「人生100年時代」——。つまり、40〜50代など折り返し地点にすぎない。長く現役で仕事を続け、私生活も充実させるためにも、加齢のサインがともり始める40代からの“エイジングケア”が欠かせない。日本抗加齢医学会の堀江重郎理事長に「男のエイジングケア」のポイントを聞いた。

見た目若々しい見た目は
脳や筋肉の若さの表れ

日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳(2016年)。100歳まで生きることが普通の長寿社会が到来しようとしている。ビジネスパーソンの立場で考えると、今後は定年延長が進み、元気であれば、何歳でも働ける時代になりそうだ。

そうした社会で、仕事も私生活も充実させるためには、若々しく健康でいるための努力が欠かせない。「エイジングケアなんて女性のもの。男の自分には関係ない」と馬鹿にしていると、将来、大きな差がついてしまう。

日本抗加齢医学会理事長堀江 重郎 氏

1985 年、東京大学医学部卒業。帝京大学医学部 泌尿器科主任教授を経て、2012年に順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授に就任。著書に『うつかな?と思ったら男性更年期を疑いなさい』(東洋経済新報社)など。

エイジングを考えるとき、多くの人がまず気にするのは見た目だろう。「自分がよければいい、というのではなく、客観的に見てポジティブな印象、言い換えればハツラツとして見えることが社会生活を円滑にするには大切なこと」と順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授で、日本抗加齢医学会及び日本Men's Health医学会の理事長である堀江重郎氏は話す。

社会生活や仕事をうまく回すためには、他人とのコミュニケーションがスムーズであることが大原則。「社会の中で自信を持って自己主張をするために、髪形や服装など、見た目のオシャレに気を配ったり、体形を保って好感度を保つことは効果的」(堀江氏)。

実は、外見の若々しさは、筋肉や脳の若さを反映しているとする研究もある。387組の高齢の双子を追跡した研究で、若く見えた人の方が寿命が長く、認知機能も身体機能も高いことが報告されているのだ(※1)。
※1 BMJ ;339:b5262、2009

髪・体臭身だしなみを整えることが、
仕事の自信につながる

読者調査(2018年2月23日から3月9日にかけて日経ビジネス・日経ビジネスオンラインの読者638人(平均52.1歳)インターネット上で行った「身体のケア」に関するアンケート。調査実施は日経BPデジタルマーケティング局。)によると、自分の印象に対して最も気を使っている部分は「服装」、次いで「髪」、「体臭・口臭」、「体形・体重」の順だった。

自分の印象で最も気を使うのはどこか?最も多かったのは「服装」で77.3%。
次いで「髪」60.7%、「体臭・口臭」59.7%、「体形・体重」54.5%という結果だった。

「白髪や薄毛など、髪の老化を気にする人は多いが、自分が気にするほどには他人は気にしていないことが多いもの。しかし、本人が気にしていたのでは発言も行動も消極的になりがちで、自信を持って仕事にも臨めない。その意味でケアは大切だし、治療法もある」と堀江氏。

特に男性型脱毛症(AGA)に対しては、医薬品として認められている成分が2種類ある。1つは頭皮の血行を良くして毛母細胞の分裂をうながすミノキシジル。もう1つはフィナステリドなどAGAを引き起こす悪玉の男性ホルモン(DHT)の発生を防ぐ5αリダクターゼ阻害成分だ。さらに、「レーザーを当てて血流を高めることで髪が増えたという報告もある。将来は幹細胞を使った治療もできるかもしれない」と堀江氏は話す。

一方、頭髪と違って本人以上に周りが気にするのが体臭。特に40歳を過ぎると“加齢臭”が増えてくる。これは肌の皮脂に含まれる成分が酸化してできる「ノネナール」という臭い物質で、40歳を過ぎると急増する(※2)。
※2 J Invest Dermatol. ;116(4):520-4,2001

対策は、消臭作用があるグッズの活用のほか、タバコをやめて抗酸化作用の強い緑黄色野菜を積極的に食べるなど、体の酸化を抑えることも役に立つ。

ホルモン心身の元気をつかさどる
ホルモン、テストステロン

さて、男性のエイジングケアを考えるとき、忘れてはならないのが主要な男性ホルモンであるテストステロン。これは男らしい肉体を作るだけではなく、メンタル面への影響も大きく、「社会の中で自分をアピールするのに欠かせない社会性のホルモン」と堀江氏。

最近よく耳にするLOH症候群(男性更年期障害)は、中高年になって男性の健康維持に欠かせないテストステロンの分泌が少なくなることが原因。頭痛、不眠、筋肉が減るといった身体症状に加え、意欲が衰え、抑うつ状態になってしまうこともある(※3)。
※3 Endocr J. ;59(12):1099-105,2012

「長寿社会の大きな脅威となるのが認知症とフレイル(筋力の衰え)だが、男性の場合、これらにもテストステロンの減少が関係する」(堀江氏)

では、テストステロンが減り始めているという「エイジングサイン」に早く気付く方法はないだろうか?

堀江氏は「夜中に一度でもトイレに起きるようになったらエイジングケアの始め時」という。そういえば、若い頃は夜中にトイレに起きることなどなく、朝まで眠り続けたものだ。「動脈硬化が進んで血行が悪くなると、膀胱が硬くなって尿をためられなくなる」(堀江氏)のだという。

「膀胱を柔らかくする簡単な運動は“肛門締め”。肛門を5秒間ぐっと締め、それを10回繰り返すのを1セットとし、1日5セットやる」(堀江氏)

もう1つ、会社の健康診断では「血色素量(Hb)」に注目したい。これは赤血球のヘモグロビン濃度の値だが、基準値内でも安心せず、前回との変化に目を向けてほしい。数値が下がっていると、テストステロン値も減っている可能性があるという。

こんなサインがあればエイジングケアの始め時

40歳を過ぎると体力の衰えを感じ、老いを自覚する機会が増える。「徹夜ができなくなった」「物忘れが増えた」など分かりやすいサインもあるが、以下のポイントも要注意。該当したら、今すぐエイジングケアをスタートしよう。

夜中にトイレに起きるようになった

医学的には「夜間頻尿」と呼ぶ。膀胱の硬化以外にも、前立腺の肥大、腎機能の低下、睡眠が浅い、などがエイジングの背景にあると考えられる。

健康診断の「血色素量(Hb)」の数値が前年度より低くなった

血色素量(Hb)はヘモグロビン濃度のこと。低下すると貧血に。中高年男性のほとんどは正常値のはずだが「前回より下がっていたらテストステロンが減っている可能性がある」(堀江教授)。胃腸からの出血、造血機能の低下などの可能性も。

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