1企業あたり年間約120億円の経済効果も!?

「冬眠人脈」の活用が
膨大なビジネス効果を生み出す

企業がビジネスチャンスを拡大し、新たなイノベーションを生み出していくためには、社員の人脈を全社的に共有し、組織的な営業や部門を超えたコラボレーションを拡大していく必要がある。その重要なツールが「名刺」だ。それでは名刺を社内で管理・共有しない場合、経済機会の損失はどれほどの規模に及ぶのか。Sansan R&D Group研究員の戸田 淳二氏と、日経BP総研 副所長 藤井 省吾の対談によって「人脈」という資源の価値を様々な角度から探っていく。
Sansan株式会社 Data Strategy and Operation Center(DSOC) R&D Group研究員 戸田 淳二氏
Sansan株式会社
Data Strategy and Operation Center(DSOC)
R&D Group研究員
戸田 淳二
慶應義塾大学経済学部卒業。民間企業の研究所を経て、2018年から現職。労働経済学、応用計量経済学を専門とし、転職行動や学習行動、教育訓練などを研究。現在は、ITエンジニアの出会いを分析し、DSOC Data Science Reportにまとめるほか、営業活動を科学することをモットーに、営業マンの行動分析や、営業とよく会っている人はどんな人なのかといった分析を進めている。
藤井
 御社では、企業に蓄積されている名刺活用の経済効果を算出する調査を行ったそうですね。その目的と概要を教えていただけますか。

戸田氏
 Sansanでは、名刺を企業の資産に変える、様々なサービスを提供しています。我々は名刺を“交換・共有することで経済効果を生み出すツール”だと考えていますが、実際にその価値を数値的に算出したサーベイを見たことがありませんでした。そこで、企業内で活用されずに眠っている名刺を「冬眠人脈」と名付け、それを実際に最大限活用すると、どれほどの経済効果があるのかを調べる調査を行いました。

藤井
 「冬眠人脈」というのはユニークなネーミングですね。

戸田氏
 個人の机の中などにしまい込まれ“活動させずに眠っている名刺”を、そう名付けました。対象企業は営業、広告、マーケティングといった、名刺を交換する比重の高い業種や職種です。官公庁データからそれらの業種の就労人口と売上高、1年間で交換される名刺の総量などを推定し、名刺1枚当たりの価値を算出したのが基礎となる数値です。さらに各種データから、1年間で実際に1人当たりが交換した枚数と売上高を比較してみると、予想以上に低い生産性しか発揮できていないことが分かったのです。
日経BP総研 副所長 マーケティング戦略ラボ 所長 兼 メディカル・ヘルス ラボ 所長 藤井 省吾
日経BP総研 副所長
マーケティング戦略ラボ 所長
兼 メディカル・ヘルス ラボ 所長
藤井 省吾
藤井
 つまり、本来の名刺交換枚数から見ると、もっと企業の売上高が伸びていいはずだということですね。

戸田氏
 はい。本当は1人当たり年間106枚ほど名刺交換しているのに、実質的には41枚程度の生産性しか発揮しておらず、社員100人以上の企業では年間約120億円の経済損失があるという結果が出ました。

藤井
 驚くべき数字です。でも逆にいえば、実際に交換された名刺の価値を最大限活用していれば、それだけプラスの経済効果があるということですね。なぜ、こうした状況が生まれているのでしょうか。

戸田氏
 社員が集めてきた名刺情報が、企業内でほとんど蓄積・共有されていないからです。名刺管理システムやワークフロー管理システムに関する市場調査では、名刺情報を管理している企業は全体の2%にしかすぎないという結果が出ています。つまり98%の企業は、大きな価値を生み出す可能性のある名刺を“冬眠”させ続けているのです。

名刺管理を
行わないことで起こる
様々なデメリットとは

藤井
 名刺管理を行っていないと、経済効果以外にも様々なデメリットがありそうですね。

戸田氏
 例えば一度名刺交換して、後日その方に連絡しようと情報を探し出すために、1カ月で1人当たり約2時間の時間を費やしているという調査結果があります。それを全社員トータルで計算すれば、いかにムダな時間とコストを費やしているかが分かります。

藤井
 確かに私も取材でお会いして誌面に登場していただく方の名刺情報はきちんとデータベース化していますが、代理店や広報などの方、パーティーでお会いした方などに改めて連絡を取ろうとすると、どこに名刺を保管していたのか分からなくなることが多いですね。実際、そうした方々ほど、新しい仕事でコンタクトを取りたくなるケースが多いのです。

Sansan株式会社 Data Strategy & Operation Center R&D Group 研究員 戸田 淳二氏
戸田氏
 Sansanのミッションは、「すべての出会いを資産に変える、商談につなげる、イノベーションにつなげる」ことにあります。そういった名刺本来が持つ機能やポテンシャルからいえば、「今必要かどうか」「使えそうか、そうでないか」という個人的な判断で情報の取捨選択はしない方がいいと考えています。すべての名刺情報を組織内で共有し、いつでもどこからでも、すぐ使える状態にしておくことが何よりも重要です。

 今回の「冬眠人脈」という言葉にも「今は冬眠しているけれど、いつか必ず目覚める」という想いが込められています。企業内にあるすべての人脈を可視化して共有すれば、後々必ず、新たな出会いや商談の大きなきっかけになるはずです。その可能性を、休眠ではなく冬眠——“いつか必ず覚醒する”というポジティブな意味合いで表現しているのです。

名刺は多様な出会いと
新たな価値を創出する
「資産」である

藤井
 冬眠人脈を有効活用すると、どのような可能性が広がってくるのでしょうか。

戸田氏
 社員全員が交換した名刺情報をSansanにインプットすれば、取引先一人ひとりの人物にひも付けて、新旧すべての情報を時系列に確認することができます。相手の役職や所属部署は定期的に変わりますが、その方がどのようなキャリアを積んで現在に至ったのか、得意分野は何かなどを事前にきちんと把握できれば、初対面でもポイントを外さないスマートな商談に持ち込めます。また、異質な考え方を吸収して新たなイノベーションにつなげる可能性も出てきます。相手が昇進したタイミングで、その権限に見合った的確な提案を行うチャンスも増えるでしょう。部門を超えた社内人脈を通して、多様な出会いと新たな価値を創出できるのが、Sansanの大きなメリットです。

藤井
 社内で埋もれている冬眠人脈を掘り起こし、有効活用するためのソリューションも提供されているそうですね。

戸田氏
 私は名刺のデータ化や活用法の研究を行うDSOC(Data Strategy & Operation Center)に所属しています。そこでは研究中の技術をβ段階でいち早く公開し、お客様の反応を通じて共に新しい価値を作っていくテストプラットフォーム「Sansan Labs」を通して、様々なアプリケーションを提供しています。いくつかご紹介しましょう。

スマートレコメンデーション スマートレコメンデーション  まず「スマートレコメンデーション」は、ユーザーの名刺交換に関する地域・業種・交換先部署といった傾向を分析し、社内の同僚が交換した名刺の中から、次に出会うべき人をAIがレコメンドする機能です。提示された名刺に対して興味のあるなしを選択することで、AIがその傾向を学習し、より最適な“ビジネスの出会い”を演出します。出会いたい人を自ら探しに行かなくても、最短距離で出会えるチャンスが広がるわけです。

 また「社内キーパーソンを探せ」は、顧客企業との関係拡大に貢献した社員を、名刺交換枚数の推移から分析する機能です。企業を選択すると、その企業との名刺交換が大きく伸びた時期を割り出し、ネットワーク図とその際に活躍した人物をスコア付きでリストアップします。ある特定企業の情報を深く知りたいとき、商談後に誰が関係構築に貢献した人物だったのか知る際などに使えます。

 最後に「ABMダッシュボード」は、自社の持っている顧客企業ごとの情報を可視化し、俯瞰して見られる機能です。ABMダッシュボードでは、「役職ランク」という、役職を分類して職位の高い順にリストアップする技術を応用。通常、役職名は企業によってまちまちですが、それらを分類して整理することで、顧客企業単位で部長クラスや役員クラスと会えているのか、何人の管理職と会えているのかなどの情報を各社共通のフォーマットで見ることができるのです。

「冬眠人脈」を
有効活用すれば、
ビジネスは必ず飛躍する

藤井
 Sansanのソリューションを活用して、売り上げや生産性を向上させたお客様事例を教えていただけますか。

戸田氏
 例えば、クレジットカードを中心に総合的なノンバンク事業を展開しているクレディセゾン様は、個人任せになっていた名刺管理を会社の組織力強化に活用したいと、2014年からSansanを導入されました。具体的には、全社法人営業を推進していくため、30万枚を超える膨大な顧客名刺情報を営業進捗や商談内容なども含めてデータベース化し、社内人脈をフル活用した効果的な営業活動を実現しました。その結果、新規契約や商談数が前年比で30%以上増加したほか、社員間の連携強化や働き方改革にも貢献しています。

藤井 省吾 戸田 淳二氏
 また、電気機器・電気設備関連の事業を幅広く手掛ける電巧社様は、海外法人と日本法人の間のコミュニケーション活性化や顧客を軸とした販売戦略の実現に向けてSansanを導入。グローバルで顧客基盤を共有していらっしゃいます。これにより、多くのお客様の情報をスムーズに共有でき、顧客対応もスピーディーになったという効果が表れているようです。例えば、日本から中国に赴任されたお客様、逆に中国から日本に戻られたお客様の動向をSansanを通じ即座に把握し、営業活動などに生かすといったことはその1つです。

藤井
 社内に散在する名刺情報を人脈データベースとして一元管理するだけで、仕事の進め方を変革したり、コミュニケーションを活性化させたり、イノベーションの発想につながる無限の可能性が広がっていくわけですね。これからも日本企業の価値を高める、新たな機能やソリューションの提供を期待しています。本日はありがとうございました。
取材後記
Sansanが行った今回の調査結果から「冬眠人脈」の経済的損失がいかに大きいかを実感した。名刺管理を全社的に行うことでのメリットは生産性や売り上げの向上だけではない。社内外の人材を交換先の名刺も含めて可視化することで、誰がどの分野に強い人材なのか、どんな特性を持った人物なのかを容易に見極めることができる。それは産業が大きな変革を遂げようとしているこれからの時代、隠れた人脈を掘り起こし、多様性のある知と知が出会う。つまり、多様性のあるタスクを持つ人材が掛け算して、イノベーションを起こす。ダイバーシティの中でも理想とされるタスク型ダイバーシティを実現する大きな効用を秘めている。Sansanの技術とソリューションは間違いなく、その重要な基盤の1つになっていくだろう。
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