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社員を幸せにしたい 会社がすべきこと

Vol.2 事業承継で慌てる経営者 突然訪れるリスクにどう備える? エヌエヌ生命保険 チーフマーケティングオフィサー 信岡良彦氏に聞く 《後編》

信岡良彦 のぶおか・よしひこ1977年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2001年アイエヌジー生命保険(現・エヌエヌ生命保険)に入社。営業戦略室長、経営企画部長などを経て現職

伊藤そうしたケースとは逆に、これまで保険金をうまく活用した会社で印象に残っているケースはありますか?

信岡先代が保険でしっかりとした備えをされていたケースでは、資金面での不安なく事業承継ができたことはもちろん、後継者が自分なりの新事業を考えて工場を拡張しようとしたときに保険金を活用し、当初計画よりも設備が充実した工場にできたという例がありました。資金繰りに保険金を使うだけでなく、将来のために保険金が貢献できた例としてよく覚えています。

時代の変化を保険で乗り越える

伊藤麻美 いとう・まみ東京都出身。上智大学を卒業後、ラジオやテレビのDJを経て、米国で鑑定士・鑑別士の資格を取得。2000年、父が創業した日本電鍍工業の社長に就任。貴金属ジュエリーの卸販売を行うジユリコの代表も務める

伊藤私が会社を継いだときは、あらゆる場面で資金が足りませんでした。その上、社長の経験がない私は銀行から借り入れもできず大変でした。

当社は1956年創業で、当時は事業承継のことなど考慮しておらず、今振り返ると承継に関するさまざまな取り決めもアバウトでした。ところが、今は事業承継のために定めるべきルールが細かくなり、昔の常識とのギャップが大きい。古い企業ほどアバウトな感覚のまま経営していて、グローバルスタンダード時代の経営に対応できていません。後継者は先代の経営が古いと分かっていても、なかなか言い出せない面があるようです。

信岡確かに、私の知る範囲でも歴史のある企業ほど、同様のケースが散見されます。たとえば、長年お世話になった税理士や親戚などに会社の株式を渡しているケースをよく聞きます。結果として、後継者は事業承継後に分散していた株式を集約するのに苦労しておられる。こうした株の買い取りの際にも資金が必要になるのですが、いざ承継をするという場面まで認識できていない後継者は多いようです。

伊藤当社のようなめっき・表面加工という仕事では、先代の時代に比べると環境対策にも大きなコストがかかります。排水などの環境基準が先代の時代とは比較にならないほど厳しくなっているのです。そのため、めっきの技術はあるのに環境対策のための設備更新ができずに廃業してしまうという会社をよく目にします。もったいないと思いますね。こうした将来のリスクに備えるにも、保険は役立つのではないでしょうか。

信岡確かにそうですね。おっしゃるように、将来のリスクに備えた保険金の用途はさまざまなものがあります。しかし、我々も十分に情報を提供できていません。保険がどのようにお役立ていただけたのか、事例をウェブなどを通じて、もっと広く発信していきたいですね。

日本電鍍工業の工場内の様子。薬液処理と洗浄を繰り返して表面を仕上げていく