日経ビジネスONLINE SPECIAL
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社員を幸せにしたい 会社がすべきこと

Vol.3 障がい者雇用を持続させるために経営の隠れたリスクを再認識 フジリネンサプライ 小川雅人取締役に聞く

伊藤私も、初めは日本電鍍工業という会社を継ぐ気はありませんでした。しかし、1991年に父が急逝して倒産の危機を迎えたとき、自分の人生を振り返って、社員たちがいたからこそ、私は大学を出て、好きな仕事をして生きてこられたのだと気づきました。会社を潰して私を育ててくれた社員を路頭に迷わせるわけにはいかないと考えて社長になりました。

雅人私も同じような考え方で会社を継ぐことを意識しました。フジコグループには長く勤め続けてくれている社員が多く、私が赤ん坊の頃に抱いてくれたという人もいます。大学時代には社員の方に試合の応援にわざわざ京都まで来ていただいたりもしました。

ラグビーは一瞬一瞬の判断、決断の連続。目の前の相手にタックルするか、逃げるのか。自分には勇気があるのか、ないのか。常に自分を試されるスポーツです。大学日本一を目指していましたし、人間としての様々な部分を成長させてくれたと思っています。

そんな経験をさせてもらったからこそ、これまでサポートしていただいた人たちに恩返しをしたいと思ったのです。

「先義後利」の理念を大切に

伊藤純人代表が作り上げてきた、障がい者雇用に力を入れている会社の姿を後継者としてどう見ていますか。

雅人最初にNPO法人のさなえが設立された2008年、私はまだ学生でした。それに、父は家に帰ってくると仕事の話をほとんどしませんでした。ですから、なぜ父はこれほど多くの障がい者の人たちに働いてもらっているのだろうと不思議に思っていました。

実はフジリネンサプライを設立した1983年あたりから既に障がい者の人たちが何人も働いていたのです。健常者の従業員は、障がい者と一緒に働いて様々な経験をしてきました。障がい者がどうすれば働きやすいのかを全員で考えてきたからこそ、フジコグループ全体で障がい者が一緒に働ける様々な仕事を増やしてこられたのだと思います。

フジコグループは傘下にホテル、温浴施設、駐車場や飲食店など様々な業種・職種を持っていることが強みです。障がいの程度に応じて働いてもらいやすい職場を柔軟に提供することができます。可能な限り障がい者を受け入れ、あらゆる業務を任せられるように支援、指導していきたい。そして、グループ外から受注する仕事も今より増やしていきたいですね。

伊藤純人代表から経営のバトンを引き継ぐときには、雅人取締役も自らの考えを持って自立した経営をすることが大切になります。

雅人父からは「全てのことを私が死んでいる前提で考えろ」と言われています。それは「自分で自立して経営ができるようになれ」という意味だと思っています。ただ、父が掲げた経営理念である「先義後利」、つまり先に信頼関係を築けば、利益は後から付いてくるという考え方は引き継いで大事にしていきたいと思っています。

フジリネンサプライの工場に立つ雅人取締役(左)と伊藤社長。背後にあるのは、洗浄後、半乾燥したシーツなどを乾燥して伸ばす装置

伊藤後継者として自分が社長になったら、どんな会社にしていきたいと思いますか。

雅人父がいつも繰り返しているように、目先の利益ではなく、人のため、地域のために何をすればいいかを考えなければなりません。例えば、駐車場の運営でも、単に経済合理性だけを考えれば、無人のコインパーキングだけを増やせばいい。ただ、それでは雇用が生まれません。ですから、フジコグループでは管理人を24時間置く駐車場がほとんどです。何歳になっても働ける限り働いてもらえるような職場を生み出し続けること。それが自分のすべき仕事だと思っています。