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ロート製薬株式会社

再生医療研究へのチャレンジ!

医薬品をはじめ基礎化粧品、食などさまざまな事業に挑んできた
ロート製薬。次なる挑戦は、世界中が注目している「再生医療」だ。
日経BP総研メディカル・ヘルスラボ所長、
藤井がその狙いと研究による新知見に迫った。

築き上げた強みを武器に再生医療分野に進出

築き上げた強みを武器に再生医療分野に進出

藤井 細胞や組織を用いて病気を治療する再生医療は、今、大きな期待が寄せられている新しい領域です。ロート製薬では2013年に「再生医療研究企画部」を新設し、この分野に取り組んでいますが、その理由をお聞かせください。

本間 再生医療に欠かせないリソースが弊社に存在していたことが大きいですね。例えば、自肌力に着目したスキンケア化粧品を研究する中で「細胞を扱う技術」に慣れていたこと、100年以上の目薬の研究で「無菌製剤技術」を磨いてきたことがありました。医療分野で再生医療が脚光を浴び始めたときにこれらの強みを生かすことで再生医療に乗り出せるのではないかと考え、研究をスタートしました。

藤井 ロート製薬が紡いできた研究や知見が再生医療研究に役立っているのですね。一方で、未知の分野に進出するのは勇気のいることですが、それでもチャレンジするその根底には何があるのでしょうか。

本間 「人々を健康にしたい」との想いで、弊社は新しい分野に挑戦し続けてきました。私自身も困っている人を助けたいという強い想いがあって製薬会社に入社しました。だからこそ、まだ有効な治療法がない、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズに対して最大限の努力をしていきたい。日本や世界で走り始めたばかりの再生医療なら、元々もつ強みを生かし結果を出せるのではないかと現場もトップも意気込み、取り組みを始めました。

ロート製薬
経営戦略推進本部 ディレクター 兼
R&D推進特任部長 兼 基礎研究開発部 部長

本間陽一 氏(右)

日経BP総研副所長
マーケティング戦略ラボ所長
メディカル・ヘルスラボ所長

藤井省吾(左)

自動細胞培養装置

細胞の培養から容器への充填、冷凍保存までをすべて自動化し、年間1800億個の細胞を生産できるという画期的な装置

組織再生や修復に関わる脂肪由来幹細胞に着目

組織再生や修復に関わる脂肪由来幹細胞に着目

藤井 再生医療の中でも脂肪由来の幹細胞に着目した研究を行っています。それはなぜなのでしょうか。

本間 再生医療の鍵を握るといわれる幹細胞は組織を作る大元となる細胞ですが、大きく2種類に分かれます。ひとつは、ほとんどの組織を作り出せるiPS細胞やES細胞といった「多能性幹細胞」。もうひとつは、元来体内に存在し、組織再生に関わると考えられている「体性幹細胞」です。この「体性幹細胞」のひとつ、「間葉系幹細胞」は骨や軟骨、脂肪などへの分化ができる細胞で、さまざまな因子を分泌することで、組織の修復を行うことも知られています。なかでも脂肪組織の中にあるものが「脂肪由来間葉系幹細胞」と呼ばれるもの。ロート製薬では、この脂肪由来幹細胞を使った肝硬変治療製剤の開発を行い、実用化に向けた治験をスタートしています。

ロート製薬では再生医療研究を核として、それを肌の研究、発毛研究、目の研究、歯周組織の研究へと拡大していき、より身近な分野として、人生100年時代の人々の健康に貢献することを目指す

藤井 ロート製薬では再生医療研究を発毛分野にも応用することに挑んでいますが、いつ頃から発毛研究を始めたのでしょうか。

本間 2006年に再生美容研究グループを設立し、そこで行っていた皮膚の幹細胞の研究が発毛研究へと広がっていきました。研究を進めるうちに、発毛には前駆脂肪細胞由来の成長因子が重要であるという知見※1や、幹細胞が枯渇化すると毛包が失われるという知見※2が新たに発見されたことによって、2013年から本格的に発毛研究を開始。一般的な「毛周期(ヘアサイクル)」の研究に加えて、毛根部の「脂肪由来幹細胞」が発毛に関わっていることに着目して研究を進めてきました。

発毛研究の常識を変える新知見を発見

発毛研究の常識を変える新知見を発見

藤井 今回、発毛・育毛効果が知られる成分であるミノキシジルが「脂肪由来幹細胞」に影響するといった新知見を発見されましたが、それについてお聞かせください。

本間 ミノキシジルは第1類医薬品(外用剤)の有効成分で、一部の発毛因子に働きかけるといわれているものの、メカニズムは不明な点が多く、研究の余地があるといわれています。今回の研究で、ミノキシジルが「脂肪由来幹細胞」に働きかけ、毛の伸長※3や血管誘導※4、発毛※5に重要な発毛因子の発現を促進する作用を初めて発見しました。

藤井 毛根の「脂肪由来間葉系幹細胞」の発毛効果を高めると期待されるわけですね。大きな発展が望める新知見で、これからが楽しみです。

本間 はい。今後も幹細胞に着目した発毛・育毛研究を進めていきます。

※1:Cell,2011 ※2:Nature,2016 ※3:FGF7 ※4:VEGFA ※5:PDGFA

ロート製薬株式会社
https://www.rohto.co.jp/