日経XTREND SPECIAL

時代に左右されない“不変の型”によって正しい消費者理解のためのリサーチを実現

chapter2chapter2データの分析結果を“1枚”にまとめることで
戦略的思考を養う

杉本

モニタスは、企業が持つ会員組織のアンケートモニターシステムの構築・運営、LINEのプラットフォームを活用したLINEリサーチの提案などで、企業のマーケティング活動を支援しています。サービス提供側として、和田さんが指摘された課題についてどうお考えでしょうか。

林

インターネットを活用したリサーチ手法は短期間で大量のデータを得られるという利便性の裏で、それゆえに“量産”が目的化し、消費者インサイトをブランディングに生かすといった本来のゴールを、得てして見失いがちです。その功罪はリサーチ業界にいる人間として見過ごせない課題と捉えています。

ただ、先の“型”が不変の本質であるならば、消費者の生活環境の変容により、最適な情報を集める手法は変えるべきものです。当社では、スマートフォン専用の調査プラットフォーム「LINEリサーチ」のオフィシャルパートナーとして、LINEのプラットフォームを活用したLINEリサーチの企画設計・実施・集計・分析サービスを提供していますが、消費者の生の声を集めるには、もはや生活インフラとなったLINEこそが最適な手法と考えています。

そこで見失ってはいけないのが、LINEはあくまでもツールであって、重要なのは消費者の声を届けること。本質的なアウトプットにはどうつなげるのかが重要です。

林 秀紀氏
リサーチ結果が本質的に何を生むのか。価値観のものさしを変えられるよう、積極的に提案していきたいです
株式会社モニタス 代表取締役社長
林 秀紀Hidenori Hayashi
マーケティングリサーチ会社などを経て、2008年、独立。11年、株式会社ゲイン(現モニタス)に参画し、15年同社代表取締役社長に就任。16年株式会社モニタスへ社名変更。LINEリサーチを活用したリサーチ提案と、企業が保有する会員組織をアンケートモニター化する「スパコロシステム」を2本柱に企業のマーケティング活動を支援。
杉本

量産を目的とするリサーチにならないためには、具体的にはどのような点に注意するべきでしょうか。

和田

まず、リサーチには3つのフェーズがあります。1つ目は外的な環境分析、2つ目はプロジェクトを動かしつつ必要な検証をするための調査、3つ目は結果が出た際にそれが目指すゴールに到達しているかを見極め、次のアクションを考えるためのリサーチ。この3つを個々の結果を踏まえながら、戦略的に推進することが肝要です(図表)。

マーケティングにおいて必要な3領域のリサーチ
和田

よって、大量のデータを目の前にしても正しく分析する力がなければ何の意味もありません。数字とバラバラの意見の山から、現状を明確に表している部分を選び出し、そこから問題点やチャンスを見つけ出す能力=分析力が必須です。

P&Gの社員は、日頃から報告や承認を得る際のドキュメントをおおむね1ページに収めることが求められています。マーケティング部門に配属されると、まず大量のデータをドンと渡され、分析作業を任されます。さらにその分析結果とそこから考えられる新たな視点や戦略を1~2ページのメモにまとめ、上司のOKが出るまで何度でもリライトを繰り返します。

愚直な作業ですが、1~2ページに収める訓練をすることで、本質を見極める目が養われ、論理的に物事を整理する力がつきます。何が重要で、何が問題なのか。そのためにどんなアクションが必要なのか、問題解決型の戦略的思考能力も備わってきます。

林

当社も、3年間ほどサマリー勉強会を開催していますが、シンプルに見えて、実は分厚いパワーポイント資料を作成するよりも難しい。LINEリサーチで求められる分かりやすい質問表現やコンパクトな調査設計の力を磨く訓練にもなっています。

和田

さらに重要なのは、リサーチ後、想定外で不都合な結果が出た際に事実から目を背けないことです。私自身、P&Gで製品完成後、消費者へのリサーチの結果が思わしくなく、ゼロからやり直したことが何度となくあります。考え直したからこそ成功したケースも数多い。

杉本 昭彦
日経クロストレンド発行人
杉本 昭彦Akihiko Sugimoto
日経BP入社後、『日経ネットナビ』、日本経済新聞社東京編集局産業部などでインターネット業界の取材を長年続ける。2007年の『日経ネットマーケティング』(日経デジタルマーケティング)創刊時より副編集長、13年4月、編集長。14年1月、『日経ビッグデータ』編集長。18年4月より日経クロストレンド開発長 兼 日経クロストレンド副編集長、19年4月より現職。

chapter3chapter3戦略を軸にDXを“取り込む”ことで
マーケティングは刺激的に進化する

杉本

「変わるべきもの」という点では、デジタル技術の進歩やコロナ禍の後押しもあり、データ収集法やソリューションの選択肢も増えています。こうした変化については、どう見ていますか。

林

リサーチ会社が保有している調査専用モニターのみに頼り、マーケティングの意思決定をしていくという従来のスタイルから、自社のプラットフォームを活用し、消費者にダイレクトにアプローチする企業が増えているのは大きな変化だと思います。

例えば、スマートフォンアプリを使って自動販売機で飲み物を買えるコカ・コーラの「Coke ON」は、2600万ダウンロードを達成し(2021年4月時点)、得られたデータをさまざまなサービス展開につなげています。

当社でも、アプリ会員向けのアンケート調査支援サービスを提供していますが、テクノロジーの進展により自社のプラットフォームに必要なソリューションを組み合わせることで、顧客ごとに最適化されたアプローチも可能です。こんなことを言うと、同業者から嫌がられるかもしれませんが(笑)。

和田

日本コカ・コーラ社が提供する「Coke ON」では、歩数計測機能を搭載し目標の歩数を達成するとスタンプがもらえるといった楽しい体験を提供しているのもコカ・コーラらしくていいですよね。データの収集、分析を経てプラットフォーム上に、どんどん新しいアイデアを実装できるのは、まさにDX(デジタルトランスフォーメーション)の力の良い活用例だと思います。

林

当社がお手伝いしたケースでは、ヤマダデンキ社運営のアプリ「ケイタイde安心」内に会員専用のアンケートコンテンツを設置しました(図表)。当社のSaaSサービス「スパコロ」でアプリ内にアンケート環境を構築し、アンケート結果は、管理画面で可視化されます。当社では、単純な物理的データの納品ではなく、社員一人ひとりが、その先でデータが何に使われるかを理解し、付加価値型提案を提供することに注力しています。

杉本

最後に、DXの活用を含め、マーケティングを成果に結びつけていくための助言をお願いします。

和田

大前提としてDXを推進したからといって、マーケティングがうまくいくわけではありません。エンドユーザーを理解し、戦略を立て、進むべき方向を見極めれば、DXとの“つなぎ目”が見えてくる。DXに飛びつくのではなく、上手に取り込むことで、DXはマーケティングの仕事を実に刺激的で面白いものにしてくれるパワーを持っていると思います。

私が監修・講師を務める「Marketing Waza」では、P&Gのマーケティングを牽引してきたプロフェッショナル達が、先ほどお話ししたようなP&Gで行ってきたトレーニングの経験をもとに、世界で通用できるマーケティングの“型“を直接指導しています。人を育てることもマーケターの重要な役割であり、私自身も後進のマーケター育成に尽力してまいります。

林

当社の社員も「Marketing Waza」に参加し、クライアントに対して積極的に戦略立案できる術を身に付けています。

社会や環境の変化を受け、新たな商品やサービスを生み出す“入口”となる消費者のインサイトをクオリティー高く探索していくニーズはさらに高まっていくでしょう。基本となる“型”をしっかり固めたうえで、小さな組織ならではの機動力を強みに、従来型のリサーチ事業の枠を超えた新たなソリューションもどんどん提供していきたいと考えています。

杉本

今後の新たな展開に期待しています。本日はありがとうございました。

林氏 和田氏 杉本
モニタス
株式会社モニタス
〒105-0011 東京都港区芝公園1-1-1
住友不動産御成門タワー9F
FAX: 03-5776-2822
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