Transformation to BEV Vol.5

マティアス・シェーパース氏×
杉本昭彦 特別対談

動き出した日本のEVトレンドを
牽引するアウディの電動化戦略

動き出した
日本のEVトレンドを
牽引するアウディの
電動化戦略

欧米に比べ、後れを取っていると言われる日本のEV事情。しかし、昨年から今年にかけては日本市場においても確実にEVトレンドの波が動き始めている。アウディも100年以上にわたるクルマ作りの精神、Audi DNAを継承するEVを導入している。プレミアムセグメントを牽引するアウディの電動化戦略と、これからの日本のEVトレンドについて、アウディ ジャパン ブランドディレクター マティアス シェーパース氏と日経XTREND発行人の杉本昭彦に語ってもらった。

環境にいいものに対価を支払う
消費者の価値観の変化

マティアス・シェーパース氏

フォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社
代表取締役社長 兼 アウディ ジャパン ブランドディレクター
マティアス・シェーパース

――世界的にEVシフトが進む中、これまで電動化に後れていると言われていた日本メーカーも本格的にEVを市場に投入するなど、流れが大きく変わってきているように見えます。

杉本 日本のEV市場はまさに今立ち上がりつつある段階だと思っています。2020年頃から国産メーカーも含めて、新型車の導入が増加傾向にあります。販売台数統計を見れば、コロナ禍や半導体不足の影響で乗用車市場全体としては下がっている一方で、EVだけは毎月伸びている。今年の販売台数はおよそ1.6倍ペースです。Googleトレンドを見てみると、“EV”はもちろんですが、並行して“充電スタンド”や“充電ステーション”という検索ワードがこの数年ぐっと伸びてきている。単にEVに関心があるのではなくて、購買検討の段階に来ていると分析しています。

シェーパース 我々は日本市場においては20年にアウディブランド初のEVであるAudi e-tron Sportbackを発売しました。年内には日本の道路にもぴったりなサイズのAudi Q4 e-tronを導入します。AUDI AG 本社では今電動化戦略「Vorsprung 2030」に取り組んでいますが、これは26年以降に投入する新型車はすべて電気自動車に、33年を最終期限として内燃エンジンモデルの生産を段階的に終了していくというものです。アウディはこれまで過去50年にわたって「Vorsprung durch Technik」(技術による先進)をスローガンに掲げてきたブランドとして、日本においてもトレンドの先頭を走ってきました。数字だけを見れば、日本の新車販売におけるEV の割合はまだ1%未満と、好調とは言えない状況です。しかし、欧州のノルウェーなどではすでに60〜70%が電気自動車になっていますし、ドイツや英国でも着実に増えてきています。米国や中国でもすごい勢いで販売台数が伸びている。それが世界的なトレンドになりつつある。この波は必ず日本にもやってきます。杉本さんもお話しされたように、まさにこれから日本でもそのトレンドが動き出すと感じています。

杉本昭彦氏

日経クロストレンド
発行人
杉本 昭彦

――自動車各社がEVメーカーへの転身を図る目的は、カーボンニュートラルの実現にあります。その動きは今ビジネスの世界でどのように捉えられているのでしょうか。

杉本 これまでにも“エコ”という言葉が使われてきましたが、SDGsとの違いは、誰かにやらされているものと、自らやるものの違いなのかなと思っています。なぜ今SDGsなのか。それは社会全体のためという前提ももちろんですが、まず消費者が支持している、そして投資家も支持している。その両面からビジネスとして成立するようになってきた。やはり地球環境のためにという大義だけで資金がなければ活動は続けられません。SDGsは今の若い世代を中心に支持される活動であって、それが事業としても回り出しています。

シェーパース 確かに消費者の価値観が変わってきていると感じます。私にも娘がいるのですが、彼女の言動からも若い人たちの環境意識の高まりが伝わってきます。そうした中で、新しいジェネレーションとして、この世界をサステナブルなものとして残さなきゃいけないという大きな流れが生まれています。その一つとして電気自動車へのシフトが行われている。お客様はプレミアムブランドに対してサステナブルであることを期待しています。例えばAudi e-tron GTのシートにはリサイクルされたペットボトルが使われています。高い質感を持ちながら、環境に配慮した「レザーフリーパッケージ」というオプション装備ですが、日本にもお金を払ってでもそうしたものを使いたいというお客様がいらっしゃいます。実際に私のクルマにも装備していますが、座り心地もとてもいい。そしてこのAudi e-tron GTをつくっているのはドイツの工場なのですが、100%グリーン電力とバイオガスを燃料とする熱電併給プラントによる熱を利用し、どうしても避けられない CO2 の排出は、認証を受けたカーボンクレジットを使用して相殺して、完全にカーボンニュートラルな方法で車両を製造しています。ここ以外にもすでにいくつもの工場で実現しており、25年には世界中の生産拠点でカーボンニュートラル化を達成する予定です。我々はすでにトレンドリーダーとして脱炭素に対して、生産の過程から廃棄に至るまで包括的な取り組みを行い、SDGsに対するお客様の期待に応える努力をしています。