ディープラーニングで変わるビジネス ディープラーニングで変わるビジネス

満足度向上、
離職率低下といった好循環

ユニファが提供する写真サービスの「ルクミーフォト」、午睡チェックサービスの「ルクミー午睡チェック」以外にも、検温やシフト管理もデジタル化することで、保育者を事務的な作業から解放。単純作業が減ることで、保育者が子どもに向き合う時間が増えて、自分がやりたい本来の仕事に集中できるようになる。

仕事の満足度も高まっていく。だから離職率も下がっていく。保育施設サイドは、採用コストを抑制できるので、その分、保育者の手当に回す余裕も出てくる。そんな好循環が見えてきている。これを保育DXと呼ぶのだろう。保育施設の収益向上に併せて、いま社会問題になっている保育者の高離職率も全体的に抑制される期待がかかる。

ユニファ

ディープラーニングは
垂直モデルに適用

一般にディープラーニングで大きな収益向上を図るには、水平展開型より、垂直統合型の方が効果的との見方がある。会計処理や人材採用という職種や業務でディープラーニングを使って効率化するより、企画、開発、製造、販売といった上流から下流まで担う業種に丸ごと活用するという考え方だ。その方が投資対効果のレバレッジが利きやすいというものだ。もしそれが正しいなら、土岐氏が実践している戦略は理にかなっている。

土岐氏はいま、二つ目のディープラーニング活用に挑んでいる。未発表の案件なので、詳細は話してくれなかった。が、おおむね次のような戦略だ。

保護者との連絡帳で、1枚の写真を中心に、「今日、初めて自分で靴を履けたんですよ。お友達の一樹くんがそばでじっと見てました。それから二人で、トンボを捕まえに走っていました」といったコメントを付けてあげる。通常ならすべて、保育者が手書きで作成していく。

ここにディープラーニングの画像認識を使うことで、ほとんど手間をかけずに、充実した写真日記が毎日出来上がる。保護者はさぞ喜ぶだろう。

得られたデータで
教材メーカーと連携

話はここで終わらない。

トンボに興味を持ち始めた子どもが増えてきたら、その教室にはトンボがたくさん載っている図鑑を並べた方が子どもは喜ぶ。来月の誕生日に何を子どもにプレゼントしようか思案中の保護者にとっても貴重な情報になる。「保育業界に特化した様々な種類のデータ量の多さには自信があります。個人情報保護を最優先にしながら、有意義なデータは今後活用していきたいと思いますね」と土岐氏は語る。教材メーカーと連携しながら、物販につなげていくことを検討中だ。

ユニファ 代表取締役CEO

土岐 泰之 氏

九州大学経済学部卒業後、住友商事に入社し、スタートアップへの投資検討や事業開発を担当。その後、外資系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーやデロイトトーマツコンサルティングで企業の事業戦略や再生支援を経験。2013年にユニファを創業

インタビュアーの日経BP 杉山俊幸

こうしたビッグデータの活用のため、子どもの興味関心をベースに、ユニファ社内で議論を深めている。いまAという分野に関心がある子は、次にB領域に興味を持ちやすい。ビッグデータ分析の基盤を整備して、その基盤を活用する能力のある保育者の待遇改善などにつなげて、保育者の付加価値が高まっていく社会を作りたい。それが土岐流DXだ。

ヘルスケア領域にも可能性を感じている。体動センサーや検温など毎日取れるバイタルデータと、その後の体調などを医師など専門家と一緒に分析すれば、保護者へのアドバイスができる可能性がある。

現在までに約88億円の資金調達に成功し、海外機関投資家やセールスフォース・ドットコム、第一生命保険、凸版印刷、エムスリーなど有力企業を株主に抱え、成長を続けるユニファ。保育業界DXに大きく一歩近づいている理由として土岐氏が挙げた4点は興味深い。

業界DXにはこの4条件が必要だ

まず、業界まるごとのデータが取れる可能性があること。例えば自動車業界のDXといってもメーカーの力が大きく、また業界そのものが大き過ぎて、統一的にデータをまとめるのは難しい。その点、保育業界は業界DXの可能性があるサイズ感だと言える。

次に、業界全体が抱える深い課題、ペインがあり、皆がデータを差し出してくれやすいこと。保育士不足は業界の深刻な課題であると同時に、それを解決すれば、女性のさらなる活躍支援や少子化の解消につながる社会的意義がある。だから関係先からのデータを得られやすい環境にある。

そして、ソリューションを提供する会社の泥臭さとテクノロジー重視を両立させる土壌を作ること。テクノロジー系の人たちはたいてい泥臭い営業を嫌がるし、そうした営業が得意な人たちはAIを机上の技術と考えやすい。両方を高いレベルで融合するような組織体、企業体にするため、従業員全体で約200人のうちエンジニアが約50人を占める体制とした。ディープラーニングの担当は3、4人、基本社内でまかなうことにしている。

最後が、「時代に愛されること」だと土岐氏。かなりの資金調達も必要だが、要は最終的にビジネスになるかどうかがポイントになる。土岐氏は続ける。「顧客が抱えるペインとビジネスモデルとテクノロジーが合わさらないと何十億円というお金は出してもらえない。いまは、待機児童の解消や子どもの発達など多くの社会的な課題がある。(小中学生に1人1台のデジタル端末を配備する)GIGAスクール構想のように教育現場はデジタル対応が急務。その解決のためなら顧客(保育施設)もデータを活用しましょう、となってくれるのです」。

ユニファ

第一子を東京で産み、産休明けに愛知の豊田市にある会社へ戻りたかった妻、それと行動を共にした土岐氏。見知らぬ土地での育児で、あったらいいな、がチーム育児だった。会社設立時の資料にはこう記載がある。「パーソナライズド・クローズド・コミュニティをつくる」。このコミュニティの活性化に使ったのがディープラーニングであり、それが保育業界のDXにいまつながろうとしている。

聞き手

インタビュアー
日経BP 総合研究所 主席研究員

杉山 俊幸

日経ビジネス副編集長、日経ビッグデータラボ所長、日経クロストレンド発行人を経て、2020年1月から現職。

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ディープラーニングの
知識・能力を検定する「G検定」
2021年7月17日に開催

G検定

ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指す日本ディープラーニング協会は、第2回 ジェネラリスト検定(G検定)を2021年7月17日(土)に開催する。G検定はディープラーニングを活用したプロジェクトに関わる全ての人(ジェネラリスト)向けの検定で、プロジェクトの検討・企画・推進のために必要な実践要素を含むリテラシー習得に関する試験内容となっている。合格者には認定ロゴと合格証の配付のほか、協会主催の「合格者の会」やハッカソン、勉強会など、オフラインの場でも合格者同士の交流ができる合格者コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に招待される。

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一般社団法人 日本ディープラーニング協会
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