VCからの注目集めるゲーム業界、欧米で大型ファンド続々
写真5:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 マネージャー
四元 美緑 氏
メディア・エンターテイメント業界を中心に、中計策定、新規事業戦略、IP戦略、北米・東南アジア展開、アニメ・映像制作、人事組織開発などの幅広い経験を有する
第2部のテーマは「エンタメ業界のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)投資戦略」だ。モデレータ役を務めたEYストラテジー・アンド・コンサルティング、マネージャーの四元美緑氏(写真5)はベンチャー投資のマクロ動向を紹介した。2021年に急拡大したベンチャー投資額は、その後元の水準に戻っている。(図4)ゲーム業界も基本的には他産業と同じ傾向だが、米国Konvoy Venturesの最新記事より、直近は拡大傾向にあるという。(図5)
「特にゲーム業界は、大規模かつ成長市場であること、高いリターンを追求できること、低いCAC(顧客獲得コスト)など、ベンチャー投資としての魅力が多い産業として見られている」と四元氏は解説する。
例えば『黒神話:悟空(Black Myth: Wukong)』(開発:中Game Science)は、2024年8月のリリース後、VG Insightsの最新情報によると9億7500万ドル(1500億円以上)を売り上げた。「開発コストは非公表ながら業界関係者の情報を集めると、7500万ドル前後」(四元氏)と見られ、投資に対するリターンは非常に高い。これは極端な例だが、他マーケットと比べて魅力的と見たVCが、ゲーム業界向けの大型ファンドを立ち上げている。最近ではAndreessen Horowitz(米)は6億ドルのゲームファンド組成や、BITKRAFT(独)の2億7500万ドルのゲームファンド組成など、ゲーム産業へのベンチャー投資に対しポジティブな動きが見られることを紹介。
グローバル全体での動きに対し、日本のゲーム会社は、海外投資家や日本のグローバル企業とのネットワーキングを更に強化する必要性があると意見を述べた。
図4:グローバルでのベンチャー投資額推移
出典:crunchbase
図5:ゲームVC 資金調達額・投資件数推移
出典:Konvoy ventures
手触り感を持ってスタートアップを評価
写真6:ソニーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長
波多野 和人 氏
1997年ソニー入社。ワイヤレス通信やネットワーク通信に関する事業部門、およびソニーの金融サービス事業において豊富な財務経験を有し、中長期の経営戦略立案や実行計画の策定、M&A、戦略的パートナーシップ、投資管理などの経験多数。現職に加え、ソニーの関連会社数社でCFO、取締役ならびに執行役員を務める。
エンタメ業界向けのVCで、着実に成功を収めているソニーベンチャーズ代表取締役社長の波多野和人氏(写真6)とインベストメントダイレクターの松島弘氏(写真7)が登壇し、同社の投資案件の見分け方などについて解説した。「ソニーベンチャーズは日本以外でアメリカ、ヨーロッパ、イスラエル、ケニア、インドで活動し、直近では外部投資家を集めるなどした約5億ドル(650億円)のファンドを使って、エンタメ業界に投資をしている」(波多野氏)。
ソニーの資本を中核に置きながらも、それに依存しないファンドを作っている理由は、投資の方針や継続性などの独立性を維持しやすくしているからだと波多野氏は説明する。約3万社のスクリーニング(調査)して、投資数は約180社。IPO等を経て、アクティブなベンチャーは150社に及ぶ。「我々は、普通のポートフォリオ分析をして、資金の配分を適切に行っている。そして投資したベンチャーの4割以上は、ソニー本体とのコラボレーションを実現させている」と波多野氏は話す。
投資すべきベンチャー企業の見分け方について、松島氏は「キャピタルリターンがあることは必須で、その上で、業界の課題を解決できているか、技術的など何かしら優位性があるか、などのポイントを整理して投資先を決めている」と話す。ゲーム業界向けのソリューション企業へ投資している例として、anzu社(イスラエル)は、ゲーム内のオブジェクトに広告を設置しインプレッションも計測するソリューションを持つ。また、既に上場しているmonoAI technology社(日本)にも投資しており、同社はメタバース事業を展開する企業でノード当たりの同時接続数に対して技術的な優位性を持つ。
写真7:ソニーベンチャーズ株式会社 インベストメントダイレクター
松島 弘 氏
2007年ソニー入社。コーポレート人事を経て、Sony Interactive Entertainmentに異動。ゲームの制作/ローカライズや、PS Storeの企画など約10年の実務経験を有する。その後、Sony Innovation Fundに参画し、ゲームを含めるEntertainment TechやSports Tech分野で国内外のスタートアップ投資を担当。
ゲーム業界向け技術を持つベンチャー以外で、コンテンツ企業についても投資をしている。「コンテンツの場合、必ず儲かることはあり得ない。だからデモ版などで評価することはとても重要」と松島氏は話す。デモ版を触ることができれば、ゲームデザインの考え方やこれまでの経験についても聞けるし、そこから推し量れることも増える。また、ソニーのエンタメ系関連会社(ゲーム、映画、音楽など)にも広くフィードバックを聞いている。そうして投資を獲得したスタジオの1つに、米GENPOP INTERACTIVE社がある。「CEOやプロデューサーがしっかりとしたゲームのグランドデザイン(企画、デモ、メディアミックスやインフルエンサー活用など)を作り、そのプランに沿って開発を実行していた点を評価した」と松島氏は語る。
ソニーベンチャーズでは、今後はゲーム以外のジャンルを含めたエンタメ業界への投資を加速していく方針だ。