データの「壁」と「分断」を超えて「電通グループが提供する次世代マーケティングモデルとは?」 データの「壁」と「分断」を超えて「電通グループが提供する次世代マーケティングモデルとは?」

昨今、データを活用したマーケティングの重要性が、ますますクローズアップされている。
その一方で、マーケティングで扱うべきデータが増え続け、その統合と利活用の難しさに悩む企業は多い。
そこで、国内電通グループ約160社からなるdentsu Japanは、データをシームレスにつなぎ、
事業成長に貢献する次世代マーケティングモデル「Marketing For Growth」をリリースした。
4つのマーケティングプロセスの循環により、新たな価値や需要を創出していく。
同グループが今あらためて問う、マーケティングのあるべき姿とは何か。
それを実現するdentsu Japanならではの強みとは? 株式会社電通 執行役員 深田欧介氏に、
日経クロストレンド発行人・佐藤央明が聞く。

聞き手 日経クロストレンド発行人 佐藤央明

多くの企業が迷い込むマーケティングの袋小路

マーケティングとは、いわば顧客を創るための活動すべてだ。そして、顧客を創るためには、深い「顧客理解」が不可欠となる。一方で、人を理解するためのデータは多種多様で、顧客の行動や嗜好を正確に読み解くことは容易ではない。

ハードルの要因は「データと機能のサイロ化」にあると、電通の深田氏は指摘する。「マーケティングにおけるデータ活用は、いわば手段に過ぎません。にもかかわらず、それがDXやデジタルマーケティングの進展によって高度化・複雑化した結果、施策は多岐にわたり、KPIも組織ごとに細分化。マーケティングに分断を生み出してしまっているのです」。

電通
執行役員(ストラテジー)
Executive Officer

深田 欧介

事実、マーケティングの成果向上に向けて、データの統合利活用ができていると感じている企業は少ないという。その最大の課題は、「組織間の壁」にある。

データ利活用の際の最大の課題は「組織間の連携や部門間調整」
(出所:アンダーワークス株式会社

マーケティングにおけるデータ活用の課題として一番多く挙げられたのは「組織間の壁」。
社内に分断ができてしまっていると感じている企業が多い

このような課題に対し、dentsu Japanが目指すのは、データと組織をシームレスにつなぎ、マーケティングの壁をなくすこと。これを実現するのが、次世代マーケティングモデル「Marketing For Growth」だ。

「昨今のマーケティングの課題は、いわば、『なぜ、誰に、なにを、どう体験していただいた結果、どうだったのか』が分断していることです。『Marketing For Growth』は、これを解消し、生活者の行動変化を創る活動に循環をもたらすことで、マーケティング変革とROI向上を包括的に支援し、事業グロースにつなげてまいります」(深田氏)

「Marketing For Growth」の循環をつかさどるのは、動脈である「Data Infrastructure(データ・インフラストラクチャー)」と、静脈の「Marketing Consulting(マーケティングコンサルティング)」だ。この2つの血流が、次に挙げる4つのマーケティングプロセスを周回することで、マーケティング全体を持続的に活性化させるサイクルが生まれるという。

「Marketing For Growth」の
コンセプト動画

事業成長のための循環を生み出す「Marketing For Growth」

「Marketing For Growth」の循環構造を図解すると、赤と青のラインで縁取られた四つ葉のクローバーのようなかたちとなる。

動脈・静脈の2本の血流が、4つのマーケティングプロセスを高速循環する。
マーケティングROIを高め、企業の事業成長に貢献するためには、「循環させる」ことが肝要

動脈を表す赤のラインは、各種データをシームレスにつなぐ「Data Infrastructure」。たとえば、データクリーンルームを活用することで、企業の1st Partyデータ、プラットフォーム事業者のデータの他、メディア接触データや意識調査データなど、各種データの統合分析が可能になる、まさに大動脈となる部分だ。dentsu Japanでは、データクリーンルームの圧倒的な活用実績と、独自の統合システム基盤「TOBIRAS」を有している。また、他の多種多様なデータも含めて、これらの物理的に、あるいは統計的、意味的に統合されたデータをもとに、専門コンサルタントがデータの奥にあるインサイトを発見し、その行動を変化させ事業に成長をもたらす仕組みを創造していく。これが、静脈の青いライン「Marketing Consulting」の役割だ。この2つこそが、データ分断時代のマーケティングの要となる。

動脈と静脈がめぐる4つのマーケティングプロセス、①Mechanism Resolving、②Value Designing、③360°Experience、④ROI Management の4項目は、それぞれがマーケティング上の大きな課題であり、かつdentsu Japanの強みが発揮される部分でもある。

「プロセスの大まかな流れは、①市場の解像度を上げてインサイトを発見し、②伝えたい価値を設計、③それを360度の体験に落とし込み、④事業成果を把握・改善する、というものです。これらを一気通貫でご提供できるのは、4つのプロセスすべてに競争力をもつdentsu Japanだからこそ、と自負しています」(深田氏)

4つのマーケティングプロセス

例えば、①市場構造・インサイトの解明にあたる「Mechanism Resolving」は、長年にわたり大規模市場データと向き合ってきた同グループのノウハウが生きるプロセスだ。多種多様なデータの活用により、市場を人起点で構造化。事業グロースへの貢献度を鑑みた着目すべき重要顧客を、業種ごとに異なる市場構造を踏まえて、循環を強く意識したメジャラブルな指標とともに抽出。高い想像力や深い洞察によって実際に顧客を動かすための機会点を発見する。

また、②価値構造設計プロセスの「Value Designing」では、特定された顧客と、それを動かすための機会点、さらには企業パーパスなどをもとに、エンドトゥエンドで顧客の体験価値を創造。効果的で競争力のあるマーケティングの骨格を形作る。①で求められるのが「想像力」だとすれば、②では同グループの「創造力」が期待されよう。

③の「360°Experience」は、体験設計実装のプロセス。商品・ブランドの価値を、それらが使われるタイミングだけではなく、生活の中のあらゆるシーンに拡張し、豊かな顧客体験を創出する。「お客様の体験は、商品・サービスや店舗はもとより、オウンドからアーンド、シェアード、ペイド、そしてオンライン、オフラインまで多岐にわたっています。それらを横断して、マスもデジタルも含めた価値設計ができる企画力と実行力も、我々の特長です」(深田氏)。

プロセスの中でも肝となるのが、マーケティングの成果を把握し、改善につなげる④「ROI Management」だ。dentsu Japanでは、統合マーケティングダッシュボード「MIERO」などを用いて、効果・効率を含むマーケティング全体を可視化し、データドリブンな意思決定や高速PDCAを支援していくという。

「マーケティングの投資対効果が厳しく求められる中、④ROIマネジメントにつながる③360°体験になっているか、もっといえば④をフィードバックする前提で①を設定しているかが大事です。単にデータがつながっている以上に循環させようという意志をもって伴走していることが重要なのです。それには、すべてのプロセスに対する高い経験値と深い理解が必須だと考えています」(深田氏)

4つのプロセスがそれぞれ有機的に連携し、高速循環するモデルで企業の事業成長に貢献していく「Marketing For Growth」。そこには、マーケティングの本質を追究し続けてきたdentsu Japanならではの視点と知見が凝縮されている。マーケティングに課題を感じている、ROIを高めたいと考えている企業は、「Marketing For Growth」による循環の実現という理想的な状態に向けて、一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

顧客と社会に貢献する真のIntegrated Growth Partnerへ

「『Marketing For Growth』は、短期的にモノを売るためだけのマーケティングモデルではありません」と深田氏はいう。「たとえば4つの循環プロセスは、企業カルチャーの醸成や従業員のエンゲージメント向上といったインナーマーケティングにも活用できると考えています」。

dentsu Japanには、従業員の満足度調査や体験設計などの相談も多い。だが、実際に調査してみると、事業部ごとに勤務体系や育成方針が異なり、求められる体験や成果も様々だ。これを「Marketing For Growth」のスキームにのっとって、従業員のインサイトを企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)につなぎ、効果的な体験に落とし込むことで、インナーマーケティングの活性化も期待できるという。

「インナーマーケティングが改善すれば、従業員のモチベーションも上がり、優れた商品やサービスが生まれ、企業の価値向上や採用ブランディングにも直結します。インターナルからエクスターナルへ、さらには中長期的なエンゲージメントを見据えたサステナブルな企業成長へと循環の輪を広げていくことが、『Marketing For Growth』の目指すところである『Growth』なのです」(深田氏)

「Growth」を実現するためには、広告やマーケティングの枠を超え、顧客と真のパートナーとなることが不可欠だ。dentsu Japanの掲げる「Integrated Growth Partner(IGP)」には、より広い領域からクライアント企業の成長をサポートし、社会の持続的発展に貢献する、という同グループの意志が込められている。

「もともと我々の会社には、どんな課題解決においてもクライアント様に伴走し、仕事をやりきるという文化があります。事業の外側から個別の機能を提供するのではなく、パートナーとして、可能であればクライアント様に常駐させていただきながら伴走。データとマーケティングのプロセスをシームレスにつなぐことによって、成長のためのエンジンをともに回し続けたい。私たちがクライアント様の変革と成長に寄り添い、元気な企業を増やすことができれば、社会全体に活力が生まれる。そう信じて取り組んでいます」(深田氏)

マーケティングを起点に企業の成長サイクルを回し、その先の社会活性までを見据えた「Marketing For Growth」。ここから生まれる循環の輪が、日本中に広がっていくことを期待したい。

取材を終えて

「Marketing For Growth」。一見シンプルなこのネーミングから、顧客の課題に全力でコミットするという電通の本気が、むしろ感じられました。企業が抱えるさまざまな悩みと電通の提供価値をつなぐことで、マーケティングの課題を解決する。それも単なるエージェンシーやベンダーではなく、真のパートナーとして寄り添おうとする同グループの姿勢が表れていると思います。マーケティングのROIがより一層求められる時代において、企業の事業グロースに必要なマーケティングのあり方を考え直すのは重要なこと。その本質を捉え、体系化した「Marketing For Growth」は、企業のマーケティング戦略に大きな変革を起こすことになるでしょう。余談ですが、深田さんは「日経クロストレンド」を愛読いただいているとのこと。取材当日も「今日は日経クロストレンドのブランドカラーに一番近いネクタイをしてきました」と笑顔で明かし、場の雰囲気をほぐしていただきました。次回から、「Marketing For Growth」の神髄と、その具体的な取り組みを紹介していきます。

日経クロストレンド発行人佐藤 央明