発売から20年近くにわたり、選ばれ続けている「キリン のどごし<生>」と「ニチレイ 本格炒め炒飯®」。
どちらも発売当時、画期的な商品として市場に登場し、その後もおいしさを進化させ続け、今も人気のロングセラーブランドに。
共通するのは、先駆者であり、今も先頭を走り続けているトップランナーであるということ。
業界は違えど、共通する思いをキリンビール マスターブリュワーの田山智広氏と
ニチレイフーズ ライン&マーケティング戦略部商品第一部長の城戸俊治氏が語り合った。
今年で発売20年目を迎え、累計販売数量が200億本※1を突破した「キリン のどごし<生>」(以下、「のどごし<生>」)。2001年の発売以来、23年連続売り上げナンバー1※2を記録している「ニチレイ 本格炒め炒飯®」(以下、「本格炒め炒飯」)。ともに新領域を開拓したパイオニアは、どのようにして誕生したのか。 ※1 「キリン のどごし<生>」2005年4月発売~2023年12月までの累計出荷本数(350ml缶換算) ※2 インテージSRI+冷凍調理炒飯市場2017年3月〜2024年2月 各年累計販売金額/インテージSRI冷凍調理炒飯市場2001年3月〜2017年2月 各年累計販売金額
田山 「のどごし<生>」を発売したのは2005年で、その3〜4年前から開発を進めていました。ちょうど各社が新ジャンル(いわゆる第3のビール)を模索していた頃です。原材料の幅広い検証をし、探索的にビールに近い味わいのおいしい飲料がつくれないかと仕掛けていました。
当時、私は開発チームにいたのでテイスティングもしましたが、最初はとてもじゃないけれどもおいしいとは言えませんでした。シュワシュワしたものにならず、見た目は透明に近かったですし、味もビールには似ても似つかない。それでも、何とかビールに近い飲料をつくりたいとの一心で研究開発を重ねました。逆に、制約があったからこそ生まれた革新的な飲料だと思っています。


城戸 新たな挑戦から始まった歴史にはとても共感を覚えます。ニチレイでは2001年に「本格炒め炒飯」を発売しましたが、実はそれ以前にも冷凍炒飯はあったんです。しかし冷凍した米に別途加熱した卵を混ぜて、炒飯っぽく味付けした仕様でした。それは炒飯風混ぜご飯であり、パラッと炒めた炒飯ではありません。
そこで研究開発チームが本質を追求して、製造工程を大きく見直し、機械も独自に開発してしまおうと考えました。冷凍炒飯に炒める工程を初めて導入したのが「本格炒め炒飯」です。「こんな機械があれば料理人がつくる味を再現できるのではないか」と試行錯誤を重ねてデータを突き詰めていき、ようやく完成したのが2001年のこと。その結果、電子レンジで“パラッと香ばしく”仕上がる品質が実現可能となり、このことが冷凍炒飯の大きな転換期になったと自負しています。
田山 家でつくる家庭的なものから、本格的な中国料理店、町中華まで、炒飯にも色々あります。冷凍食品という技術的な制限がある商品では、それらと全く同じものを再現できないですよね。ベンチマークはあったんですか。
城戸 「ずばりこの店の味」と言えるものはないのが正直なところです。ただ、色々なお店で提供される炒飯の風味やおいしさのエッセンスを取り込むことは可能です。だからこそ、本物に近づけるための基礎研究を徹底して行なっています。
一方で「本格炒め炒飯」はもはや私たちのものではないと捉えています。お客さまがその味を求めているので、勝手に味を変えることはできません。支持されている味を進化させるのであれば、どんなエッセンスを加えればいいのかを念頭に置くようにしています。最大公約数がどこにあるのかを探り、誰もが納得できる部分を盛り込んでいくスタンスです。


田山 その点は我々も同じです。いかにビールに近づけるかという努力は今でも続けていますが、ビールと全く同じ味にしてしまったら「のどごし<生>」ではなくなってしまいます。「のどごし<生>」はキリンブランドの中でも多くの本数が販売されている商品。ということは、中味も好まれるおいしさであるということです。これだけの支持を理屈で考えてはならない。初期はいかにビールに近づけるかを考えていましたが、もっと素直に「お客さまが何を好んでいるのか」といった原点に立ち返り、その方向に基づいて改良を進めてきました。「のどごし<生>」でないと実現できないおいしさがあるのではないかと気づいたからです。「のどごし」は「のどごし」という存在なんです。
「変わらない味」、核となる部分があるからこそ、お客さまからの圧倒的な支持を得ることができる。反面、同じ場所にとどまり続けていては期待値を超えることが難しい。今でも改良を重ねる両者に、ロングセラーブランドが背負う宿命について聞いた。
城戸 スタート時の挑戦、目標とする味に少しでも近づける努力を惜しまないところ、それでいてリスクを伴いながらも変えていく姿勢。キリンさんとニチレイには、数多くの共通点があると感じました。それはある意味、ロングセラーブランドの宿命と言えるものだと思います。
田山 確かに売れている商品だからこそ、どこにおいしさのポイントを置くべきかという難しさは共通しています。お客さまにとって、これが絶対的においしいという正解はありませんから。人によって好みが違うのは当然のことで、そうした中で最も支持される中味を目指しています。
城戸 「本格炒め炒飯」は頻繁においしくするための改良をしている商品です。味に限らず色々と気になるポイントが出てくるからです。それらを1つずつ見つめ直し、基本は1年、長くても2年に1回は改良しています。キリンさんはいかがですか?

田山 「のどごし<生>」も同じで、ほぼ毎年のペースで手を入れています。本質を外さないことはマストですが、城戸さんが話した米の食感のように味以外の部分もあるわけじゃないですか。ですからおいしくするための要素はどんどん改良していきます。
城戸 我々も、お客さまに喜んでもらえる、ちょうどよい着地点があると信じて取り組んでいます。もっともっと「本格炒め炒飯」を育てていきたいと考えているので、お客さまの意見に真摯に向き合いながら永久に改良を続ける覚悟を持っています。「本質は変わらないけれども、変わり続ける努力をしなければならない」という感覚です。
例えば味が濃いと言われて、単純に塩分を減らすだけなら誰でもできます。そうではないアプローチで、満足感を損ねずに味を薄くできないかにチャレンジしています。世の中には、薄味であっても満足できる炒飯が存在します。減塩のためにダシで風味を出すような工夫もあります。また別の香りを入れることによって、相乗効果でおいしく感じられることもある。そのバランスを上手く取ることができれば、味を損ねずに塩分を減らすことができるに違いありません。とにかく多方面に踏み込んで、様々なエッセンスを盛り込むためには何が必要かを日々研究しています。
田山 おっしゃる通りですね。同じところにとどまっていたら、お客さまの期待に応え続けることはできません。これはどんな商品でもそうだと思います。馴染めば馴染むほど期待値は高くなってきますし、さらに競合商品の存在もあります。それでも「のどごし<生>」を選んでいただくためには、常に期待値を少し超える位置に、そんなおいしさを持つ商品でなくてはならない。やはり、変わり続けないと駄目なんです。進化を続けなくてはならない。
発売20年目の節目の年に実施した今回のリニューアルも、ホップの比率を変更することで「飲みごたえ」と「後キレ」が強化され、おいしくなりました。飲料や食品は慣れ親しんだ味が求められるので、変化がポジティブに受け止められないリスクは必ず生じます。ただし飲みたいブランドであり続けるためには、コアな部分を変えずに進化を重ねていくということはすごく大事だと考えています。






パッケージの変遷からも、
進化を続けてきた商品の歴史がうかがえる
それまでどこにも存在しなかった味を確立した両商品。進化のドライバーは技術革新と、失敗を糧にするたゆまぬ努力だったという。技術の進歩によって生まれた新しい商品の意義と発展性とは。
田山 ビール類の製造は農産物が主体で、ある意味ローテク産業なのですが、おそらく最もハイテクを搭載しているのが「のどごし<生>」だと思います。ありとあらゆる技術を駆使して、生まれた商品です。
毎年のように改良を繰り返してきたのは、技術面でもともと改良すべきポイントが顕在化していたからです。技術は日進月歩ですから、おいしさもどんどん進化していくはずです。

キリンが持てる技術の粋を集めてつくったのが
「のどごし<生>」
城戸 先ほどおいしい炒飯の商品化のために機械から製造したエピソードをお話ししましたが、その結果、「『本格炒め炒飯』は、ご家庭ではなかなかつくることができない本格的な味ですよね」と言われるようになりました。その意味では、技術革新がもたらした新製品だと思っています。
田山 技術革新は欠かせないキーワードです。とはいえ、工場で大量においしい飲料、食品を生産する技術を整備することは並大抵のことではありません。装置産業なので大きな設備投資が必要になります。でもそれを決断して進めることで初めて新しい商品が生まれます。
我々も小さなプラントで試作をたくさんつくってはやり直して、改良を繰り返し行うことで、よりおいしい商品を目指してきました。その過程を経て初めて世の中にない革新的なおいしさを生み出したわけです。イノベーションは言葉だけを取ればスマートですが、実際は本当に泥臭い時間をかけた過程を経て生まれるものなんです。そして終売となった商品づくりで利用した要素技術が次の商品につながることは少なくないです。

城戸 それはまさに「モノづくりあるある」ですね。ニチレイでも炒飯で突き詰めたのにお蔵入りした技術が、唐揚げに転用されたことがあります。技術に限らず、発想の転換も大事です。2022年に冷凍の「冷やし中華」を売り出しましたが、ベースになったのは過去に検討してお蔵入りしていたアイデアです。単身世帯が増えてきて社会状況が変わり、冷たい麺であっても一人で簡単に食べたいという潜在ニーズがあるのではないかという仮説からアイデアを引っ張り出して再構築しました。
このように冷凍食品の進化は米飯だけではなく、ニチレイの様々な商品で続いています。米飯で駄目だったことでも無駄にはならないので、とにかくトライしていくことが大事だと思っています。

新たな発想で食の可能性を拡げた先駆者であり、
今も先頭を走り続けているトップランナーでもある
何のためにここまでの企業努力を続けるのか。それは、「のどごし<生>」「本格炒め炒飯」を愛するお客さまのためにほかならない。今後も進化を続ける意気込み、商品に込めた思いを語る。
城戸 冷凍食品は利便性の高さとともに発展してきました。それでも、ずっとおいしさにはこだわり続けています。以前は冷凍食品利用のきっかけは、ご家族や自身の『お弁当のおかず』が多くを占めていましたが、今は自身の食事としてコンビニの冷凍食品コーナーで初めて冷凍食品に触れる若い人たちが増えています。つまり、冷凍食品を主体的に選ぶ機会が増えているのです。これを機に、「おいしいから冷凍食品を買う」といった文化に変わってくれば、この先にさらなる発展の余地があると思います。
さらに、「こんなにおいしいものがあるのか」といった驚きや感動を届けたいですね。電子レンジでチンして手軽に用意できる冷凍食品を食べて「おいしい」となったら、ニチレイが行っていることが認められているようで、何よりの喜びです。我々はその感動に向けて、おいしさを追求していきます。
田山 私は「のどごし<生>」には元気が出るパワーがあると思っています。社内でもそうですが、「のどごし<生>」の話になるとみんな元気になるんですよ。スタートした時点から開発、工場、営業までが高いハードルをワンチームで進めてきたからだと思います。だから「のどごし<生>」と聞くだけで元気になる。そうした世界観も含めて、思いがお客さまにも伝わっていると考えています。
「のどごし<生>」が食卓にあることで、安心できる素敵な時間が過ごせる。そして良いときも悪いときもお客さまに寄り添い、いつも味方でありたい。お客さまの生活のパートナーとしてなくてはならないものになっていくのが理想だと考えています。これからも、そんな日常を過ごしていただくための努力を続けていきます。

「のどごし<生>」を手に取る城戸氏。
「おいしさを求めて、変わることを恐れずに
進化し続けている姿勢に共感します」

試食する田山氏。「『のどごし<生>』と
『本格炒め炒飯』の組み合わせは完璧ですね。
両社の共通点にも思いをはせると、感慨深いです」
