ディープラーニングで変わるビジネス ディープラーニングで変わるビジネス

R&D(研究開発)アウトプットを2倍に拡大、
自社開発のグローバル品を毎年上市することを目指す──。
中外製薬は2030年に向けて新たな成長戦略「TOP I 2030]を策定した。
かなり高い目標に思える。
それゆえDX(デジタルトランスフォーメーション)で
仕事のやり方や“人財”育成の変革を進める。
陣頭指揮を執るのは、日本アイ・ビー・エムから転じた、
執行役員の志済聡子デジタル・IT統轄部門長である。

それにしても、なかなか意欲的な目標である。中外製薬が2030年に向けた新たな成長戦略「TOP I 2030」にはこうある。

「現在のR&Dアウトプットを10年間で2倍に拡大し、革新的な自社開発グローバル品を毎年上市できる会社を目指します」

デジタルなくして、その実現はあり得ない。取りまとめ役が志済聡子氏である。執行役員でデジタル・IT統轄部門長の職にある。

今年12月期、本業のもうけを示すコア営業利益は5期連続で過去最高を更新する見通しを発表している。売上収益に対する純利益率は27%(昨年12月期)で、武田薬品工業の12%、第一三共の8%を大きくしのぐ。つまり、ぜい肉のついたからだにムチを入れてアウトプットを2倍にするのとワケが違う。十分に筋肉質で効率的な研究開発部門に厳しめのムチを入れないと、2倍になんて届かない。

エベレストを登るくらい高い目標

国内の製薬会社が自社開発でグローバルに販売する新薬の上市は、数年に1度あるいは10年に1度が一般的とも言われる。それを、毎年上市するのだという。

 「富士山登頂どころではないですよ。いきなりエベレストの登頂を目指してください、と言われているようなものですね」

インタビューで志済氏の右どなりに座っていた、研究本部創薬基盤研究部長の角田浩行氏は遠慮ない。世界で戦うためには、もはや後戻りできないし、やるしかない。もっとも角田氏の表情に悲壮感はなかった。

中外製薬

事業内容:医薬品の研究、開発、製造、販売および輸出入/本社所在地: 東京都中央区/設立:1943年/従業員数: 7555人(連結、2020年12月31日現在)

ディープラーニングの画像認識は
病理解析と親和性

志済氏が用意したのはDX(デジタルトランスフォーメーション)という“武器”である。「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」では、デジタルを活用した革新的な新薬創出、すべてのバリューチェーンの効率化、デジタル基盤の強化をうたった。「研究開発に投資を集中させたいという強い思いがあるのです」と志済氏は狙いを語る。新薬創出には、ディープラーニングなどAI(人工知能)を全面的に活用する。

病理学、抗体創薬、論文検索などにディープラーニングを活用している (出所:中外製薬)

そもそも、ディープラーニングが得意とする画像認識は病理解析となじみがいい。がんの診断など広く臨床の現場では病理画像が使われる。その診断にディープラーニングを活用する。

がん研究の中では、体内の免疫細胞を使ったがん免疫療法というものがある。免疫細胞がどのくらいがん組織に浸潤したかを画像から読み取る工程があり、従来は病理の専門家が1枚ずつ見て判断する。この画像は免疫細胞の割合が「+」とか「+++」などと表現してきた。

ディープラーニングを用いた画像認識を使えばどれくらい浸潤したのか自動的に解析できる。最近では、遺伝子変異のタイプとがんの形態の関係性が少しずつ分かるようになってきている。だから、こうした病理解析の分野での効率化が進む。

人間の7000日分を
1日でこなす

どれくらい効率化できるのですか。そう記者が問えば、「人間が7000日かかってやることを、ディープラーニングなら1日でできる計算ですね」と角田氏は笑った。

中外製薬で病理解析の現場にディープラーニングを活用するプロジェクトは17年から動き出した。顕微鏡にセットしたスライドをすべてスキャナで取り込み、電子化するように切り替えた。それをシステムに学習させ、ディープラーニングによる判断が病理解析の専門家の診断と違っていたら、それを修正する作業を繰り返している。病理研究員の水準まで引き上げたのが20年、大幅に生産性が向上した。

中外製薬

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抗体医薬品の開発にもディープラーニング

全てのビジネスパーソンへ。
AI理解のための無料オンライン講座「AI For Everyone」開講

DL for DX

DX化が進むこのデジタル時代において、今やAIはエンジニアだけのものではないビジネスパーソンのコアリテラシーになっている。日本ディープラーニング協会はAI/ディープラーニングについて「まず知る」ための無料※オンライン講座「AI For Everyone」を開講した。世界最大級のオンライン講座プラットフォ ームであるCoursera(コーセラ)上で、既に全世界60万人以上の受講者を誇る人気のコース「AI for Everyone」に、JDLA制作、松尾豊講師の日本向けコンテンツを加えた特別版で、AIの基礎を学びたい人、今の組織を、AIを使いこなせる組織へと変革させたい人、そんな全てのビジネスパーソンに、理系文系、肩書や職種を問わず受講できる内容になっている。

受講は無料です。ただし、配信プラットフォームであるCoursera発行の受講修了証取得コースをご希望される場合には、別途Courseraへのお支払い($49)が発生いたします。

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ディープラーニングの
知識・能力を検定する「G検定」
2021年11月6日に開催

G検定

ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指す日本ディープラーニング協会は、第2回 ジェネラリスト検定(G検定)を2021年11月6日(土)に開催する。G検定はディープラーニングを活用したプロジェクトに関わる全ての人(ジェネラリスト)向けの検定で、プロジェクトの検討・企画・推進のために必要な実践要素を含むリテラシー習得に関する試験内容となっている。合格者には認定ロゴと合格証の配付のほか、協会主催の「合格者の会」やハッカソン、勉強会など、オフラインの場でも合格者同士の交流ができる合格者コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に招待される。

「G検定」 詳細ページへ

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