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Cookie規制はマーケティング変革のチャンス 顧客の体験価値を向上させるマーケターの新しい武器とは何か

Cookie規制はマーケティング変革のチャンス 顧客の体験価値を向上させるマーケターの新しい武器とは何か

主要なWebブラウザでのCookie規制が発表され、Web広告の世界は新たな段階に突入している。また、新型コロナウイルス感染拡大による顧客のオンライン購買へのシフトや、オンラインとオフラインの顧客体験の統合など、マーケティングが直面する課題は多い。新時代のマーケターと企業にとって必要なものとは。

Cookie規制は企業の顧客体験を見つめ直す絶好のタイミング

Web広告の世界に大きな変化が訪れている。ここ数年のうちに、主要な複数のWebブラウザ上で、いわゆる「サードパーティーCookie」の使用が制限される。これは企業にとって、顧客のオンライン上の行動を基にターゲティングしていたバナー広告などの手法が難しくなることを意味する。企業のデジタルマーケティングにどのような影響を与えるのだろうか。

日本オラクルでCX(カスタマー・エクスペリエンス)製品事業を統括する桑野祐一郎氏は、Cookie規制の導入は、企業のマーケティングが新しい手段を導入する契機になると語る。

「良い意味で、マーケティングの進化を促すきっかけになると考えています。これまで企業内でマーケティングとセールス、サポートなどの組織は縦割りに分断されていました。役割分担が明確でうまく回っていた時代は良かったのですが、顧客の志向や行動が複雑になり、企業が一体となって顧客体験の向上に取り組む必要が出てきました。今こそ、マーケティングの全体感を捉え直すべきだと思います」(桑野氏)

日本オラクル株式会社 理事 クラウド・アプリケーション事業統括 CXクラウド事業本部 本部長 桑野 祐一郎氏
日本オラクル株式会社 理事
クラウド・アプリケーション事業統括
CXクラウド事業本部 本部長
桑野 祐一郎

Cookie規制の背景の1つには、顧客のプライバシー保護の問題がある。それと同時に、強引なターゲティングによって顧客に不快感を与えるケースも増えている。ターゲティングの結果が顧客の望まないものであれば、不愉快な広告を見続けることになり、最終的に企業に悪影響を与える。その意味でも、脱Cookieの道を検討すべきタイミングと言えるだろう。

ユーザーデータの鮮度と精度が顧客体験の良否を決定づける

脱Cookieの時代に、企業のマーケティングはどう変わっていくのか。日本オラクルの横大路牧子氏は、2つの方向性があると話す。

「1つは、企業が顧客の許可を得て収集し、利用するファーストパーティーデータの拡充です。ただし、顧客とのエンゲージメントを保つには、データを常にリフレッシュしていくことが必要です。サブスクリプションのビジネスでは、顧客と常にやり取りをしていることで、さまざまな顧客データを集め、アップデートすることができます。コミュニケーションを続けていくことで、ファーストパーティーデータはより強固なものになっていきます」

そしてもう1つ注目しているのが、コンテンツを見据えたうえでの広告の出し分けだという。

「従来のいわゆるコンテンツマッチ以上の、文脈を解析したターゲティング手法です。この考え方は新しいものではありませんが、テクノロジーの進化によって、より精度の高いアプローチを実現することが可能になっています。ターゲティングというと、顧客を追跡するイメージがありますが、最近ではブランドの安全性を確保する意味も込めて、『ブランド・スータビリティ(ブランドの安全性適合)』という概念が出てきています」(横大路氏)

日本オラクル株式会社 Oracle Advertising Head of Regional Marketing, JAPAC 横大路 牧子氏
日本オラクル株式会社
Oracle Advertising
Head of Regional Marketing, JAPAC
横大路 牧子

オラクルでは、ブランド・スータビリティを実現する技術として、「コンテクスチュアル・インテリジェンス」によるデータを提供している。これは、アダルトサイトなど危険なサイトを排除することは当然として、危険でなくても、ブランドとして広告を出すのにふさわしくないページを除外することができる。一方で、キーワードやカテゴリによる一斉排除のような機会損失は回避する。つまり、マーケターが伝えたい企業イメージに合わせて、広告の出し分けを可能にする。

例えば、手指の消毒液のメーカーは、コロナ関連ならどんな記事でも広告を出したいわけではない。感染者などが増加しているというニュースには広告を控えたいが、医療関係者が奮闘しているという記事であれば積極的に広告を出したいと考えるはずだ。こうした企業の要望にも、自動的に対応できる。

同技術はすでに、人間が判定できる要素以上の検知能力を持っているという。日々、秒単位で増加しているコンテンツをリアルタイムに判定し、ブランドの安全性を確保しながら広告を出すことができる。

「『ATMが故障した』という速報ニュースのページには、その銀行の広告を出さないようにしなければいけません。そこに人の操作が介在すると、アクションが遅れてしまいます。そこで、あらかじめ不都合な想定をインプットしておけば、悪いニュースと広告が同時に出る事態を未然に回避することができます」(横大路氏)

今や、企業のリスク管理を担うまでになっているのである。

では、こうした強力なテクノロジーを利用するには、どのような考え方と環境が必要になるのだろうか。

コンテクスト技術の進化

企業が広告を出すべきコンテンツを判定する技術は進化している。
従来は単純なキーワードに頼っていたが、現在はブランドとの適合性を評価し、カスタマイズできるようになった。

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