日経クロストレンド Special

テレビを動かすことで生活も変わる“レイアウトフリー”という新発想

2021年10月に発売されたパナソニックの「レイアウトフリーテレビ TH-43LF1」は、設置場所とインテリア性という従来のテレビの不満ポイントを解消する、全く新しいスタイルのテレビだ。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏が話を聞いた。

Web調査で明らかになった
テレビへの不満を解消する

野村氏
パナソニック
商品企画部
野村 美穂
安蔵氏
IT・家電ジャーナリスト
安蔵 靖志
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)。「日経ネットナビ」「日経ネットブレーン」「デジタルARENA」「日経トレンディネット」などを経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、テレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。

野村氏 2016年頃からリビングの使い方が変わり始め、例えばリビングをお子さんの勉強スペースとして使う“マルチファンクション化”が進みました。また、従来の放送視聴に加えて、ネット動画の視聴時間が大幅に伸び、テレビで見るもの、すなわちテレビの使い方そのものが変化してきました。19年秋頃に、これらの日常のくらしの変化に寄り添った新しいテレビを提供できないかという検討を開始し、そこで出てきたのが、「テレビを動かす」というアイデアでした。まずコンセプトに基づいていくつかモックアップを作り、家庭での実証実験や建築家、デザイナーへのヒアリングを経て、商品化に向けた調査を行いました。

安蔵氏 具体的にはどのような調査を行ったのですか。

野村氏 実際にモックアップを一般家庭に持ち込んで、サイズ感やどのように役立つかを検証しました。さらに、どのくらいの人にこのコンセプトが響くのかを調べるために、20年6月にはWeb調査も行いました。

安蔵氏 それはちょっと興味深いですね。

野村氏 まずリビングにテレビを置いている2300人に設置方法を聞いたところ、大半の人がテレビ台の上に置いて、部屋のコーナーか壁に寄せて設置しているという結果でした。その理由は「アンテナ端子に近いから」とか、「アンテナ線やコードを隠せるから」という壁面のアンテナ端子の位置に起因する理由が多く、それに加えて「部屋の中で一番見やすい場所だから」という回答が全体の53%もありました。ただ、実際にお宅訪問などで確認すると、リビングではちゃんと見えても、ダイニングからは見にくいといった実情も分かってきました。また、Web調査では全体の46%の人がテレビの設置位置に不満を持っていて、その最大の理由が「アンテナ線の位置でテレビの位置が決められてしまう」というものでした。アンテナ端子の位置でテレビの設置場所が決まっているにもかかわらず、多くの人がその設置場所に対して不満を持っているという結果を得ることができ、「動かせる」というコンセプトを後押しできました。

どんなインテリアにも合うデザインに
4K放送の無線伝送技術を搭載

安蔵氏 こうしたニーズを把握して、テレビを自由に動かすためにモニターとチューナー部をセパレートにしたわけですね。

野村氏 もともとプライベート・ビエラという小型のセパレートモデルがありましたから、その技術を4Kの大画面テレビにも応用しようという考え方は基本にありました。

安蔵氏 ざっくり言うとプライベート・ビエラの無線伝送技術と、DIGA(ディーガ)の高画質圧縮技術をくっつけたイメージだと思うのですが、4Kの無線伝送はハードルも高かったのではないですか。

野村氏 そうですね。やはり4Kの重いデータを確実に無線で飛ばすために、技術的な工夫が必要でした。実はこのレイアウトフリーテレビは、4K放送をリアルタイムにエンコードして飛ばしているのですが、チューナー部とモニターのアンテナや無線モジュールの配置などを新規で開発しています。また、従来の4Kテレビと遜色ない操作性を実現するために、チューナー部とモニターの通信方式も大きく変更しました。

TH-43LF1

レイアウトフリーテレビ
TH-43LF1

チューナー部とモニターを無線接続することで、テレビを置く場所を自由に変えられるレイアウトフリーテレビ。2TBの内蔵HDDは2番組同時録画(4K放送は1番組)に対応し、4K放送はDRモードで約130時間録画できる。多彩なネット動画機能に対応しているほか、HDMI端子でゲーム機やブルーレイプレーヤーなどの外部機器と接続することもできる。

安蔵氏 デザイン面についてですが、サイズ感や高さはどのように決めたのですか。

野村氏 こちらが想定している12畳ほどのリビングに、実際に何パターンかのモックアップを運び入れてサイズ感を確認した結果、やはり43型が一番しっくりくることが分かりました。高さは一般的なテレビ台に43型テレビを載せた、120㎝を目安にしています。

安蔵氏 色はどのように決めたのでしょう。

野村氏 会場調査を実施した際、白、グレー、ダークグレーの3色を用意しました。このテレビはくらしに寄り添うというコンセプトからも、テレビの存在を主張するデザインではなく、くらしの空間に溶け込むデザインを目指しました。多くのおうちの壁は白系が多いと思いますので、壁紙になじみやすい白系の色にし、さらに背面は壁紙のように見えるシボ加工で仕上げています。実際にレイアウトフリーテレビ TH-43LF1では白が人気でした。また、このテレビは部屋の真ん中に置くこともあるので、従来のテレビのように端子が見えないように背面カバーも付けています。

安蔵氏 とてもスッキリしているので、どんなインテリアにもマッチしそうな印象を受けました。パナソニックのロゴも、額縁の上のところに小さく入っているだけですね。

野村氏 ロゴはさりげなくトップに入れ、品番表記も背面左側に配置し正面視から表示をなくすことで、インテリアになじむデザインを徹底しています。

安蔵氏も実機に満足の様子
「キャスター付きのスタンドは移動させるのも楽ですね。背面がとてもスッキリしたデザインになっていて、ロゴも目立たないのでインテリア性がとても高いと感じました」と、安蔵氏も実機に満足の様子。