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社員を幸せにしたい 会社がすべきこと

Vol.9 衣類問屋の新しい役割探る 跡取り息子が家業を改革 みやじ豚 武田勇輔社長に聞く

伊藤それだけ親子の役割がはっきりしていると、事業承継を巡る確執などはなかったのですか。

武田全くありませんでした。私は父に対して生意気な意見を言っていると思いますが、父はあくまで私に優しく、とにかく認めようとしてくれているのだと思います。

人の幸せに共感することが大事

伊藤ログズの代表になって、何か意識の変化はありましたか。

武田大きく変わりました。社員のことを考えるようになりましたね。今は金余りの時代で資金調達も容易ですし、技術もオープン化していてすぐに取り込める。今の経営において最も希少な資源は人材だと思うんです。

採用は中小企業ほど難しいですから、どうしたら人材を集められるかを必死で考えるようになりました。以前は、自分のやりたいことありきで仕事をしていましたが、今は人を集めるために、社員のやりたいことは何かを優先して考えるようになりました。

伊藤社員のやる気を引き出すには、何が必要だと思いますか。

武田やはり、ログズで働くことの意味、つまり会社としてのビジョンが明確であることが大事だと思います。今、ファッションが世の中に対して力を失っているのは、社会に正面から向き合っていないからだと思います。情報があふれて趣味趣向が多様化する中で、格好良さというのは人それぞれになりました。そうした縦割りになった関心をいくら深掘りしても社会全体にはインパクトを与えられません。

なぜ私たちはファッションの仕事をしているのか、ファッションは社会にどうすれば貢献できるのかを考え続けることから新たな価値を生み出せるのだと思います。

たとえば、グルメ情報サイトが飲食店に点数を付け、多くの人がその評価で店を選ぶと、他店がまねにくい高級店に人気が集中して料理の価格はさらに上がるでしょう。一方、高評価の店でまねのしやすい業態はチェーン化が進み、それ以外の店は淘汰されていくでしょう。生き残る店のうち、超高級店を頻繁に利用できるのは贅沢ができる一握りの人たちです。多くの人たちの選択肢はチェーン店ばかりではないでしょうか。こうした現象が、ライフスタイルに関わるあらゆる業態に起きているのです。

これでは社会全体が幸せにはなれません。一昔前なら、アメリカン・ドリームのような成功の夢を持てましたが、今は人口減・ゼロ成長の時代。そんなチャンスは減って社会も二極化が進んでいます。

こうした社会をどう変えるか。もし、贅沢ができない人でも、本気で好きだと思う何かを実現できれば、他人の目など関係なく、自分は幸せだと感じることができるのではないでしょうか。ファッションはそれぞれの人が見出すそれぞれの価値を形にする仕事です。私たちが多様な価値観を社会に対して発信することは意義がある。このことを社員に伝えながら事業を通じて社員を魅了していく必要があると思っています。

ログズ社内にあるイベントスペース。社内の会議、取引先との打ち合わせにも使う