ディープラーニングで変わるビジネス ディープラーニングで変わるビジネス

抗体医薬品の開発にも
ディープラーニング

中外製薬は抗体医薬品の開発を得意としてきた。抗体医薬品は免疫グロブリンと呼ばれる「抗体」の機能を持つたんぱく質が、特定の抗原と結合するという仕組みを活用した薬のこと。薬が狙った場所にピンポイントで届けば、患者にとって副作用が少ないといった利点がある。中外製薬はたんぱく質のアミノ酸配列を改変して、目指す特性を持つ抗体医薬品を作る独自の技術を持っている。

抗体医薬品の開発過程では、数千もの抗体を作って、抗原との結合度合いや安定性、溶解性などを評価していく。ただし、アミノ酸配列の組み合わせは10の20乗を超えるという途方もない数なので、想定した抗体医薬品をデザインするのは簡単ではない。

中外製薬

LSTMを使ってみる

そこで、ディープラーニングのLSTM(Long-Short Term Memory、長・短期記憶)というアルゴリズムを活用して効率化を図った。画像認識と並んで、ディープラーニングの得意分野の一つに自然言語処理がある。RNN(Recurrent Neural Network)と呼ばれる文字列を扱うことのできるニューラルネットワークが有名だが、その発展版の一つがLSTMである。

角田氏は言う。「抗体のアミノ酸配列の中で、ここにこの3種類のアミノ酸がきたら、その次はこの2種類のアミノ酸がくるという予測はおおむね立つわけです。それを全配列で実施するのにLSTMを使ったのです」。

少し難しい。例えば、と言って角田氏は例を挙げてくれた。

「マレクサ、入ってる」

“I play the piano.”“I like curry.”とは言うけれど、“I play curry.”とは言わない。つまり、playの後にcurryは来ないという法則がある。

抗体というたんぱく質の構造を織りなすアミノ酸の法則性については、20年以上前から研究されており、そうした法則をアルゴリズムに反映させていく。システム内部で、“I play curry.”に相当するアミノ酸配列を自然に除去しているわけである。

こうした機械学習を用いた抗体創薬技術を、中外製薬では「MALEXA(マレクサ)」と呼んでいる。既に、既存の抗体と比べて1800倍以上の結合強度を持つ抗体のアミノ酸配列を見つけることに成功している。

 「2030年の“毎年上市”の頃になったら、パワード・バイ・マレクサがたくさん出てくることを期待しています。『マレクサ、入ってる』という感じですね」と志済氏は笑う。

論文検索にもディープラーニング

膨大な論文から、有効なものを探し出すのにも、ディープラーニングを使っている。データ解析のFRONTEO(フロンテオ)と論文検索システムを共同開発した。医療論文のデータベースにある論文を全部読み込ませて、それら論文の単語やセンテンスをベクトル化して、キーワードを入力すると、ひと目でどの論文が目的の情報なのかを分かりやすく可視化し、マップ形式で表示されるようになっている。

例えば、COVID-19をキーワードに入れて検索をすると、最新の論文から順番に羅列されるのではなく、各論文がドットで表現され、論文同士の関係性の近さがドットの集合(島)で表示される。例えば、ここの島がCOVID-19と肺の傷害の論文、ここは血管の炎症に関する論文、また、ここはワクチンの論文、といった感じで内容ごとに分かれている。関心のあるエリアをポチッと押すと、関連する多くの論文を確認でき、研究員が知らなかったような領域の情報にも簡単にアクセスできる。

膨大な論文情報を即時検索、分析する論文検索AIシステム「Amanogawa」

膨大な論文情報を即時検索、分析する
FRONTEOの論文検索AIシステム「Amanogawa」

将来は内製化が欠かせない

中外製薬の戦略のもう一つは、DXを進める要素となるAIやデータに関する知識を全社に浸透させることだ。志済氏は言う。「社外のデータサイエンティストにお願いするケースもありますが、将来的には内製化が欠かせないと思いますね」。

結局のところ実ビジネスが分からないと、データサイエンティストだけではどうにもならない。しかも社外に開示できないデータもある。社内で、抗体医薬品などの創薬モダリティ(治療手段)を熟知する研究員や実験業務が分かる研究員と、データサイエンティストが同じ目的を持って協働することが必要になってくる。

ビジネスとデータサイエンス、両方できる人がいればそれに越したことはない。が、そんな人はまだそう多くはいない。少なくとも研究員と一緒にニーズが分かっているデータサイエンティストがアルゴリズムを作る必要がある。そう志済氏は考える。つまり内製化である。

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