ディープラーニングで変わるビジネス ディープラーニングで変わるビジネス

急速に高まる
デジタルリテラシーへの関心

中外製薬の社内ではいま、デジタルリテラシーへの関心が高まっている。例えば、20年11月の日本ディープラーニング協会のG(ジェネラリスト)検定。ディープラーニングをビジネスに生かす知識を試験で確認する検定である。中外製薬のデジタル戦略推進部がまず受験してみようとなり、それを各部門のデジタルリーダーの連絡会で共有したところ、ウチの部署も受けてみたいとの社内問い合わせが相次いだ。結局、一気に500人を超える社員が受験することになった。

またバイオ産業情報化コンソーシアム(JBIC)主催の2日間のデータサイエンス講習会は、当日の参加者の多くが中外製薬の研究員だったという。遺伝子発現解析のセミナーだったらしい。無料で充実した内容が提供されたということもあろうが、それにしても意欲的だ。

どうしてそこまで積極的なの?

どうしてそこまで積極的なのだろう。角田氏に聞いてみた。「19年の秋、デジタルの力で業務を変革するDXを全社で推進するというメッセージが会社から発信されました。デジタル・IT統轄部門ができ、そのトップに志済部門長が就いた。会社が向かう方向性やビジョンが明示され、あとは各部門で何をすべきか具体的な施策を提案し、様々なトライアルが始まったというわけです」。

その1年前、18年のこと。当時社長だった小坂達朗氏(現会長)から、志済氏は中外製薬への招聘(しょうへい)打診を受ける。二人は北海道大学の東京・北大同窓会の副会長と理事という関係だった。日本アイ・ビー・エムで執行役員をしていた志済氏は、公共営業を新たに担当することになったばかり。そんな理由で誘いを断った。

「そろそろ、どうですか」。小坂氏は1年越しで志済氏を誘った。そして志済氏は入社を決めた。小坂氏と奥田修社長が推し進める全社のDX。その責任者に、経営トップが社外からわざわざ呼んだ人物を据えれば、社内に向けたメッセージとしては十分なのだろう。

中外製薬
執行役員 デジタル・IT統轄部門長

志済 聡子 氏

1986年に日本IBMに入社。官公庁向け営業などを経験し、2009年から同社執行役員として公共やセキュリティー事業を担当。2019年5月に中外製薬に執行役員待遇で入社し、2019年10月より現職。

中外デジタルアカデミー、
本気の人材育成

今では、英語など語学スキルと同じく、デジタルスキルの重要性が認識されつつあるようだ。そうした人材を育てるために、21年4月にはChugai Digital Academy(CDA)を社内に作った。所管は志済氏のデジタル・IT統轄部門である。

数十名を公募したうち、半分がデータサイエンティスト候補、もう半分がデジタルプロジェクトリーダー候補である。そこで教育を受けたことは人事記録としても残る。実務で使えることを念頭に教育するし、逆に輩出した部門の責任者には学んだことを実務で活用する工夫をしてもらう。

創薬関連だけでなく、営業部門は経済産業省所管の国家試験「ITパスポート試験」の受験を推奨しているし、生産部門にもデータサイエンティストが多数いる。

中外製薬
研究本部 創薬基盤研究部長

角田 浩行 氏

1997年中外製薬入社。入社後は抗体医薬品の研究開発に長らく携わり、現在は創薬基盤研究部長を務める。次世代の創薬活動に必要な基盤技術の開発を統括。

30年には
製薬会社ではなくなっている?

インタビュアーの日経BP 杉山俊幸

19年、中外製薬はミッションステートメントの目指す姿について、「ロシュとの協働のもと、独自のサイエンス力と技術力を核として、患者中心の高度で持続可能な医療を実現する、ヘルスケア産業のトップイノベーターとなります」と再定義。その実現を目指し30年に向けた新成長戦略としてまとめたのが、冒頭で触れた「TOP I 2030」である。志済氏は言う。

「ヘルスケア産業のトップイノベーターとは言ってますが、トップイノベーターの製薬会社になるとは言っていません。我々は創薬が主軸ですが、もうちょっと広がった色んなサービスを提供できるのではないか。ヘルスケアの構造が変わっていくのではないかと考えているのです。デジタル技術やデータを活用してビジネスの在り方を変えていくこともあり得るのではないかと思っています」

中外製薬は、ディープラーニングなどAIを使った真のDXを推進することで、もはや製薬会社ですらなくなっていくのかもしれない。

聞き手

インタビュアー
日経BP 総合研究所 主席研究員

杉山 俊幸

日経ビジネス副編集長、日経ビッグデータラボ所長、日経クロストレンド発行人を経て、2020年1月から現職。

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エベレストを登るくらい高い目標

全てのビジネスパーソンへ。
AI理解のための無料オンライン講座「AI For Everyone」開講

DL for DX

DX化が進むこのデジタル時代において、今やAIはエンジニアだけのものではないビジネスパーソンのコアリテラシーになっている。日本ディープラーニング協会はAI/ディープラーニングについて「まず知る」ための無料※オンライン講座「AI For Everyone」を開講した。世界最大級のオンライン講座プラットフォ ームであるCoursera(コーセラ)上で、既に全世界60万人以上の受講者を誇る人気のコース「AI for Everyone」に、JDLA制作、松尾豊講師の日本向けコンテンツを加えた特別版で、AIの基礎を学びたい人、今の組織を、AIを使いこなせる組織へと変革させたい人、そんな全てのビジネスパーソンに、理系文系、肩書や職種を問わず受講できる内容になっている。

受講は無料です。ただし、配信プラットフォームであるCoursera発行の受講修了証取得コースをご希望される場合には、別途Courseraへのお支払い($49)が発生いたします。

「AI For Everyone」 詳細ページへ

ディープラーニングの
知識・能力を検定する「G検定」
2021年11月6日に開催

G検定

ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指す日本ディープラーニング協会は、第2回 ジェネラリスト検定(G検定)を2021年11月6日(土)に開催する。G検定はディープラーニングを活用したプロジェクトに関わる全ての人(ジェネラリスト)向けの検定で、プロジェクトの検討・企画・推進のために必要な実践要素を含むリテラシー習得に関する試験内容となっている。合格者には認定ロゴと合格証の配付のほか、協会主催の「合格者の会」やハッカソン、勉強会など、オフラインの場でも合格者同士の交流ができる合格者コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に招待される。

「G検定」 詳細ページへ

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一般社団法人 日本ディープラーニング協会
https://www.jdla.org/