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社員を幸せにしたい 会社がすべきこと 優秀な人材が集まる、社員が幸せを感じる会社になるには何が必要だろうか。給料の額、福利厚生の充実、仕事のやりがいなどはもちろん重要な要素だ。ただ、こうした要素は会社の経営が安定して初めて実現できるものばかり。社員を幸せにできる、安定した会社になるための条件とは何かを探っていく。

Vol.7 お客様のために会社を存続したい 社員が手を挙げ、事業を承継

イーグルメンテナンス
佐藤健一社長に聞く

東京・中野のイーグルメンテナンスは、オフィスビルや分譲マンション共用部の清掃などを手がける。創業者が2016年に急逝したとき、後を継いだのは社員の1人だった佐藤健一社長だ。会社の借り入れに対する個人保証を求められるなどのリスクがあることもあり、親族でもない一般社員が社長を継ぐケースはまだ珍しい。しかも会社を承継するとき、同社は債務超過に陥っていた。なぜ、佐藤社長は会社を承継することを決断し、どのように経営を立て直してきたのか。日本電鍍工業の伊藤麻美社長が聞いた。

2018.09.18

東京・中野の本社前に立つ佐藤健一社長

イーグルメンテナンス

業種オフィスビル、病院、分譲マンションの清掃・メンテナンス
所在地東京都中野区
設立1998年
売上高2億6000万円(2018年6月期)
従業員約140人(パート・アルバイトなど含む、正社員7人)

「食べるための仕事は
自分で見つけてください」

佐藤健一 さとう・けんいち1970年兵庫県出身。早稲田大学を中退後、学生時代からアルバイトをしていたビルメンテナンス会社エヌ・イー・エヌ(現・イーグルメンテナンス)に就職。業務と営業全般の責任者を務める。2016年4月に創業者である先代社長が逝去すると社長に就任した
(写真:加藤康、以下同)

伊藤イーグルメンテナンスの主力事業であるビルメンテナンスは、具体的にはどんな内容なのでしょうか。

佐藤健一社長(以下、佐藤)はい、オフィスビルのほか、商業施設や病院、分譲マンションの廊下、エレベーターといった共用部の清掃やメンテナンスを請け負います。家庭向けのクリーニングサービスとは異なり、建物のオーナーとの間で年間、中には数年単位で長期契約を結んで仕事を請け負っています。

現在の正社員は7人です。契約社員やアルバイト、パートを含めた従業員は約140人。売上高は2018年6月期で2億6000万円。清掃用の洗剤などを販売するイーグルケミカル(東京・中野)などグループ会社を含めた連結の売上高は同期で約5億円です。

伊藤佐藤社長は大学時代からアルバイトとして働いていたそうですね。清掃という仕事の大変さも知りながら、そのままイーグルメンテナンスに入社したのはどうしてですか。

伊藤麻美 いとう・まみ東京都出身。上智大学を卒業後、ラジオやテレビのDJを経て、米国で宝石の鑑定士・鑑別士の資格を取得。2000年、父が創業した日本電鍍工業の社長に就任。医療器具や管楽器などのめっきを主力とする。貴金属ジュエリーの卸販売を行うジユリコの代表も務める

佐藤イーグルメンテナンスはオフィスビルなどのガラスクリーニングをする会社として1988年7月に先代社長が創業しました。屋上からゴンドラやロープを吊り下げて窓を拭く仕事です。私は大学時代から先代の下で、週2~3回程度アルバイトをしていました。

その後、私は大学を中退することになったのですが、当時は就職氷河期の真っ只中です。就職先を見つけることができませんでした。困った私は、そのまま今の会社に就職させてもらおうと、先代にお願いしたのです。当時は創業5年目で先代とアルバイトが私を含めて2~3人という小さな会社でしたが、困っていた私を先代が救ってくれたように感じました。

ただ、入社を認めてくれたとき、先代社長は私にこう言いました。

「うちは大卒の新入社員を雇っても、一生面倒を見るまでの力はない、だから、自分が食べられるだけの営業先を自分の力で見つけなさい」と。この言葉がずっと記憶に残り、この会社を存続させるには自分が営業をしていくしかないと入社以来考えてきました。