レーザープリンターからインクジェットプリンターへ 経費削減に挑む大規模病院の取組み

日本診療情報管理学会学術大会 ランチョンセミナー

病院情報システムの経費削減は、多くの医療機関にとって重要な課題だ。その中でもプリンターの電力量や消耗品などのコスト削減は、機器選択の余地が大きく、削減効果も生みやすいと考えられている。レーザープリンターの多くをインクジェットプリンターに置き換えた日本赤十字社 京都第二赤十字病院 事務部医療情報課の宮本富夫氏が、「第45回 日本診療情報管理学会学術大会」で、その削減効果を発表した。

レーザープリンターのランニングコストに課題

宮本 富夫 氏 日本赤十字社 京都第二赤十字病院 事務部医療情報課 システム管理係長

 京都第二赤十字病院は、京都御所の隣に立地し、667床を有する地域の中核病院である。1912年の創立で日本で2番目に救急救命センターを開設した歴史ある病院だ。近隣には京都大学医学部附属病院や京都府立医科大学付属病院などの基幹病院とともに、地域の高度急性期および急性期病院としての役割を担っている。

 同病院では病院情報システム(HIS)のシステム更新サイクルを7年としており、2018年11月に2回目となる更新を実施。その際に従来使用してきたレーザープリンター170台をインクジェットプリンターに置き換えた。

 実は、前回のシステム更新時に、インクジェットプリンター導入によるコストダウンの効果に対して、医療情報課の宮本富夫氏は非常に強い関心を持ったという。しかし、既にプリンターの選定を終えており、導入を見送った経緯がある。

 それまで宮本氏は、医療現場で使用するプリンターに求められる「きれいな印刷」「高速印刷」「印刷物が劣化しない」という基本性能において、インクジェットプリンターは向いていないというイメージを持っていた。一方で、レーザープリンターは筐体が大きく、重く、ランニングコストが過大であることが、システム管理部門の課題だったと指摘する。「レーザープリンターは構成部品が多く、安定稼働しながら印刷耐用枚数を全うしようとすると、定期的に部品を交換しなくてはなりません。そのコストが悩みの1つでした」(同氏)。実際、運用してきたレーザープリンターでは、導入後3年半から更新7年までの約3年半の間に発生した有償交換部品(保守以外)のコストは430万円に上っていたとし、「日頃から大きなストレスを感じながら対応してきた」(同氏)という。

1年間分のデータ分析で明らかにした電力量削減効果

 消耗品や電力量の低減により、驚異的なランニングコストの低減ができるというインクジェットプリンターに強い関心を持ち続けてきた宮本氏は、「長年温めてきたプリンターのインクジェット化による大幅なコストダウンをどうしても実施したかった」という思いで、今回のシステム更新時にインクジェットプリンターへの置き換えに踏み切った。

 導入検討にあたり、実際にプリンターの電力量などがどれくらい削減できるのか、施設内の全プリンターの出力状況データを収集、分析した。1年間分のデータを分析したところ、インクジェットプリンターへの置き換えで、消耗品や電力量のコストダウンを実現できることが判明。改めてインクジェットプリンターの機種選定、配置などを検討することとなった。

 ちなみに、分析結果では年間推定消費電力量は、従来環境が約1万9100kWhであるのに対し、インクジェットプリンターで構成した場合は2600kWhと推定され、約86%という大きな削減効果が期待できたという。同時にCO2削減効果も期待できる試算結果となった。

年間で大幅な電力料金削減を達成

 インクジェットプリンター導入を伴う新病院情報システムが稼働して10カ月。交換インクなどは導入時のストック購入もあるためランニングコストの年間削減効果は明確でないが、「電力量の削減効果は驚くほどの結果が出た」(宮本氏)という。それだけに着目しても、「システム更新の目玉ともいえるほどの大きなコストダウン成果でした」(同氏)と話す。

 京都第二赤十字病院ではエネルギー管理サービスを導入しており、熱電併給システムの発電量や電力の総使用量、年間CO2排出量など様々なデータを各計測機器からクラウドシステム上に収集し、リアルタイムで可視化できるようになっている。このエネルギー管理サービスを利用して、日々収集される電力計データの中で医療機器や空調機、サーバー室の電源などを対象外とし、プリンター、パソコン、モニター類が対象となるコンセント回路のみのデータを収集した。

 その結果、プリンターの消費電力量については毎月確実な節電効果が得られており、年間消費電力を推定すると数百万円の削減効果になることが明らかになった。「システム更新サイクルを7年とした場合、プリンターの電気料金だけで、非常に大きなコストダウンが期待できます」(同氏)。

 稼働10カ月を経過したが、耐久性についてはまったく問題を感じないという。A4モノクロタイプで最も出力量が多い医事課のプリンターにおいても、有償の部品交換は発生していない。また、A3カラータイプで最も出力量が多い栄養課のプリンターでは、メーカー規定の出力耐久枚数に達したため部品交換があったが、わずかなコストで済んでいるという。

 こうした成果を受け宮本氏は、「病院のプリンターはレーザー方式という概念は崩れつつあります。省電力化が可能なインクジェットは、環境保全への大きな貢献ができる可能性を秘めています。その観点でインクジェットが病院プリンターのトレンドになると確信しています」と述べた。

消耗品のCO2排出量比較
京都第二赤十字病院のエネルギー管理サイト(クラウドシステム)

消耗品のランニングコストでも大きな削減効果

 京都第二赤十字病院の導入事例ではインクジェットプリンターの電力量によるコストダウン効果が着目されたが、インク・トナーを中心としたランニングコストの削減効果に関する他の大規模病院の事例もある。

 約700台のレーザープリンターが稼働中の大規模病院では、一部の診療科の診察室にインクジェットプリンターを試験導入し、5週間の実証実験を行った。その結果とプリンターのカタログ値から、レーザープリンターのトナー使用量とインクジェットプリンターのインク使用量によるコストを比較してみたという。

 まず、運用されているプリンタートナーの年間総使用量(購入数量)を調査し、レーザープリンターのカタログ値から印刷枚数を推測。トナーの定価を基に全トナー消費コストを算出した。一方、インクジェットプリンターは1枚あたりの印刷コスト(カタログ値)からインクジェットプリンターに置き換えた場合のインクコストを算出。トナーとインクのコストを比較してみた。

 その結果、700台のレーザープリンターの年間消耗品購入額対し、すべてをインクジェットプリンターに置き換えた場合は年間で3分の1近くに抑えることが可能と試算できた。同病院のシステム更新サイクル(6年)では、相当な金額に及ぶコストカットが見込まれるという。

 医療機関のランニングコスト・電力使用量削減に大きな効果を発揮するインクジェットプリンター。

 システム全体の費用削減を課題としている多くの医療機関にとって、インクジェットプリンターの導入は解決策の一つになると実感できる発表であった。

全てをインクジェットプリンターに置き換えた場合の比較(1年間:病院による試算結果)
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