日経クロストレンドSpecial

生活者の「不満」を「価値」に変換した商品開発ストーリー 膨大な不満を独自の文章解析AIで可視化生活者のインサイトをあぶり出す

消費者から不満を買い取り、マーケティングに役立つインサイトを企業に提供するというユニークなサービスを展開するInsight Tech(インサイトテック)。そのサービス内容と効果について、日経クロストレンド 発行人の杉本昭彦が、同社の渋瀬雅彦氏、ユーザー企業である味の素AGFの髙地祐史氏に聞いた。

生活者のオーガニックな不満を買い取る「不満買取センター」

杉本 「生活者の不満を買い取る」というのは、世界的に見てもかなりユニークなサービスだと思います。まずは、サービスの内容と特徴について教えていただけますか。

渋瀬 Insight Techは主に「不満買取センター」と「文章解析AI『ITAS(アイタス)』」を活用したサービスを提供しています。「不満買取センター」のサービスは2015年にスタートしました。これまでの5年余りで会員数は延べ43万人、買い取った不満の数は累計1500万件となっています。

 買い取っている不満は15文字以上のテキスト情報であり、その内容を文章解析AI(人工知能)が査定し、投稿いただいた会員にポイントが付与される仕組みとなっています。

杉本 買い取った不満は、どのように利用しているのでしょうか。

渋瀬 テキストで記載された不満内容を定量的に可視化して、「どのような不満が多いのか?」「購入への影響が強いのか?」などを分析するとともに、定性的に解釈してその不満の背景や結果などをレポートとして取りまとめます。主に企業の商品・サービスの改善や開発などに活用されています。

杉本 企業はそれぞれに独自の消費者調査も行っているはずですが、それらとInsight Techが行っている調査や、提供できるデータの違いは何でしょうか。

渋瀬 「不満買取センター」に集まる不満の特徴として、①生活者が日常生活で感じた、いわゆる「オーガニック(自然発生的)」な不満であること、②SNSのようにオープンなものではないので他人に言いにくいような本音も自由に書き込んでもらっていること、③テキスト情報であるため不満を感じた理由や要望などが詳細に記載されていること等が挙げられます。

 多くの企業が活用しているアンケート調査では回答時点での記憶や意識に基づいて回答される傾向にあるため、日常生活でふと感じたことなどが把握しにくいという限界があります。

 そのような背景から、利用企業からは「データの中に生活者の潜在ニーズが多く存在し、未充足ニーズの発見やインサイトの探索に活用しやすい」といったご評価をいただいております。

スモールマスを掘り起こすために不満データを活用

杉本 味の素AGFでは「不満買取センター」が収集・分析したデータを商品開発などに活用されているそうですが、サービスを利用することになったきっかけは何だったのでしょうか。

髙地 当社は1975年発売の「マキシム®」や77年発売の「ブレンディ®」などのブランドでマスマーケティングを展開してきたコーヒー中心の嗜好飲料メーカーですが、昨今、生活者の変化のスピードは非常に速く、新商品を投入すると、一時的にはヒットしても、わずか数年で陳腐化してしまうという状況を何度も経験してきました。

 変化を捉えるため、デジタル技術を駆使したウェブ調査やグループインタビューなど自前のリサーチも積極的に行っていますが、そうした調査では見えにくい普段の生活シーンや、バイアスがかからない形で出てくるデータにこそ、新しい商品開発の種や、新しいお客様の潜在ニーズがあるのではないかと考え、「不満買取センター」のサービスを利用することにしました。

髙地祐史氏/渋瀬雅彦氏/杉本昭彦氏
写真左から味の素AGF株式会社 リテールビジネス部 Stickグループ グループ長 髙地祐史氏、株式会社 Insight Tech マーケティング部 渋瀬雅彦氏、日経BP 日経クロストレンド 発行人 杉本昭彦

杉本 メインターゲットの属性はある程度絞り込まれてはいても、やはりマスマーケティング中心では難しくなっているということでしょうか。

髙地 例えば30代、40代の主婦といっても、昨今は共働きが増え、世帯構成も変わっているので、今まで通りの商品だけでは足りない部分があると思っています。主力商品であるスティックタイプの嗜好飲料を中心に、新しいご提案や、パーソナルニーズに合わせた商品開発をしていかなければなりません。

 スモールマスをいち早く発見して、ミドルマスに育て上げるようなマーケティングの実践を目指しています。そのためにも不満データを積極的に活用していきたいですね。