真のヘルステックカンパニーへ。フィリップスが目指す「デジタル・プラットフォーム」とは

真のヘルステックカンパニーに生まれ変わることを目指し、2017年10月1日に社名変更した「フィリップス・ジャパン」。2025年までに全世界で年間30億人の生活を向上させることを目標とするビジョンを掲げ、ヘルステクノロジーに100%注力しつつ、社会貢献に取り組む。同社 代表取締役社長の堤浩幸氏は、「デジタルヘルスDAYS 2017」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のカンファレンスに登壇。「フィリップスのデジタル・プラットフォームが開くヘルスケアの未来」と題して講演した。

一連のヘルスケアプロセス、病院と在宅を“つなぐ”

フィリップス・ジャパン 代表取締役社長 堤 浩幸 氏

 堤氏は、超高齢化社会や都市部への人口集中、あるいはビッグデータの活用など社会環境が変化し、それに応じて医療システムも変わる必要があると指摘。「(患者が住み慣れた環境で過ごせる)在宅治療への移行をはじめ、患者さんに優しい医療、あるいは自分自身の健康への関心の高まりによる予防医療への重点など、価値観に応じた医療システムや事業モデルへとシフトしていく時期にきています」(堤氏)とし、その実現の前提として「医療のデジタル化」があると説いた。

 そしてフィリップスは、健康な生活、予防、診断、治療、在宅ケアなどを一連のヘルスケアプロセスと捉え、その過程でイノベーションを実現するソリューションを提供し、全体的・総合的に価値創造していくことにチャレンジするという。「それぞれの領域で優れた医療の実現に寄与する医療機器がありますが、全体の最適化が課題です。モノとモノをつなぐ、あるいは人とモノをつなぐこと、さらにマルチでつなぐことによりソリューションとなり、価値創造につながると考えています」(堤氏)。

 一連のヘルスケアプロセスをつなぐことはデジタル化された情報を共有できる環境であり、プロフェッショナル・ヘルスケア(病院の医療)とパーソナル・ヘルスケア(ホームケア)をつなぐ「ヘルススイート・デジタル・プラットフォーム」を構築することにより、新たな価値を創造していこうというものだ。「ヘルスケアICT基盤によって1つの大きなデータボックスをつくっていこうと考えています。そこにビッグデータ解析、人工知能(AI)、クラウド化といった技術を生かすことにより、患者さんに優しい医療ソリューションを提供できます。それはまた、医療従事者の働き方改革にも寄与すると考えています」(堤氏)と述べた。

The future of innovation is collaboration : Philips HealthSuite Degital Platform

 堤氏は、“つなぐ”ことによるイノベーションについて、具体的に口腔ケアと慢性疾患の関連性を例示した。同社は電動歯ブラシ「ソニッケアー」とスマートフォンとをBluetoothで連携した「ソニッケアー ダイヤモンドクリーン スマート」の国内販売を、2017年9月1日より開始した。適切に磨けているところ、磨けていないところをアプリ画面に表示し、正しいブラッシングをリアルタイムにサポートするものだ。「得られたデータを歯科医と共有する、さらには病院で慢性疾患を診る医師と共有することにより、口腔ケアを慢性疾患の予防や治療に役立てるなど、さまざまなベネフィットが提供できるようになります」(堤氏)と、デジタル・プラットフォームによる“つなぐ”ことの価値を説明した。

 すべてをインテグレートしてAI技術などを活用する包括的なソリューションを生み出すことが、今後のヘルスケアのデジタル化、ICT化のカギになると堤氏は強調。「(デジタル・プラットフォームの構築により)患者さんの負担を軽減し、健やかな生活を創造するとともに、医療現場の生産性向上の実現にチャレンジしていきます」と意気込みを語った。

現場と一体的な体制で全体最適ソリューションを創造

 フィリップスのデジタル・プラットフォームによりヘルスケアの未来はどうなるのか。堤氏は実際に進展している国内外の実例を挙げつつ、紹介した。その1つが、スマートフォンを用いたベビーヘルシーモニターサービス(国内未公開)。医療用の乳児発育追跡アプリで、乳児の睡眠パターンや発育データなどをすべて一元管理し、両親へ育児アドバイスするとともに医師をサポートするサービスである。「母親の育児不安や負担を軽減し、データに基づいた予防や治療をサポートできます」(堤氏)。

 また、集中治療の専門医不足によるケアの質の地域格差という課題に対して、遠隔集中治療患者管理プログラムによるソリューションを提唱。国内でも2016年10月から昭和大学、日本貿易振興機構(JETRO)・経済産業省との産官学連携による実証研究を開始している。昭和大学病院にeICU支援センターを設立し、昭和大学病院と昭和大学江東豊洲病院のICU患者の状態・データを遠隔で把握し、看護を支援するプログラムを導入した。堤氏は実証研究の狙いを、「専門医不足の解消だけでなく、クリニカルトランスフォーメーション(臨床的変革)による集中治療のワークフローや医療の質の改善につなげること」と言う。そして、地域医療連携を促進し、治療への早期介入・早期回復につなげることが可能と示唆した。

 遠隔医療ソリューションは、病理分野でも取り組んでいる。病理学で世界最大級の画像データベースを構築、ディープラーニングを活用して病理医を支援し、精度の高いがん診断などに生かす研究を行っている。また、患者への遠隔診療では、米国アリゾナ州を中心とした28の病院、介護施設などを展開する病院グループが在宅ケアにおいて導入している例を紹介。医療費34%、入院日数50%、再入院率75%削減を実現しているという。

 こうした取り組みは、医療従事者や患者と一体になった変革のソリューションの創造がカギになると堤氏は強調。「医療現場に関わる人々と一体的なフォーメーションにより、診断・治療・予防の全体最適ソリューションを創っていくことが、我々の変革手法です」と述べた。

Health Continuum

パートナーシップに基づいたエコシステムの構築

 一方、それらを可能にするのは、デジタル化だけではないと堤氏は言う。25の関連病院を抱える米国Florida Hospitalにおいて外来患者数が4年間で2倍、95%の患者満足度を実現した事例を挙げ、医療ソリューションの技術の進化とともに周囲の環境をどう整備していくかといった研究の重要性を説き、「現状分析を行うとともに患者さんや医療従事者との対話を通じ、患者満足度を高める環境デザインの創造にも取り組んでいます」(堤氏)と語った。

 また、大学病院を中核とした病院グループのAugusta University Healthでさまざまなプログラムに取り組んだ結果、15年間で170億円の経費削減、画像診断検査数が11〜39%増加した事例を示し、15年にわたる長期的な信頼関係、戦略的パートナーシップが重要だとも指摘した。

 こうした国内外でのフィリップスの取り組みは、患者や顧客と一体になった変革ソリューションの提案と実行により実現されてきた。今後さらに、健康な生活・予防・診断・治療・ホームケアの一連のヘルスケアプロセスを通じて変革をもたらすソリューション提供に注力していく。その基盤となるのが、シームレスなケアを可能にするデジタル・プラットフォームだと堤氏は強調する。その構築において、AIやIoTといった技術の活用が重要であり、また信頼性の高いデータを収集・蓄積・利活用できるプラットフォームにする必要があると言う。

 「我々の目指すデジタル・プラットフォームは、我々だけで構築することはできません。一連のヘルスケアプロセスに変革をもたらすためには、さまざまな産業が連携し、多様な要素が組み合わされることで実現すると考えています」(堤氏)。医療関係機関や他業種とのパートナーシップに基づいたエコシステムを構築することで、新たな企業価値を創造するとし、「それがNo.1のヘルステックカンパニーへの道になると考えています」(堤氏)と力強く締めくくった。

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