【日経デジタルヘルス Online Special】矢尾板記念会が目指すMeLL+による医療・介護連携

栃木県日光市の2拠点で医療・介護サービスを一体的に提供する医療法人 矢尾板記念会。ワイズマンの電子カルテと介護ソフトを各施設で利用してきた同法人は、新たに医療・介護連携サービス「MeLL+」(メルタス)を導入、運用を始めた。目指すのは、グループの全スタッフがMeLL+を使いこなし多職種連携を強化することによる、施設間におけるケアサービスの平準化とサービスレベルの向上だ。

日光東照宮などが世界遺産に登録され、年間1000万人を超える観光客が訪れる栃木県日光市だが、この十数年は急速に人口が減少し、同時に高齢化率は33%を超え少子高齢化が進んでいる。2018年に法人設立30周年を迎える矢尾板記念会は、こうした地域情勢を見据えて日光市内の2拠点で有床診療所と介護老人保健施設の組み合わせを中核としグループホームも擁して、医療と介護サービスを一体的に提供している。また、2008年には社会福祉法人を設立し立ち上げた特別養護老人ホームとも連携しながら、介護サービス利用者の多様なニーズに総合的に応えることができる医療・介護サービスグループを構築してきた。

矢尾板記念会 理事長 矢尾板 誠一 氏
矢尾板記念会
理事長
矢尾板 誠一 氏

 「慢性的なさまざまな疾患を抱え社会生活も困難になった高齢者は、診療所、老健、在宅を行ったり来たりする生活を強いられます。社会復帰、在宅復帰を主眼においた治療やリハビリに取り組んでいるものの現実は理想通りにはいかず、社会・在宅復帰できない方への療養生活する場の提供が必要です。そうした方々も含め地域の要請に応えられる包括的な医療・介護・福祉サービスを提供しようと現在の体制が出来上がりました」。矢尾板記念会 理事長の矢尾板誠一氏は、医療・福祉法人グループを築いた経緯をこう話す。

矢尾板記念会 事務局長 手塚 伸一 氏
矢尾板記念会
事務局長
手塚伸一 氏

 2拠点の具体的な施設構成は、JR日光線の今市駅に程近い平ヶ崎地区に見龍堂クリニックかわせみ(19床)と老健施設の今市Lケアセンター(入所100床)が、約10キロメートル離れた木和田島地区に見龍堂医療福祉総合クリニック(16床)と老健施設の見龍堂メディケアユニッツ(入所84床、認知症専門棟50床を含む)が立地する。両老健施設とも通所リハビリテーション・介護予防通所リハビリテーション・(予防)訪問リハビリテーションサービスも同時に提供している。また、平ヶ崎にはグループホームと社会福祉法人による特別養護老人ホームが、木和田島には特別養護老人ホームや小規模多機能住宅などがある。

 「入院医療から在宅復帰に向けたリハビリ重視の老健、通所サービス、住居としてのグループホームなど、地域住民のニーズに応じてさまざまなサービスを選べ、かつシームレスにサービスを享受できる点が、矢尾板記念会の強みです」。事務局長の手塚伸一氏は、法人グループの強みをこう説明する。

長年にわたり築き上げてきた相互信頼

 多数の施設を運営する中で地域環境も変化し、職員も高齢化する一方、若い職員の入職は厳しい状況にあるという。「職員が長く働ける環境をつくることに腐心しており、いかに医療・介護それぞれの業務を効率化するかが課題。医療・介護のICT化の推進は、効率的な運営を支援する一端として取り組んできました」(矢尾板氏)とし、早い時期からクリニックにおける電子カルテ導入、介護施設への介護業務支援システムを導入してきた。それらシステムを一体的に提供してきたのがワイズマンだった。

 「当時、医療と介護の両領域のシステムを一社で提供できる強みを持っていたのが、ワイズマンでしたので採用に至りました。電子カルテシステムERの発売間もない頃は正直満足できるシステムではありませんでしたが、改修を重ね使いやすく成長してきました。両クリニックを掛け持ちで勤務している私自身の診療業務の効率化に貢献してくれています」(矢尾板氏)とし、全施設の業務効率化支援を担ってきたと振り返る。

矢尾板記念会 総務課 北澤 良親 氏
矢尾板記念会
総務課
北澤 良親 氏

 このほど実施したシステム刷新では、従来の各種介護システムをクラウド化したワイズマンシステムSPに移行するとともに、新たに医療・介護連携サービス「MeLL+ professional」を導入した。クラウド移行やMeLL+採用に関しては、あらためて数社のサービスと比較、慎重に検討したというが、引き続きワイズマンが選ばれた理由を総務課の北澤良親氏は次のように述べている。

 「サービスに関する突っ込んだ質問に関して、各社の担当者の対応に差がありました。回答内容の質、迅速な対応などが最も優れていたのがワイズマンでした。もちろん、長年お付き合いしてきたことによる信頼感、使い慣れたシステムであったことが背景にあります」(北澤氏)。

医師と老健施設看護師の連携が強化

 MeLL+では、クリニックの電子カルテシステムERと各施設の介護ソフトを連携し、患者・利用者の基本情報、それぞれの記録を統合し、連続した記録で表示する総合記録、リスクサマリーなどを共有できるほか、利用者コメントやメッセージ、掲示板・回覧板などで多職種間のコミュニケーションが可能になる。

いつ、どこにいても各施設の医療と介護情報にアクセスできるという矢尾板氏
いつ、どこにいても各施設の医療と介護情報にアクセスできるという矢尾板氏

 2つのクリニック・老健施設の患者や利用者を掛け持ちで診ている矢尾板氏にとって、最も便利になったというのは、いつ・どこにいても患者・利用者の情報にアクセスできる点だという。「緊急時以外でも患者の病状に関して変化があり、指示する際など、頻繁に両施設の看護師から連絡があります。今では電話連絡が大幅に減り、ほとんどの対応をどこにいてもMeLL+でできます」(矢尾板氏)。以前は、それぞれの施設に出向かなければ参照できないという問題が、MeLL+によって解決したわけだ。

 特に総合記録による情報参照の利点を強調した。「遠隔地でも情報参照できるとはいえ、すべての情報を参照するのは非効率。必要な情報だけが抽出されている総合記録は非常に便利です」(矢尾板氏)と説明する。

MeLL+の総合記録表示画面
MeLL+の総合記録機能。患者・利用者の基本情報やバイタルデータなどが一画面に集約され医師のスムーズな判断を支援する。(画面はサンプルです)

介護老人保健施設 見龍堂メディケアユニッツ 看護師長 川田聡氏
介護老人保健施設
見龍堂メディケアユニッツ
看護師長
川田 聡 氏

 一方、老健施設で日々利用者を看護観察し、矢尾板氏から病状変化に対応した指示を仰ぐ看護師側もMeLL+のメリットを指摘する。1日に20回程度はMeLL+を利用して医師との連絡・指示受けをしているという見龍堂メディケアユニッツ看護師長の川田聡氏。「入所者の方の病態により頻度は大きく違いますが、病状が良くないときは1時間おきぐらいに電話連絡をしていました。今ではそうした頻回の電話が、ほとんどMeLL+に置き換わりました。皮膚疾患を合併している利用者さんなどは、患部写真を添付して指示を仰ぐこともできます」とMeLL+の有用性を話す。

見龍堂医療福祉総合クリニック 今市Lケアセンター 看護師長 松本 真知子 氏
介護老人保健施設
今市Lケアセンター
看護師長
松本 真知子 氏

 併設のクリニックに矢尾板氏が在席しているときは、電話以外にも直接診察室に出向いて相談、指示を仰ぐこともあるというが、MeLL+の利用では診察中であるかどうか気にする必要もなく、いつでもメッセージで報告・指示受けが可能になった。

 また、利用者がクリニックを受診する場合に、受診理由の連絡や受診前の指示をMeLL+で受けるといった利用もある。「利用者さんの状況をMeLL+で伝えることで、受診前に検査指示を受けることが可能になりました。場合によっては、指示に基づいて検査した結果を受診の際に聞くこともでき、利用者さんの負担を減らすとともに、私たちの業務の効率化にもつながっています」(今市Lケアセンター看護師長の松本真知子氏)。

見龍堂医療福祉総合クリニック 見龍堂メディケアユニッツ 事務長 五味渕 和人 氏
介護老人保健施設
見龍堂メディケアユニッツ
事務長 五味渕 和人 氏

 こうしたMeLL+の利用法を踏まえて、見龍堂メディケアユニッツ事務長の五味渕和人氏は、医師と老健施設看護師の連携が強化されたと指摘する。「連携が以前以上に密になったと感じています。電話と異なり、きちんとやり取りが記録として残るため間違いがなくなったほか、MeLL+によってサービス提供状況を私自身が容易に把握できるようになったメリットもあります」(五味渕氏)という。

クリニックと老健施設の看護師同士の連携強化

見龍堂医療福祉総合クリニック 看護師長 渕上 公子 氏
見龍堂医療福祉総合クリニック
看護師長
渕上 公子 氏

 クリニックと老健施設との連携強化にMeLL+が果たした役割は、両施設の看護師同士の情報伝達のスムーズさにも表われている。老健施設の利用者は病状が悪化した際に、クリニックへの入院・退院を繰り返すことがある。通常は、老健施設の担当者が同行し、クリニックの看護師に申し送りするが、その情報伝達にMeLL+が利用されている。「申し送りの際の情報内容には限りがあり、それ以外は電話でのやり取りになります。スタッフ同士の打ち合せに時間をとられることが多かったのですが、MeLL+によって、そうした手間や時間が削減され、効率化されました」(見龍堂医療福祉総合クリニック看護師長の渕上公子氏)。

見龍堂クリニックかわせみ 看護師長 中尾 健一 氏
見龍堂クリニックかわせみ
看護師長
中尾 健一 氏

 以前はクリニックの看護師が老健施設のケア記録を見ることはできなかったが、MeLL+によって、いつ頃から症状が出始めていたのか経過を時系列で参照できるようになったことは、クリニックの看護師にとって大きなメリットだという。一方、入院から老健施設へ移る際の情報伝達においてもMeLL+は役立っている。「患者さんが老健施設に戻ってから、担当者から質問されることも多くあります。口頭や電話では質問された担当者だけにしか伝わりませんが、注意観察してもらいたいことなどをMeLL+に投稿しておけば、老健施設の全看護師に伝達できるため、注意事項などを徹底できます」(見龍堂クリニックかわせみ看護師長の中尾健一氏)という声もある。

介護老人保健施設 今市Lケアセンター 事務長 尾上 利夫 氏
介護老人保健施設
今市Lケアセンター
事務長
尾上 利夫 氏

 矢尾板記念会がMeLL+を利用し始めて間もないため、現状は医師や看護師における利用がほとんど。今後、リハビリ担当の各療法士をはじめとする介護スタッフへの利用拡大により、さらに多職種連携の向上が期待されている。その一例が、理学療法士などによる投稿が挙げられると、今市Lケアセンター事務長の尾上利夫氏は言う。

 尾上氏は施設ケアマネジャーでもあり、ケアプラン作成にMeLL+を利用していきたいという。「ケアプラン作成の際に、リハビリの各担当者に個別で利用者状況を聴取することも少なくなり、MeLL+に投稿された内容をケアプラン作成に反映できるのでは――と考えています。介護職との情報連携・共有によって、よりきめ細やかなケアサービスが可能になると期待しています」(尾上氏)と話す。

法人全体のケアサービスの向上がMeLL+の価値

 MeLL+は、患者・利用者にひも付いて診療情報やケア記録、日々の気づきなどを共有しながら多職種連携を支援する以外にも、掲示板・回覧板や会議室機能の利用により、施設運営やグループ全体の運営活性化が期待されている。

 矢尾板記念会のように施設が分散されていると他の施設でどのように業務が行われているか、知る機会は少ない。例えば、各施設で発生するヒヤリハットの共有による、事故の未然防止などでの使い方などがある。施設内では発生情報を紙ベースでも共有可能だが、他の施設で起きたことの共有は難しい。「早急に対応しなければならないケースなどは、MeLL+を活用して対処を徹底していきたいと考えています」(川田氏)という。

先生との連絡や指示を仰ぐために、1日20回程度はMeLL+を参照していると話すメディケアユニッツ看護師長の川田氏
先生との連絡や指示を仰ぐために、1日20回程度はMeLL+を参照していると話すメディケアユニッツ看護師長の川田氏

 また、多くのスタッフが、他の施設で効率的な業務の仕方をMeLL+の会議室などで共有することにより、それぞれの施設で業務改善につながるのでは――と話す。さまざまな委員会などが活動しており、そうしたグループの意見交換などにも会議室機能の利用価値はある。法人全体の親睦会役員を務める松本氏は、「全施設の役員が一堂に集まることは難しく、MeLL+の会議室を利用してグループ会議を活性化していきたいと思っています」と話す。

すべてのスタッフがMeLL+を使いこなすことで多職種連携の強化を目指す
すべてのスタッフがMeLL+を使いこなすことで多職種連携の強化を目指す

 手塚氏もMeLL+によって、職種同士で、あるいは多職種で意見交換を活発化し、サービスの質向上につなげて欲しいと期待している。同様に矢尾板氏も、各施設のスタッフがお互いの業務ノウハウを提供し合い共有することにより、ケアの質の平準化、向上を期待する。「自分たちのケア業務のレベルを比較して見ることができ、劣っていると思えば向上に努めるでしょう。ケアサービスが施設間較差が生ずることなく平準化され、かつレベルアップしてこそ、MeLL+の導入価値があったと言えるでしょう」。矢尾板氏は、全職員がMeLL+を使いこなすことによる期待をこう述べた。



病院概要

医療法人 矢尾板記念会
見龍堂メディケアユニッツ
■医療法人 矢尾板記念会
所在地
〒321-1262
栃木県日光市平ケ崎609-4
Webサイト
http://yaoitakinenkai.or.jp/
診療所
見龍堂クリニックかわせみ(19床)、見龍堂医療福祉総合クリニック(16床)
介護老人保健施設
今市Lケアセンター(定員:入所100床、通所リハ50人)、見龍堂メディケアユニッツ(定員:入所84床、通所リハ40人) グループホーム かわせみ(認知症対応型共同生活介護)
関連法人
社会福祉法人 日光福栄会(広域型特別養護老人ホーム/地域密着型特別養護老人ホーム/小規模多機能型居宅介護支援事業)

■お問い合わせ■

株式会社ワイズマン

〒020-0045
岩手県盛岡市盛岡駅西通2丁目11番1号

TEL:019-604-0750
FAX:019-604-0770
URL:https://www.wiseman.co.jp/

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