オープニング
大豆が拓く持続可能な未来
エクゼクティブディレクター
市場アクセス、戦略地域ディレクター
北東アジア
ロズ・リーク 氏
オープニングに登壇したUSSECのロズ・リーク氏は、冒頭で「このシンポジウムは、持続可能性の重要性を再確認し、その将来への影響について考える貴重な機会と考えます」とシンポジウムの意義を説明。今回のテーマとして、「サステナブルな大豆の役割と可能性」「サステナブルな農業慣行の現在そして将来の多様性」「サステナブルな消費者行動と世界の大豆食品市場における市場戦略」「地球と私たちの体にやさしいサステナブルな大豆製品」の4つを挙げ、「持続可能な未来を築く中で本シンポジウムの情報が役立つことを願っています」として次につないだ。
サステナビリティへの意識が高まる日本
モーガン・パーキンズ 氏
続いて登壇した在日米国大使館農務担当公使のモーガン・パーキンズ氏は、「日本での7年間の勤務を終え、次の赴任地に向かうことが決まっています」と前置きし、「この7年間、日本の豊かな食文化を学ぶことができ、とても幸運でした」と感謝の気持ちを伝えた。7年間での変化としては、日本の消費者の間でサステナビリティに対する意識が高まったことと、SSAP認証マーク(下記参照)付きの製品がコンビニなどでも見られるようになったことを挙げ、逆に「変わらなかったことは、アメリカの大豆農家と日本の大豆ユーザーとの強固なパートナーシップです」として、挨拶を終えた。
講演 1
サステナブルな大豆の役割と可能性
サステナブル調達によるインパクト
信州大学特任教授
夫馬 賢治 氏
講演第1部の最初の講演者は、企業向けESGアドバイザーで、農林水産省環境分野の複数の委員会で委員を務めるニューラルCEOの夫馬賢治氏。夫馬氏はまず「食品の価格高騰」が長期トレンドであると現状を報告。「地政学リスクや気候変動などが食料需給を圧迫させていることが、大きな要因になっています」と分析し、今後、世界の食料需給状況は大幅に悪化していくのではないかと危機感を示した。
続いて、食料安全保障に関連して、FAO(国連食糧農業機関)が提示する3つの将来シナリオ「現状シナリオ」「サステナビリティ追求シナリオ」「階層社会シナリオ」を紹介。「FAOが推奨するのは、環境面、社会面をサステナブルな状況にしていった場合の将来を示した『サステナビリティ追求シナリオ』です。最終的に一番飢餓人口を減らせるということで、世界の政府当局者や食料関係者も大きな関心を寄せています」(夫馬氏)。
環境面について、夫馬氏は「現在、食品バリューチェーン全体で、世界の温室効果ガス使用の3分の1を占めています」と指摘したうえで、「関係するすべてをどうサステナブルにしていくかが、食品バリューチェーン全体で問われてきている状況です」と説明した。
さらに、近年のグローバルな動きとしては、CDP(グローバルな情報開示システムを運営するNGO)の大規模なフレームワークの改定によって、食品、小売業界だけなく、大豆を飼料として使う畜産、養殖業界においても、「大豆」についての情報開示が求められるようになったことと、EUでCSDDD(企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令)が成立したことを挙げた。CSDDDとは、バリューチェーン全体で人権および環境への悪影響に対するデューデリジェンスの実施を義務付けるもので、「これらが実際に適用された場合、今までとは違うサプライチェーンを構築していかなければいけないということになります」(夫馬氏)。
最後に夫馬氏は、「持続可能な大豆のサプライチェーンの構築については、将来において、企業が果たすべき義務が非常に高まっていくことが予想されます。企業の皆様にはこれからもぜひ、いろいろな努力を続けていただきたいと思います」と締めくくった。
食料・農業・農村基本法の改正について
食品製造課 課長補佐
二井 敬司 氏
セッション②では、農林水産省食品製造課で大豆加工品や油脂類を担当する二井敬司氏が、今年6月5日に公布・施行された「食料・農業・農村基本法 改正法」について講演した。
最初に、改正に至った経緯について、二井氏は「農林水産物純輸入額の国別割合で、日本の割合が1998年の40%から2021年では18%に低下した」という事実を挙げ、「日本は長期にわたるデフレ経済下で経済成長が鈍化したのに対し、中国などの新興国の経済が急成長した結果、買い付けを巡る競争が激化し、買い負けするリスクが高まっているということです」と、法改正にあった危機感を語った。
こうした背景から、今回の法改正では、「食料安全保障の確保」が追加された。「その第1項で、食料安全保障の確保を『良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態』と定義し、国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、世界の食料需給と貿易が不安定なことから、国内の農業生産増大を図ることに加えて安定的な輸入、備蓄の確保を図ること。また、国内では人口の減少に伴い食料需要の減少が見込まれる中、食料の供給能力を維持するために、海外への輸出を図ることと規定しています」(二井氏)。
続いて、「基本的施策」としての「農産物・農業資材の安定的な輸入の確保」については、「法律の第21条第1項で、国は国内生産で需要を満たすことができない農産物の安定的な輸入を確保するため、国と民間との連携による輸入の相手国の多様化、輸入の相手国への投資の促進、その他必要な施策を講じるとされています」と二井氏。そのうえで、「本日のシンポジウムのように、USSECと日本の大豆業界の方々が、日本の大豆の最大輸入国であるアメリカとの信頼関係の構築やそれを深める取り組みを行っていることは、輸入の安定化に寄与するものであり、『国と民間との連携による施策』に含まれるものと考えます」との見解を示した。
アメリカ大豆のサステナビリティ
サステナビリティ担当部長
アビー・リン 氏
セッション③は、USSECのサステナビリティ担当部長、アビー・リン氏がオンラインで登壇。アメリカの大豆農家が実践している「持続可能な取り組み」について紹介した。
1つ目は「不耕起栽培と被覆作物(*1)」で、「保水、土壌浸食の防止、トラクターによる畑での温室効果ガスの削減に非常に役に立っています」とアビー氏。2つ目は、畑から雨水の流出を減らし、土壌浸食を解消する目的の「排水水路」で、3つ目は米国農務省のNRCS(自然資源保全局)が実施する「保全保留プログラム(*2)」。これらの取り組みに加え、アメリカの大豆農家は、GPSやドローンなどの最新技術も積極的に採用しているという。
アメリカの大豆農家がサステナブルな取り組みを行う背景について、アビー氏は、「アメリカの農場の95%は家族経営で、土壌は最大の資産。次世代のために改善、維持することが本当に重要なのです」と説明。
アメリカ大豆業界は2014年、00年をベンチマークに、25年までに、土地利用の影響を10%削減、土壌浸食を25%削減、エネルギー使用効率は10%向上、温室効果ガスの総排出量は10%削減という、大豆農家が目指すべき4つの改善目標を策定した。1980年から2020年までの大豆生産の環境への影響を見ると、土地利用、土地浸食、エネルギー使用、温室効果ガス排出量のすべてが減少している一方で、作物の収穫量は1ヘクタール当たりのトン数で約130%増加しているという。つまり、「生産効率が高まったということ。これによっても、大豆を持続可能な方法で調達することの重要性が分かります」(アビー氏)。
USSECでは13年からSSAP認証をスタートさせている。きっかけは、その10年以上前から、「ヨーロッパを中心に世界中から、アメリカの大豆の持続可能性についての質問が寄せられることが増え、それに対して正式な回答が必要と考えたためです」とアビー氏。現在、SSAP認証は世界18カ国、日本国内では19社350製品、世界では93社1000種以上の製品に使用されているという。
最後に、アビー氏は改めて「アメリカの大豆農家はサステナビリティに取り組んでいます。彼らの仕事は長い伝統と未来の世代のために行われています。世界で最もサステナブルな大豆を供給するというミッションがあるのです」と強調した。
*1:不耕起栽培は農地を耕さずに作物を栽培する方法、被覆作物は作物を作らない時期に、作付けされる作物のこと
*2:浸食しやすい農地を10~15年にわたって休耕にする施策