【日経デジタルヘルス Online Special】MeLL+がもたらす多事業所・多職種連携の強化 愛仁会グループの地域包括ケアシステム確立を支援

阪神地区で医療、介護・福祉など多施設運営により地域包括ケアシステムの確立を図る社会医療法人 愛仁会。多施設の各事業所・多職種による医療介護連携、多職種連携の強化を課題とする同法人は高槻地区で、情報共有・コミュニケーションを支援するITツールとしてワイズマンの「MeLL+」(メルタス)の本格運用を開始した。同地区で運用ノウハウの実績を積み、法人全体の介護福祉事業部門に展開していく計画である。

阪神地区の各エリアで地域包括ケアシステム構築へ

 愛仁会は、千船病院(大阪府大阪市)、高槻病院(大阪府高槻市)など3施設の急性期病院と、1つのリハビリ専門病院を中心に、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、ケアプランセンター、ヘルパーステーション、看護助産専門学校などを有し、大阪・兵庫の両府県で医療・介護・保健・福祉・教育を包括した地域医療・介護福祉事業を展開、地域包括ケアシステムの確立に取り組んでいる。

介護老人保健施設ケーアイ 事務長 徳田 智浩 氏
介護老人保健施設ケーアイ
事務長 徳田 智浩 氏
 愛仁会の介護福祉事業は、1995年に大阪市西淀川区に介護老人保健施設を開設したのを皮切りに、高槻市・宝塚市・豊中市で介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、ケアハウスといった施設による事業を展開しながら、居宅介護支援、通所事業、訪問事業を整備してきた。医療機関と併せ、愛仁会グループとして高槻市、大阪市西部基本保健医療圏、豊中市・吹田市、宝塚市の4つのエリアで展開し、各地域の社会福祉資源とグループのサービス提供機能を組み合わせ、連携しながらエリアごとに特色のある事業を行っている。

 こうした同グル-プのエリアマネジメントの中核を成す地区が、高槻地区だ。急性期・地域医療支援病院の高槻病院(477床)、愛仁会リハビリテーション病院(225床)、しんあい病院(60床)の3つの医療機関と、在宅復帰強化型の介護老人保健施設ケーアイ(入所定員100人/通所定員40人)をはじめ、居宅介護支援・訪問看護(訪問リハビリ)・訪問介護事業所からなる高槻在宅サービスセンター、ユニット型の介護老人保健施設しんあい、高槻北地域包括支援センター、愛仁会総合健康センターなどがある。

各事業所・職種の連携支援に情報共有ツール検討

 地域包括ケアシステムの確立に向けたエリアマネジメントにおける課題は、医療と介護の連携強化だ。高槻地区では年4回を基本として「医療と介護の連携ケース検討会」を開催して、サービス提供にかかわった急性期・回復期病院、老健、在宅サービスセンターの各専門職(医師、メディカルソーシャルワーカー、セラピスト、看護師、支援相談員、ケアマネジャーなど)が1つのケースを提示し、連携の評価、連携の課題、反省などについて議論している。

 一方で、介護福祉事業部門では、在宅サービス利用者が老健施設の短期入所サービスを利用するといったケースもあり、在宅サービスセンターの訪問看護師、訪問リハビリ担当のセラピスト、ケアマネジャーと、老健施設のそれらの職種や支援相談員などの多施設・多職種連携の課題もある。

 高槻在宅サービスセンターには、訪問看護ステーション・ケアプランセンター・ヘルパーステーションから構成されるセンター(1カ所)、ケアプランセンター・ヘルパーステーションから構成されるセンター(1カ所)、老健内に併設されたケアプランセンター(2カ所)があり、ケアマネジャー、セラピスト、看護師が在籍する。「同じ利用者さんに在宅と施設それぞれのサービスを提供するとき、果たして同一法人でありながら連携の下に一貫したサービスが維持されているのか――。リハビリ1つをとっても、訪問、通所リハビリ、短期入所の各リハ担当がそれぞれ自分の視点でアセスメントし、機能回復の目標や実施内容にずれが生じるという課題がありました」。介護老人保健施設ケーアイ 事務長の徳田智浩氏は、事業所が点在し、各職種が一堂に顔を合わせる機会を設けられないこともあり、各事業所・多職種間の情報共有が困難だったと指摘する。

(右より)介護老人保健施設ケーアイ 支援相談員 竹下真那美氏 高槻在宅ケアセンター ケアプランセンター愛仁会高槻 管理者 志場幸子氏 高槻在宅サービスセンター 訪問看護ステーション愛仁会高槻 訪問リハ担当課長 山口勝生氏
(右より)
高槻在宅サービスセンター
ケアプランセンター愛仁会高槻
 管理者 志場 幸子 氏
高槻在宅サービスセンター
訪問看護ステーション愛仁会高槻
 訪問リハ担当科長 山口 勝生 氏
愛仁会本部 介護福祉事業部
 副部長 川上 直美 氏
 高槻在宅サービスセンター 訪問看護ステーション愛仁会高槻の訪問リハ担当科長 山口勝生氏(理学療法士)もそうした課題の具体例を挙げ、事業所間の情報共有の重要性を指摘する。「在宅リハでは立ち座りの動作が弱ってきたために機能強化を予定しても、通所サービスの場では利用者さんも頑張って機能低下を感じさせないケースがあります。すると、それぞれのセラピストで評価や目標に差異が生じることがあります。情報共有を密にしていれば、両者で状態を把握でき目標や実施内容のズレを修正可能でしょう」。

 徳田氏は、こうした課題を高槻在宅サービスセンターのケアマネジャーだったときから認識し、多職種連携のための情報共有ツール導入を検討した経緯を振り返る。

機能開発・改良に参画 Win-Winを目指す

 当初、徳田氏はWebアプリケーションベースの無料グループウエアサービスを、数人の介護サービス利用者を対象に試験的に運用。また、高槻地区の各事業所に15人いたケアマネジャーへの在席時の電話連絡が可能か、所在確認を知るために、情報共有とスケジュール管理手段として利用した。「電話、FAX、Eメールに次ぐ第4の通信・情報伝達手段としてITによる情報共有ツールの利用価値はあると認識しました。ただ、以前から運用しているワイズマンの各種介護業務支援システムに入力した、利用者の基本情報・サービス実施情報を共有するためにはグループウエアサービスへ重複入力する必要があり、全利用者に広げるのは現実的でなかった。無料のWebサービスでセキュリティにも不安があった」(徳田氏)という。

MeLL+に投稿された各事業所の職種の情報を参照する支援相談員の竹下氏
 そうした情報共有ツール運用を試行錯誤している2014年にワイズマンから、介護事業所向け情報共有サービス「wiseman connect」が提案され、試験的に運用してみた。スタッフ間コミュニケーション機能はともかく、情報共有機能に満足できなかった徳田氏は、同ツールの機能アップの相談を持ちかけたところ、新たに「MeLL+」がリリースされたため、あらためて機能を評価した。「MeLL+はwiseman connectの弱かった部分が強化されていました。リリース直後で、まだ満足できるものではないものの、次々に機能改良していくという言葉に期待が持てたため、試験導入に踏み切りました」と話す。そして、徳田氏は機能拡張・改良に愛仁会が参画することを申し出た。

 「高槻地区で運用の実績を積み、高槻市全体に拡大していく将来像を描いており、現場の声を機能に反映するため、ベンダーと一緒に開発していきたいという考えがありました。ワイズマンの老健管理システムや在宅ケアマネジメント支援システム、訪問看護ステーション管理システムなどを各事業所で運用してきたこともあり、それら介護業務支援システムとシームレスに連携できる多職種連携支援ツールに一緒に育てていけるベンダーだと思い、お互いWin-Winになれるという確信があったからです」。徳田氏はMeLL+の試験導入、共同開発に至った経緯をこう説明した。

介護現場スタッフの情報共有をケアプランに活かす

 1年間の試験運用でいくつかのブラッシュアップを経て、2016年7月に高槻地区でMeLL+が正式導入された。また、同年5月に開院した尼崎だいもつ病院では、高槻地区の試験運用を活かし、在宅医療部門への試験導入が進んでいる。

 徳田氏が多職種間の情報共有を図っていきたかった一例が、在宅系の看護・リハビリ・介護スタッフの情報および施設系の各スタッフの情報を、それぞれのケアマネが共有し、両サービスの受ける利用者の状況を把握できる環境にするという点があった。居宅サービスのケアマネであるケアプランセンター愛仁会高槻の管理者 志場幸子氏は、「ケアマネとしては訪問スタッフ、通所リハビリ担当のスタッフなど常に利用者と接している現場スタッフのどんな情報も欲しています。通所リハビリでどのようなリハビリを実施されているのか、レクリエーションをどう楽しんでいるのかなど、MeLL+によって担当する利用者の詳細な状況をリアルタイムに知ることが可能になりました」と話す。毎月初めに上がってくる報告書による情報でなく、リアルタイムに共有できることでケアプランへの即座の反映にも寄与するという。

介護老人保健施設ケーアイ 施設ケアマネ副主任 西岡修平氏
介護老人保健施設ケーアイ
施設ケアマネ副主任 
西岡 修平 氏
 一方、介護老人保健施設ケーアイの施設ケアマネ副主任の西岡修平氏は、在宅サービスの利用者が短期入所サービスを受ける際のケアプラン作成にMeLL+が役立つという。「居宅でどの介護サービスを利用しているかは把握できますが、自宅でどう過ごしているのか生活情報を入手しないと適切なケアを提供できません。利用者の生活の主体が居宅である以上、短期入所であっても施設主導のサービス提供であってはいけないと思っています」と説明し、居宅サービス現場の情報を共有することの大切さを説く。

 また、福祉用具の選定においてもケアマネは現場スタッフの情報が欠かせない。例えば、利用者が居宅でポジショニングをどうしているのか、入浴はどのような状況で介助しているのかといった情報が得られれば、「使っている福祉用具が適切なのか、変更するならどのような用具を選定すればいいのか参考になります」(志場氏)という。

介護老人保健施設ケーアイ 施設ケアマネ副主任 西岡修平氏
MeLL+のカレンダー機能。利用者コメントを投稿する事で、関係者間でリアルタイムに気づきを共有できる。(画面はサンプルです)

介護老人保健施設ケーアイ 支援相談員 竹下真那美氏
介護老人保健施設ケーアイ
支援相談員 竹下 真那美 氏
 MeLL+導入以前は、こうしたケアマネと現場の各職種とのやり取りは、支援相談員が間に入り、それぞれの質問や意見を電話等で受けて取りまとめ、伝達する役割を担ってきた。「情報の仲介業務は負担となるうえ、直ちに伝えることは難しくタイムラグが生じます。また、専門的な内容になると私自身が理解不十分で、正確な情報のやり取りができないこともありました。MeLL+を利用して各職種が直接やり取りするため私の負担は減り、リアルタイムで正確な情報の伝達・共有が可能になりました」(介護老人保健施設ケーアイ 支援相談員 竹下真那美氏)とし、利用者にとっても最良なケアが迅速に提供されるようになったと見る。

セラピストどうしの情報共有で効果的なリハビリへ

(右より)介護老人保健施設ケーアイ リハビリテーション科 榎本有希氏 介護老人保健施設ケーアイ リハビリテーション科 副主任 苅谷浩志氏
(右より)
介護老人保健施設ケーアイ
リハビリテーション科 榎本 有希 氏
介護老人保健施設ケーアイ
リハビリテーション科 副主任 苅谷 浩志 氏
 MeLL+のコミュニケーション支援としてのコメント機能は、在宅サービスセンターの訪問看護師や訪問セラピストの情報を短期入所サービスの看護・介護スタッフ、あるいは通所サービスのセラピストへの情報提供・申し送りなどに有効利用されている。訪問リハ担当の山口氏が情報共有の課題として挙げていたように、利用者の居宅での生活状況や身体機能をMeLL+により通所サービス担当のセラピストが把握することで評価や目標の差異を修正できるようになると同時に、効果的なリハビリサービスの提供につながるとする。「通所リハビリでは器具を使って居宅ではできない効果的な機能回復訓練を行うことも重要です。MeLL+で訪問リハビリの内容を知り、機能状況を理解して通所リハビリに取り組むことができると考えています」(介護老人保健施設ケーアイ リハビリテーション科副主任 苅谷浩志氏)。

 同じく介護老人保健施設ケーアイ リハビリテーション科の榎本有希氏は、訪問看護師からアップされたコメントが通所リハビリのリハビリに活かされた例をこう話す。「褥瘡になりかねない発赤が見られたとして、写真画像を添付してアップされたコメントにより、知らないままにリハビリを実施することが避けられました」。従来は、変化する在宅サービス利用者の状況は、なかなか通所リハビリのセラピストに伝わらないとし、こうした褥瘡に関する情報を共有できることで、車椅子のクッション利用やリハビリの姿勢などに配慮できるといったメリットを挙げた。

 また、訪問看護ステーションにとって、MeLL+の利用は訪問看護師の24時間対応にかかわる業務負担の軽減にもつながっている。当番にあたる訪問看護師は夜間の緊急コールに備えるため、24時間対応サービスの契約を交わしている利用者の利用者情報を綴じた分厚いファイルとバイタル測定器、各種処置器具をセットにして自宅に持ち帰っていた。MeLL+を利用するようになってからは、呼び出しコールが入ったとき利用者情報を自宅または移動中にiPadで閲覧し、緊急訪問できるようになり、分厚く重い利用者情報ファイルを持ち帰る必要がなくなった。

愛仁会本部 介護福祉事業部 副部長 川上直美氏
愛仁会本部 介護福祉事業部
副部長 川上 直美 氏
 MeLL+の本格運用が始まって5カ月。各職種の責任者が集まる症例検討でMeLL+の情報を供覧しながら実施するようになった。「各職種から投稿された情報を経時的に閲覧しながら意見交換できるようになり、充実した症例検討ができるようになりました。サービスの質を高めるツールとして有効だと感じています」。愛仁会本部 介護福祉事業部 副部長の川上直美氏はMeLL+運用の成果をこう話す。

 また、川上氏は介護系のITツールは、先行導入した現場で運用ノウハウを蓄積して段階的に運用を拡大しないと成功しないとも言う。「高槻地区でその実績を積み、法人全体の介護福祉事業部門に利用を拡大していきたい」と展望を語った。

法人概要

写真は介護老人保健施設ケーアイ
■社会医療法人 愛仁会
所在地
大阪市北区豊崎3丁目2番1号(愛仁会本部)
TEL
06-6375-0660
Webサイト
http://www.aijinkai.or.jp/
事業概要
医療機関(8施設)
健診施設(2施設)
介護老人保健施設(3施設)
在宅サービスセンター(2施設)
デイサービスセンター(2施設)
介護付き有料老人ホーム
地域包括支援センター他

■お問い合わせ■

株式会社ワイズマン

〒020-0045
岩手県盛岡市盛岡駅西通2丁目11番1号

TEL:019-604-0750
FAX:019-604-0770
URL:http://www.wiseman.co.jp/

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