日経 xTREND Special

eSportsで協業するカプコン インテル代表対談

「ゲーム業界におけるゲーミングPCの現在地」

2020年に東京で開催されるビッグイベントに先駆けて、インテルはeSportsトーナメント Intel World Open 2020開催を発表した。インテル自身は世界最大規模のeSports大会「Intel Extreme Masters」を10年以上前から開催するなどeSports普及に向けた活動を続けているが、日本でのeSports大会開催は今回初めての試みだ。そこで今回は、Intel World Openで使用されるタイトルの1つ「ストリートファイターV」を手掛ける株式会社カプコン 代表取締役社長 辻󠄀本 春弘氏とインテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正氏の対談を通じて、Intel World Open開催に至る経緯からゲーム業界の現状、両社における今後の展望などについて伺った。

半導体メーカーとゲーム会社のトップ対談になりますが、
そもそもお二人にはどんな接点があるのでしょうか

鈴木:初めてお会いしたのは、私が前職である株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)時代にPlayStation(以下、PS)の担当になった際にご挨拶させていただいたときのことです。ゲーム開発に関する話題はもちろんですが、PSにおけるネットワークサービスをいかにビジネスにできるのか、ご一緒にできることがないかというお話をさせていただいたことを鮮明に覚えています。私が株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに移った際にも、米国で開催されるゲームショウの1つであるE3(Electronic Entertainment Expo)のパーティーでお会いするなど、その後もご縁が続いています。

辻󠄀本:初めてお会いした当時、まだデジタルがここまで普及していない中、PSのネットワーク戦略について深い考察をお持ちで、その説明に熱を感じたことを覚えています。鈴木社長とはそれ以降も様々なご縁があり、今回一緒にお仕事できることになったことは大変光栄に思っています。10年前ですので、今のようなeSportsなどのキーワードは、まだ日本に広まっていない時代でしたね。

鈴木:今回インテルの社長就任のタイミングでご挨拶したときは、「これからはPCなんですよ」というお話が即座に飛び出したのが印象的でした。私がインテルに来る前から、すでにPCを含めたマルチプラットフォーム展開を意識され、社内で相当議論されていたからこそだと思います。そのお話をお聞きしたことで、eSportsを含めてゲーム業界に対して何ができるか、チーム一丸となって考えるきっかけになりました。

2019年9月12日から開催された東京ゲームショウ2019に
お二人ともいらしてますが、その印象についてお聞かせください

辻󠄀本:今年はLAで開催されたE3をはじめ、中国でのChina Joyや欧州のgamescomなど名だたるゲームショウに参加しましたが、総合的に世界一のショウになったのではないかと考えています。マルチプラットフォームを対象に展示されるので幅広いプレイヤーが参画していますし、時流に沿った講演も多数開催されています。また、中学生以下と同伴の保護者も入場無料で体験できるファミリーゲームパークも設置されるなど、ホスピタリティが充実していることに加え、安全面も十分考慮された環境が整備されています。世界におけるゲーム産業の方向性を業界内外の来場者や視聴者が分かりやすく体験できるイベントになっているのではないでしょうか。

鈴木:ここ数年参加する機会がなかったのですが、10年の歴史で見てみると、今回はPCのスペースがかなり広がっている印象を持ちました。アナリストをはじめeSports関連のさまざまな専門家が出てきているなど、業界の動きがしっかり反映されたイベントになっていたのではないでしょうか。いずれにせよ、PCを使ったプレイヤーがこれだけ広がっていることに驚きました。

辻󠄀本:今回はeSports関連も充実していましたが、通信事業者の5Gなどの取り組みも登場していました。5Gについてはスマートフォンでの体験云々という話がよく出てきますが、本当に5Gの能力を体験できるのはPCではないでしょうか。スペックはもちろん、バッテリーに関する課題など、スマートフォンではすぐに5Gを生かすことは難しい。まずはPCベースで考えていくことになるでしょう。

先日の発表で、Intel World Open 2020にて
eSportsというジャンルでご一緒されると伺っています。
その経緯について教えてください

鈴木:グローバルでは、インテルはeSportsの大会スポンサーを10年以上にわたって続けており、特にeSports人口の多いアメリカや中国などでは積極的に活動を行っています。対して、日本に関してどうしていくのかという議論は以前から行われてきましたが、2020年に日本で開催される国際的イベントを契機に、日本でも本腰を入れていくべきだという結論に達したのです。日本で開催するからには、グローバルでも強い日本発のタイトルを活用すべきであり、そこで名前が挙がったのが「ストリートファイター」です。以前からの関係も手伝って、今回のご縁につながったと思っています。

辻󠄀本:eSportsに関しては、当社は2014年から「カプコンプロツアー」をグローバルで展開していますが、2018年の東京ゲームショウでは、国内で当社初めての主催となる、ジャパンプレミア大会を開催しました。今では全社を挙げてeSports事業を推進しており、日本でもリーグを立ち上げるなど、さまざまな活動を積極的に行っています。ゲーム専用機、いわゆるコンソール主体の日本に対して、グローバルにおけるeSportsの主流なプラットフォームはPCです。グローバルスタンダードを考えると、PCを活用したeSports展開の強化が求められていました。そんな折、インテル社からお声がけいただいたのです。まさに我々が考えるeSports戦略に合致していたこともあり、ご一緒させていただくことになりました。

コンソール中心の日本のゲーム市場において、
ゲーミングPCの広がりについてはどうお考えですか

辻󠄀本:eSportsとは別の観点でいえば、2018年1月に「モンスターハンター:ワールド」をコンソール版にて発売し、その後PC版を8月に発売したところ、我々の想像以上にPCプラットフォームの反響が大きかった。実際にビジネスシーンでも、ゲーミングPCは毎年成長を続けています。2018年の夏以降は、PCも主要なプラットフォームとして戦略的に対応しています。今回お話をいただく前から、インテル社とはPCプラットフォームでどうゲームを押し出していくのか議論を進めていました。

鈴木:我々としては、10年以上「Intel Extreme Masters」を手掛けており、日本での戦略を検討してきました。ゲーム業界にPCを拡販していきマーケットを拡大させていきたいという思いはもちろんですが、eSportsそのもののすそ野を広げていきたい、大きくしていきたいという枠組みがその根底にあります。今回のゲームショウで辻󠄀本さんは、eSportsを老若男女、年齢も性別も問わず幅広い層に向けて展開していきたいという考えをお話しされていました。これは、我々がこれからゲーミングPCを多くの人にご利用いただけるようにしたいという思いと同じ。まさにeSportsをきっかけにゲーム業界に対して何ができるかを考えている我々とぴったりマッチしており、それがIntel World Openにつながっているのです。

Intel World Openはまさにゲーム業界においても
象徴的な取り組みと言えそうですね

辻󠄀本:グローバルな視点で考えると、日本のプレイヤーもPCでもeSportsに取り組んでもらう必要があります。コンソールとPCではスペックが異なり、ゲームの種類によってはハードウェアスペックの関係で動作に差が生じる可能性もあるからです。また、PCは、特定のプラットフォームホルダーが存在しないことから誰とでも手を組めます。今回インテル社がIntel World Openを開催することは、PCでeSportsを押し出すという明確なメッセージだと受け取っています。これは日本のゲーム市場においても大きなインパクトになり、とても画期的なことです。

鈴木:今回一緒に取り組んでいただけるという意味では、カプコンのPCに対する意思表示であり、この領域でもしっかり勝負していくということの表れだと考えています。我々にとっては、まさに日本の市場でゲーミングPCを伸ばしていくという象徴的なイベントにしたい。全世界累計で4300万本というシリーズ総販売本数である「ストリートファイター」は、まさに我々にとってもベストマッチな組み合わせなのです。

今回のeSportsの取り組みをきっかけに、
それぞれ新たなユーザー獲得に向けて、
どんな形で広げていきたいとお考えでしょうか

辻󠄀本:地方と密着した形でeSportsを広めていくことで、町おこしのような地域活性化につなげていきたいという話を以前からさせていただいています。実は地方で行われている大会は非常に多く、さまざまな年齢層の方が興味を持ってeSportsに取り組んでおられます。自治体との連携も含めて地方の活性化につなげていけるよう、2020年はチームを各地方に展開する発表もしています。そして、地方自治体と企業が組む上で、PCの汎用性の高さは導入しやすいという点で、アドバンテージです。

鈴木:実は働き方改革の影響もあって、BtoB市場におけるPCは伸びている状況となっていますが、コンシューマについては、縮小しているわけでも大きく躍進しているわけでもありません。その意味では、新たな層として若い人にこれまでとは違うPCの使い方が提案できるのは大きなことです。ゲーミングという領域でも十分可能性がありますし、ARやVRなどイマーシブなコンテンツを利用する際にも、ノートも含めたPCのパワーを利用いただけるケースが十分にあります。4K UHDも含めて、PCならではの新しい使い方を若い人たちに広げていくというストーリーはすでに胎動しています。もちろんコンテンツと両輪で考える必要がありますが、業界全体でさまざまなことに取り組んでいきたいと考えています。

日本のゲーム業界において、
現在インテルはどのような位置付けにあるのでしょうか

辻󠄀本:コンソールが中心の日本市場では、ユーザーからすると、半導体メーカーであるインテル社がゲームに関与しているという意識は浸透の途上かと思います。もちろんゲーミングPCのコアにインテル社のチップが搭載されていることは認識していると思いますが、一般的なゲームユーザーからすれば、おそらく今回のIntel World Openについての考えや目的など、意外性を持って受け止められている部分もあるでしょう。逆にいえば、今回を契機に戦略的にインパクトのあることが実行できるいいタイミングではないでしょうか。

鈴木:今回のゲームショウでも、PCのスペースは以前に比べてかなり増えている印象があり、すでにゲーミングPCとeSportsという組み合わせが出来上がりつつある。我々は、この活動に対してさらに拍車をかけていくような動きをしていきたいと考えています。これからさらにゲーミングPCユーザーを広げていくためにも、ノートPCにもしっかりとしたスペックのチップを載せていきますし、グラフィックスに関してもディスクリートGPU(独立型のGPU)を2020年には復活させる計画です。心臓部であるCPUへの投資はもちろんですが、5G関連の通信設備やAIチップなどへも積極的に投資していくことで、ゲーミングPCインダストリーにおいて幅広い形で投資を行っていく予定です。

 eSportsに関しては、分かりやすく語るとプロデュースやプレイ、ビューイング、ソーシャルといったさまざまな段階がありますが、我々はそれぞれの体験、いわゆるUXに関するそれぞれの技術を持ち合わせているため、それら全般を支援していくのが我々の戦略と言えるでしょう。

辻󠄀本:多くの方がPC対コンソールという構図を描きがちですが、我々はそういった捉え方はしていません。ゲーム市場はグローバルで更に成長する予測がされており、これはインテル社含め、Google社やApple社などがゲーム市場に参入し始めていることからも明らかです。世界人口が70億人を超えるなかで、2年前の調査では、インターネットに接続している人は40億人を超えており、何らかのデバイスでゲームを楽しむ人は20億人といわれています。その意味でも、ハイスペックゲームを世の中に普及させることで、市場はまだまだ拡大することは間違いありません。そんな世界を一緒に目指していければと考えています。

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