デジタル営業変革 最前線Vol1

老舗の電子機器メーカーの挑戦!
サービタイゼーションで市場を切り拓け

2018年11月6日、日本マイクロソフトが主催する技術カンファレンス「 Microsoft Tech Summit 2018 」において、製品をサービスとして提供するビジネスモデル変革「サービタイゼーション」についてのセッションが開催された。製造業のサービス化の重要性について日本マイクロソフトの兼城氏がデータを提示した後、老舗の船舶用・産業用電子機器メーカーである古野電気の永田氏が登壇。「コト売りもピンとこない社員がほとんどだった」という状況から、いかにサービタイゼーションを実現していったのか? 組織改革や自社の強みを活かしたニッチ市場開拓など、製造業のサービス化への道を拓くヒントが紹介された。

INDEX
◆ 顧客中心主義を進化させ
「サービタイゼーション」でイノベーションを起こす
◆ コト売りへの理解がない、
OEM文化の定着などの状況をどう打開するか
◆ Microsoft Dynamics 365を活用し SNS 連携で高付加価値のサービスを提供
◆ 自社の強みを活かしサービタイゼーションでニッチな市場を創出

顧客中心主義を進化させ
「サービタイゼーション」でイノベーションを起こす

サービタイゼーションとは、製品をモノとしてではなく、サービスとして提供するビジネスモデル変革の動きだ。今、「売れば終わり」の売り切り型ビジネスモデルから、データに基づく新たな価値を製品に付加し新しいサービスを生み出すビジネスモデルへの転換が加速している。その効果について、日本マイクロソフト Dynamicsビジネスアプリケーション本部 プロダクトマーケティングマネージャー 兼城ハナ氏は興味深い数字を提示した。
「2013年の調査で、サービス型ビジネスモデルが売上拡大に効果があると回答した製造業系企業は80%以上に及びました(※1)。では、期待された効果は出たのでしょうか? 2017年の調査では、いち早く IoT に取り組んできたトップクラスのフィールドサービス企業において従業員の生産性が12%向上(※2)、IoT を活用し初回修理率を80%以上達成している企業ではサービスによる収益が平均6.2%増加(※3)という回答結果が公表されています。また従来、人が定期的に点検を行う定期保全に比べ、IoT を活用し故障する前に修理する予兆保全は、圧倒的に効率よく機械の保全が行えるため、平均12%以上のコスト削減を達成できたとのデータが2015年に出ています(※4)」
ものづくりにこだわりと誇りを持つ日本の製造業において、サービタイゼーションを実現するためには意識改革が必要だ。一方、これまで培ってきた技術力やノウハウは、競争力のあるサービスを創造する上でも大きな強みとなる。「日本のものづくりが大切にしてきた顧客中心主義を進化させ、サービタイゼーションに取り組むことでイノベーションを起こしている企業が既に出てきています。これからご紹介する古野電気様の事例は、デジタル時代の製造業の進むべき方向を模索する上でのヒントに溢れていると思います」と兼城氏は話し、古野電気の永田氏を招き入れた。

※1 Aberdeen Group,2013、※2 Aberdeen Group,2017、※3 Columbus Global,2017、※4 Data Center Journal,2015

サービス型ビジネスモデルが売上拡大もたらす効果は大きい。グローバルでの取り組みが急速に進む。

コト売りへの理解がない、
OEM文化の定着などの状況をどう打開するか

古野電気株式会社
システム機器事業部 事業管理部 企画課
GNSS・通信ソリューション担当課長
永田 靖徳氏

「サービタイゼーションの実現に向けた取組みでは本当に苦労しました。まず、モノではなく、モノを使った利便性や体験に価値を置くコト売りがピンとこない社員がほとんどでした」と、古野電気 システム機器事業部 事業管理部 企画課 GNSS・通信ソリューション担当課長 永田靖徳氏は振り返る。
古野電気は、1948年に世界で初めて魚群探知機の実用化に成功して以来、船舶用電子機器分野において独自の超音波技術と電子技術をもとに数々の世界初・日本初の商品を提供し、世界80カ国以上に販売拠点を有するグローバル企業だ。その技術力を活かし、医療機器、GNSS( Global Navigation Satellite System /全球測位衛星システム)、ETC車載器、防災・監視ソリューションなど陸上における産業用電子機器分野の事業も展開している。
同社の抱える経営課題について「海上ビジネスが売上全体の80%を占めています。陸上ビジネスをいかに伸ばしていくかが、当社の成長の鍵を握っています」と永田氏は語り、こう続けた。「陸上ビジネス拡大のための手段としてサービタイゼーションに取組んでいますが、当初は課題が山積していました」
同社の陸上ビジネスでは50年前から OEM事業を展開しており、OEM文化が根付いていると永田氏は話す。「クオリティ、コスト、デリバリなどお客様のニーズに応えることは非常に得意です。その反面、『事業戦略はお客様が考えること』といった会話が日常的に交わされています。サービタイゼーションの実現に向け、他メーカーとの協業にも取組みましたが、どちらが費用を出すのか、意思決定は誰がするのかなどを明確にできず、相互仕入れで終わっていました」
OEM文化、進まない協業、そしてサービタイゼーションに対する認識と理解も浸透していないといった状況を打開するべく、事業戦略の立案とその実現を果たす組織改革に向け、「仮想分割によるセグメント制」を取り入れたと永田氏は話す。
「事業部を実際に分割するとセクショナリズムが生まれてくるため、営業、開発、製造、企画などの部門横断的に、OEM事業、インフラ事業、ETC事業、GNSS事業、そしてサービタイゼーションに注力するソリューション事業の5つのセグメントに仮想分割しました。各セグメントのセグメントリーダーが事業戦略を立案し実行していきます。例えば ETC事業は品質の高い製品を安く早く届けるためにオペレーションの最適化を追求する。ソリューション事業はソリューションプロバイダーに進化し、顧客の戦略的パートナーになっていく。事業戦略は経営層だけでなく、社員自らが当事者意識を持って考えるべきことだという意識改革を促し、組織の活性化につなげています。そうしたベースがあって戦略実現のためのサービタイゼーションを進めることができるのです」

Microsoft Dynamics 365を活用し
SNS 連携で高付加価値のサービスを提供

同社がサービタイゼーションの最初の一歩として取り組んだのが、生化学自動分析装置という医療機器だった。「同装置は血液中に含まれる脂質、糖分、たんぱく質などを自動的に精密測定します。従来は、医療機関に装置を販売することでビジネスは終わっていました。今は、個人情報をマスキングして装置に関する情報のみをクラウドに収集し、それらのデータを Microsoft Dynamics 365 で分析、さらに SNS と連携することで付加価値の高いサービスを提供し顧客満足度の向上を図っています」と永田氏は話し、仕組みを説明する。
装置の異常を知らせるアラートが Microsoft Dynamics 365 に上がると、即時その情報が営業担当のスマートフォンに通知される。通知を受けた営業担当は医療機関に駆け付け、障害が発生した装置の写真をスマートフォンで撮影しSNSを使って報告を行う。報告データは Microsoft Dynamics 365 に収集され、それを上司が確認する、といった具合だ。
「フィールドサービスの迅速性や確実性の向上とともに業務の大幅な効率化が図れました。また蓄積したデータを AI で分析し予兆保全や製品開発に活かすことも重要なテーマとなります」と語る。その効果は保守業務改革にとどまらなかったと永田氏は付け加える。

古野電気はサービタイゼーションの第一歩として、生化学自動分析装置を軸にした情報利活用に取り組んだ。(講演資料より抜粋)

「生化学自動分析装置の測定では試薬を使います。コピー機に例えると、トナーの役割です。データ分析ツールの Power BI を使って装置の稼働状況を分析し試薬の残量を正確に割り出すことで、試薬がなくなりそうな段階で病院の医薬品担当に試薬の補填を提案できます。装置販売のみならず、試薬という消耗品ビジネスに参入することができました」
同社においてサービタイゼーションの取組みは、ビジネスプロセス変革を推進するデジタルトランスフォーメーションの一環という位置づけだ。同社は Microsoft Dynamics 365 を利用しデータに基づく営業改革も推進している。「以前の営業会議は、営業の進捗報告が中心でした。今は Microsoft Dynamics 365 のダッシュボードを使って、各セグメントの戦略に営業がフィットしているかどうかを議論する、営業戦略会議に変わりました」と永田氏は話す。

自社の強みを活かし
サービタイゼーションでニッチな市場を創出

サービタイゼーションで頭を悩ますのは、何をどうサービス化すべきなのかということだろう。この点について、セミナーの最後に永田氏はヒントとなる事例を紹介した。
「当社は ETC の技術応用でインフラ装置を作り、さらに高速道路以外でも事業拡大しています。車両の自動識別と IoT により ETC搭載の車が月極駐車場に来ると、ハンズフリーで入退できるサービスを始めています。お客様はこれまで使っていた紙の駐車券をペーパーレス化することで、利便性の向上やコスト削減とともに地球環境保護への貢献が図れます。この仕組みを応用し、マンションやショッピングモール、物流など各シーンに合わせたソリューションとして提供しています。自社が強みを持つ製品を核にしたニッチな市場を創り出し、それをパッケージ化して提供することでビジネスチャンスを拡大していくことができます」
サービタイゼーションを実現する上で、「モノからコト売り」、「フィールド作業支援」、「遠隔監視」、「保守情報の一元化」の4つのキーワードを重視したと永田氏は話す。「こうしたキーワードを使って折り紙を折るように、これまで培ってきた技術やノウハウといった強みを活かし、その企業でしかできないサービスに仕立てていくことで、サービタイゼーションは推進できると思います。大切なことは、事業戦略を実現する手段としてサービタイゼーションを描くという視点です」とのメッセージで締めくくった。

サービタイゼーションという概念について具体的な取り組み事例を語ってくれた古野電気の永田氏。
Vol.2を読む
Microsoft Tech Summit 2018 レビュー
RPA と Dynamics 365 で業務プロセス改革!138万時間の余力創出、1,200トンの紙削減へ
Vol.3を読む
Dynamics 365 ユーザー会レビュー
2社の導入成功プロセスに学ぶ!個人と組織を強くするデジタル営業変革

● 関連リンク

古野電気株式会社
https://www.furuno.co.jp/
Microsoft Dynamics 365
https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/

● 関連ページ

「いま求められる営業変革とは」
https://www.microsoft.com/ja-jp/business/dynamics365/sfa.aspx