日経ビジネスONLINE SPECIAL
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社員を幸せにしたい 会社がすべきこと

Vol.5 工場の困りごとを基に開発した生産支援ロボットで成長狙う 三和ロボティクス 沢宏宣社長に聞く

伊藤大きな受注を失った直後の資金繰りを安定させるために、社員を解雇しようと考えたことはなかったのですか。

はい、社員は解雇しないことを前提に考えてきました。社員は固定費ではなく、財産ですから彼らと信頼関係を作ることを重視しています。

伊藤危機を迎えても体をすくめて嵐が過ぎるのを待つのではなく、自ら営業をして仕事を切り拓くという姿勢には、お父様と沢社長に共通するDNAがあると感じます。

意識したことはありませんでしたが、確かに私は父と似ているところがあるかもしれませんね。父は「俺に付いてこい」というタイプでまるでブルドーザーのような積極的な人でした。私もその父を受け継いだようなところがあります。

ですから、社長になった当初は、自ら実務の最前線で働きながら、社員にも次々と高い要求を出していました。社員は私からの指示に応えることに忙しく、創造性を発揮する余裕はありませんでした。その状態では、やはり社員は元気が出ないし、会社も結果を出せませんでした。こうした反省から、社員が面白い、楽しいと感じて、自発的に仕事をしたいと考えてくれるようにするにはどうしたらいいかを今は常に考え続けるようになりました。

ロボット「ネクサート」の組み立て現場で社員と話す沢社長。就任当初はトップダウンで指示をするばかりだったことを反省し、最近は社員のやる気を引き出すコミュニケーションを心がけている

自社の困りごとが
ブランド価値に直結

伊藤社長を継いだのは、何かきっかけがあったのですか。

会長である父と私は人員を維持したまま会社を成長させたいという基本的なベクトルは一致していました。付加価値を高めるには、部品を受注するだけでなく、自社ブランドの強い独自製品を持つ必要があると2人とも考えていたのです。しかし、それを実現する手段については意見に相違があり、その方針を巡って何度もぶつかってきました。

特にリーマン・ショックで売り上げが3分の1に急減したときは、当時社長だった父と私は周りの社員があきれるほどやり合いました。父はあくまで、経験の豊富な職人による工場運営と、オーナー経営によるリーダーシップ発揮にこだわっていましたが、私は仕事を標準化して現場の省人化を進めることと、社員の中での管理職育成が会社の安定には必要だと考えていたためです。

ただ、いずれの経営体制で進めるにしても、自社ブランド製品の開発費を捻出するには、精密金属部品加工の売り上げを伸ばすことが必要です。当時の当社は売上高6億円、社員40人ほどの会社でした。自社ブランド製品を生み出している中小企業はどこも売上高15億円、社員100人程度の規模がありました。この規模に成長できなければ、独自ブランドは育てられないと気付いたのです。

「会社の足腰を鍛え直し、自社ブランドを生み出せる強い会社を目指すために社長を自分にやらせてください」

そう直談判して父には会長になってもらい、36歳のときに社長を継ぎました。