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Vol.9 衣類問屋の新しい役割探る 跡取り息子が家業を改革

ログズ
武田悠太代表に聞く

東京・日本橋の馬喰町、横山町周辺は衣類などを扱う現金問屋が集まる日本有数の衣料品問屋街だ。しかし、問屋から商品を仕入れる小売店の廃業などが進み、近年は街の衰退が進んでいる。横山町の東隣にある東日本橋の老舗衣料品問屋、丸太屋(東京・中央)の長男である武田悠太氏は2014年、丸太屋に入社するとともに買収した同業企業の再建を任された。それが現在、代表を務めるログズ(東京・中央)だ。ログズを通じて、家業である衣料品問屋の改革に向けて動き出した武田代表に、その狙いを日本電鍍工業の伊藤麻美社長が聞いた。

2018.10.12

ログズの本社ビル。1階は衣料品の現金問屋

ログズ

業種服飾雑貨卸、アパレルのOEM/ODMなど
所在地東京・中央
設立1996年
売上高8億5000万円(2018年7月期)
従業員15人

経営困難になった現金問屋を再建

武田悠太 たけだ・ゆうた1984年生まれ。2007年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、アクセンチュアに入社。14年に父が経営する卸問屋の丸太屋に入社。ニューカネノ(現ログズ)の買収・再生を担当する。16年ログズ代表に就任
(写真:菊池一郎、以下同)

伊藤ログズの代表に就任するまでの経緯をお教えください。

武田悠太代表(以下、武田)若者向け衣料の現金問屋ニューカネノ(東京・中央)が赤字続きで事業継続が困難になり、2014年に、父(武田洋氏)が社長を務める丸太屋(同)に事業を引き継いでほしいとの要請がありました。このニューカネノが現在のログズです。

これを機に、私にニューカネノの事業再建を担当してくれないかと父から声がかかりました。いずれ家業を継ぐつもりでいましたから、勤めていたコンサルティング会社のアクセンチュアを辞めて、丸太屋に入社しました。

問屋はどの業界でも厳しい時代ですが、衣料品問屋は特に厳しく、馬喰町、横山町の問屋全体も低迷が続いて、廃業する会社が目立っています。

その中で、丸太屋は中高年女性向けの衣料に強い問屋として健闘しています。年商は約60億円で、横山町の東側にある東日本橋に9階建ての本社ビルを構えて、ビル全体でこうした女性向けの商品を幅広く揃えています。

地元で廃業する問屋が増えると同業が集積しているメリットが薄れ、さらに客足が遠のきます。それを防ぐために、丸太屋は経営が厳しくなったほかの問屋の事業を引き継いで品揃えを強化し、中高年女性向けの衣類なら何でも揃うワンストップ・ショッピングができる場所にしてきたのです。ニューカネノは若者向け衣料に強みがあったため、品揃えの充実という観点からも丸太屋とのシナジーが期待できました。

私が代表に就いたとき、ニューカネノは売上高約5億円超で3000万円を超える最終赤字がありました。そのまま引き継いでも先がないと考え、コスト削減を軸に1年で会社を黒字化させた後、会社をドラスティックに変えて新たな事業を立ち上げようと、社名をログズと改めて再スタートを切りました。新しい事業が伸びたこともあり、18年7月期の売上高は8億円を超え、営業利益も安定的に創出できる企業となりました。

伊藤どのような手を打って黒字化を図ったのですか。

伊藤麻美 いとう・まみ東京都出身。上智大学を卒業後、ラジオやテレビのDJを経て、米国で宝石の鑑定士・鑑別士の資格を取得。2000年、父が創業した日本電鍍工業の社長に就任。医療器具や管楽器などのめっきを主力とする。貴金属ジュエリーの卸販売を行うジユリコの代表も務める

武田まず低迷していたアパレル卸の事業は丸太屋に集約しました。当時、20人近い従業員がいたのですが、3人を残し、丸太屋に転籍していただいたり、場合によっては退職していただいたりしました。その代わり、アクセンチュア時代の部下と高校時代の後輩を呼び寄せ、私を含めて3人をコアメンバーとして再出発しました。新しい事業を始めた今は従業員が14人まで増えており、今後も積極的に採用を行う予定です。

ログズが入るビルの1階にある店舗で、帽子やバッグなど服飾雑貨の現金問屋を続けながら、新たにOEM(相手先ブランドによる製造)とODM(相手先ブランドによるデザイン・企画から製造)を請け負う事業を始めました。中国で協力工場を開拓し、帽子、バッグ、メガネ、ベルトなどのファッション雑貨を製造してアパレルメーカーなどに納めています。ビームスやユナイテッドアローズ、アダストリアといったアパレル大手に取引先が広がり、最近ではプロ野球球団向けグッズの生産も請け負っています。

ブランドマネジメント事業にも手を付け、米ニューヨーク発のキャップ(帽子)ブランド「NEWHATTAN(ニューハッタン)」の日本法人を設立し、帽子の販売、ライセンス事業などを手がけています。