創立70周年を迎えた相互住宅株式会社。住宅用途を中心とした不動産の保有・運営を軸に事業基盤を築いてきた同社は2025年7月、第一ライフ丸紅リアルエステートグループへの参画を機に、保有型と回転型を組み合わせた成長戦略を本格化させている。広がる事業の選択肢と、次に描く成長のかたちとは。同社プロジェクト開発部担当執行役員の半田洋介氏に同社が描く次なる成長戦略の全貌に迫った。

70年の蓄積を、
次の成長につなぐ

 相互住宅株式会社(旧・第一生命住宅株式会社)の始まりは1955年。高度経済成長期の住宅不足を背景に、民間による分譲マンションの先駆けとして「武蔵小杉アパートメンツ」を竣工。その後は現在まで続く「第一マンションズ」シリーズで高級賃貸マンション市場を開拓するなど、同社は住宅の供給と運営を通じて、日本の住宅市場を支える一角を担ってきた。

 その相互住宅が2025年7月、第一ライフ丸紅リアルエステートグループに参画した。長年にわたり築いてきた事業基盤を足場に、次の成長ステージへと踏み出す転換点となる。

 「当社はこれまで、賃貸ストックによる安定収益を軸に事業を展開してきました。今後はその基盤をしっかりと維持しながら、グループのシナジーを最大化し、保有型と回転型のビジネスを両輪で回していきたいと考えています」と半田氏は語る。

 この方針を具体化する取り組みが、今期新たに立ち上げたアセットマネジメント部だ。住宅を中心とした従来のポートフォリオは安定性が高い一方、収益のアップサイドを取り込みにくい側面もあった。アセットマネジメント部では、賃貸資産の収益力向上やポートフォリオ管理の高度化に取り組んでおり、その検討結果に基づき、ホテルや物流施設といった新たなアセットタイプにも視野を広げていく。

長期保有で磨いた強みを、
事業に生かす

 相互住宅の事業を支えてきた根幹には、管理・運営までを自社で手がける「保有機能」がある。「第一マンションズ」「フレンシア」シリーズをはじめとした賃貸住宅やオフィスを長期にわたり保有し、自ら運用してきた70年の実績は、売却を前提とした開発事業では得られない独自の経営資産だ。

 「保有して運営まで担うからこそ、良かった点も課題も含めて次の投資判断に活かせる。その積み重ねが、事業全体の精度を高めるとともに、我々の経営理念である「創り よりそう」を体現する取り組みにも結びついています」

 半田氏が語るように、長期保有を前提とした事業のなかで蓄積されてきた知見は、商品企画や運営改善にとどまらず、用地取得や投資判断の精度向上にもつながっている。この保有機能から得られる知見は、単なる仕様の改善にとどまらない。現場のニーズを捉えた高付加価値な企画を立案することで、一般的な賃貸住宅の枠組みでは評価しきれなかった土地に対しても、収益性を背景とした優位な取得価格を提示できる「仕入れの競争力」へと昇華させているのだ。

 こうした蓄積を生かした取り組みの一つが、コリビング事業だ。コリビングは、専有空間をコンパクトに設計する一方、キッチンやラウンジなどの共用空間に価値を持たせた賃貸住宅の形態である。価値観の多様化や働き方の変化を背景に国内外で市場が拡大、近年では社内外の交流機会提供の一環とした企業の社宅ニーズも増えてきている。

 相互住宅は早い段階からこの分野に着目し、第一弾として株式会社VLOOMと協業して東京都北区のコリビング「HAUN尾久」を竣工した。同物件では、一般的な賃貸住宅と比べて7~8割程度高い賃料単価水準を実現。高い収益性を確保できたことで、用地取得時の価格競争力向上にもつながったという。

コリビング「HAUN 尾久」:一般賃貸比7~8割程度増の賃料単価を実現。土地価値を最大化し、取得優位性を生んでいる。

 同社の強みはそれだけにとどまらない。一般の賃貸住宅や学生マンションに加え、ホテル、オフィスまで幅広いアセットタイプに対応できる点も大きな特長だ。回転型では外部売却や分譲に加え、グループ内リート・ファンドへの売却も選択肢となる。また、開発型に捉われることなく、エクイティ投資も含む稼働物件への投資も可能であり、柔軟なスキーム設計ができることは、パートナー企業にとって大きな安心材料となっている。

 また、建築費高騰により新規開発のハードルが上がるなか、相互住宅は既存ストックの再生を戦略の一つとして明確に位置づけている。保有ストックのリノベーションやコンバージョンを通じて建物のポテンシャルを引き出し、収益力を高める具体的な検討を進めている。保有機能を生かしたこうした取り組みは、今後も成長を支える柱として磨き込んでいく考えだ。

青山第一マンションズ(左) / 麻布第一マンションズ(右上) / フレンシア外苑西(右下)

パートナーとともに描く、
その先の景色

 相互住宅はこれまで、多くのデベロッパーとの共同事業を重ねながら、事業領域を広げてきた。例えば、伊藤忠都市開発株式会社との協業では、共同事業で開発した物件を出口で相互住宅が相手方のシェアを取得するスキームを採用。開発力と保有・運営力を掛け合わせ、開発利益を利回り向上へと転化するこのモデルは、両社の強みを生かした協業の好例といえる。

 足元のプロジェクトでは、コリビング「HAUN尾久」で得た知見を活かし、株式会社VLOOMとの協業第2弾となる平和台プロジェクトを進行中。また、自社単独でも、本蓮沼の防音マンションや、祐天寺・明大前で展開するタイムパフォーマンス(タイパ※1)、スペースパフォーマンス(スペパ※2)を意識した企画などを推進。付加価値型の商品開発を通じて、用地取得時の競争力向上を図る。


 第一ライフ丸紅リアルエステートグループ参画後は、丸紅都市開発株式会社との協業も本格化した。札幌・すすきのエリアで進むホテル開発プロジェクトをはじめ、現在は5件の共同事業を推進中だ。第一生命ホールディングスと丸紅グループ双方のネットワークを生かしたパイプライン形成により、同社の開発事業は今後さらに広がりを見せていくだろう。半田氏は最後に、こう締めくくった。

 「案件の特性や市場環境に応じて多様な選択肢を提示できる、スキームの柔軟性や多様なアセットタイプを有していることが当社の強みです。グループシナジーを背景に、より多様なパートナーの皆さまと長期的な視点で共創を広げていきたいと考えています」

※記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です

相互住宅株式会社

〒141-0032 東京都品川区大崎一丁目2番2号
https://www.sohgo-jyutaku.co.jp/