamics 365 のダッシュボードの利用に変革しました。資料作成業務の大幅な効率化とともに、会議の参加者は自ら気になる箇所をドリルダウンして問題点を追求できます。担当営業も把握していなかったのですが、データ分析によりある商材が特定の条件下で受注率が4割になることがわかりました。こうした気づきを営業戦略に活かしています。また経営層もダッシュボードを使って、迅速かつ的確な意思決定に役立てています。データを分析してアクションを起こしていく文化が根付いてきました」

Microsoft Dynamics 365 は商談の進捗状況を可視化して、効率的な営業活動にフィードバックできる。

ツールを使って報告するだけではノウハウの共有を実現できないと土岐氏は強調する。「データを蓄積していくことで、成功・失敗のパターンはもとより、ある商材がこのフェーズになったときにどういうアクションが必要になるか等も見えてきます。AI の活用により、効率的かつ効果的な売り方を導き出すことにもつながっていきます」
導入がゴールではなく、どう活かしていくかが大事になる。運用面で苦労した点について永田氏は言及した。「営業一人ひとりに必要性やメリットを理解してもらうために啓蒙活動を行いました。またマネージャーや経営層に対し、データに基づいた意思決定の重要性について説明しました。苦労はあったのですが、営業の意識改革のきっかけとなったことは非常に良かったと思っています」
今後の展開について、永田氏は4つのポイントを挙げた。「1つめは上司と部下のコミュニケーションに、 Microsoft Dynamics 365 のコメント機能等の活用。2つめは他の部門も非常に関心を持っており、ルート営業等の既存事業への展開。3つめは Office 365 を導入し Outlook とのさらなる連携を図ることで、お客様からのメールや、営業個々が作成したカレンダーをお客様データと紐づけて Microsoft Dynamics 365 で一元管理すること。4つめは中期計画(事業計画)への活用です。またIoTを活用し、機器の保守に関する新しいサービスの創造に向け、Dynamics 365 for Field Service による取り組みも進めています」
お客様を軸とするデータ活用により、営業改革を推進する古野電気。同社の取り組みは、日本マイクロソフトの兼城氏が紹介した AI による営業スタイル革新につながっていく。セミナー会場では古野電気とシーイーシーによる具体的な事例紹介に、参加者が身を乗り出して聴講する姿が印象的だった。

顧客起点で再設計する「営業現場の働き方改革」、大阪でのセミナーは好評のうちに幕を閉じた。

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