
講演ブリッジインターナショナル
全体最適な営業アクションを支援する「RevOps」データ連携、営業生産性にかかわる組織・機能として脚光
法人営業界隈で現在、注目を集めている「RevOps」(レブオプス)。これはRevenue Operations(レベニューオペレーション)の略語で、売上にかかわる全工程を一元化し、営業領域間の情報共有やデータ連携により持続的な成長を促すための組織や機能を指す。2024年12月13日に日経クロストレンドが開催した本ウェビナーでは、RevOpsがもたらすメリットや導入時のポイントついて、法人営業改革支援を手がけるブリッジインターナショナルの尾花 淳氏と、日経クロストレンド発行人の佐藤央明が語り合った。
「先発完投型」――従来の典型的な営業スタイルが頓挫する理由

ブリッジインターナショナル株式会社
常務執行役員
プロセス・テクノロジー事業本部長
尾花 淳 氏
冒頭で尾花氏は、日本企業によく見られる典型的な法人営業スタイルについて切り出した。
法人営業活動を実施する上で多くの日本企業は、見込み客獲得から機会醸成、提案・クロージング、売上計上、顧客維持、アップ・クロスセルからなる「レベニュープロセス」を定めている。営業担当者はまるで野球界の先発完投型の投手のように、このレベニュープロセスすべてに対応しているケースが多い。
尾花氏は、この「先発完投型」の営業スタイルが立ち行かなくなっていると指摘する。
その理由として、「少子高齢化」と「雇用の流動化」の2つを挙げた。少子高齢化によって働き手がどんどん減っている中で、雇用の流動化が進んでいるため「属人性に頼った顧客とのリレーションで売上をつくることは難しくなった。会社としても、その流れを放置できない現状」であるという。
オペレーション業務を一元的に担う、RevOpsの役割

こうした状況下でレベニュープロセスの分業が進んでいると尾花氏は話す。具体的にはマーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスの領域に分けられる。担当する領域が狭くなるほど業務は専門的になるため、担当者はスキルや経験を短い時間で積み上げることができるというメリットがある。
日経クロストレンド
発行人
佐藤 央明
ただ、こうしたプロセスの“ヨコ”の分業が進むことで、佐藤は領域間の溝が深まるのではないかとの疑問を投げかけた。尾花氏も、「各領域がそれぞれの生産性向上に力を入れ過ぎると、部分最適によってプロセスが断絶する。その結果、顧客体験の悪化を招いてしまう」と認めた上で、“タテ”の分業の重要性を指摘した。
タテの分業とは、マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスといった領域ごとのフィールド業務と、それぞれに付随するオペレーション業務を分けることを指す。属人化を排除して全体最適を目指した営業活動のためには、オペレーション業務の一元的な実践がカギを握っている。その役割を担うのがRevOpsというわけだ。尾花氏はRevOpsについて、次のように解説する。
「一貫して品質の高い顧客対応を提供するためにレベニュープロセスを横断する組織であり、そして売上にかかわる全プロセスの連携と最適化を目指す機能であり、さらに売上と営業生産性の最大化に向けて全体調整をするイニシアチブである」
レベニュープロセスにおけるヨコの分業体制のあるべき姿について、尾花氏は「組織全体の戦略に沿った営業プロセスにKPI(重要業績評価指標)がつながっていて、営業ツールもデータもすべて連携されていることが理想。そうすれば属人化や分断化を防ぐことができ、CX(Customer Experience:顧客体験)の向上にも役立つことになる」と語る。
RevOpsは尾花氏が述べた分業体制のあるべき姿を目指し、営業領域間の分断が起きないよう、主に次の4つの役割を担う。
分業化が進むフィールド業務と、オペレーション業務を担うRevOpsの機能
では、RevOpsを導入することによって生まれるメリットとはどんなものだろうか。尾花氏は「個々の顧客に対する最適な営業活動を示唆すること」と明言する。
例えば、顧客がWebサイトにアクセスした、製品展示会に来た、架電に応対したーーなど、とある状態にある顧客に対して、とある内容の接触をした結果、「商談につながった」あるいは「失注した」といった履歴を詳細にデータとして残し、収集・蓄積することができる。これらを商談レコードとひも付けて分析することで、「このような状態の顧客には、このようなアクションをすべき」という具体的なアドバイスを提示できるようになるという。
「RevOps導入=レベニュープロセスの再構築」 ビジョン策定時のデザインと営業エースのモデル化がカギ

RevOpsを導入するには、何から取り組めばよいのか。尾花氏は「RevOpsを導入するということは、レベニュープロセスを再構築すること」という点を強調する。レベニュープロセスの再構築は、「ビジョン策定」「プロセス設計」「組織設計/リソースアロケーション」「新プロセスの導入と教育」「実践と改善」――の5段階で進める。
尾花氏によれば、一連のステップで中心になるのは顧客である。マーケティング機能とセールス機能、カスタマーサクセス機能のシームレスな連携でCXを向上していく。顧客の情報行動・購買行動の変化に対して柔軟に対応することは欠かせない。全プロセスの可視化を進め、データドリブンな意思決定も重要だ。プロセスの自動化/自律化・標準化のために、テクノロジー利活用は積極的に進めていく。個人情報管理などの法規制対応は今後、より重視されるだろう。
RevOpsが実現する新しい営業スタイル
全事業のすべての営業プロセスを一気に再構築することは現実的ではない。個別最適が過剰にならないように、ビジョン策定時からデザインしておくことがポイントになる。また、サイロ化を防ぐためのリソースアロケーションとしては、営業フィールド部門のエース人材をプロジェクトメンバーに加えることも考えたい。理想像となる人の考えや行動をモデル化して、全体最適の模範にできるからだ。
「フィールドのエースはフィールドにいるべきだが、営業担当の人数が多い場合などはエースがオペレーションに入る可能性もある。RevOpsを組織化してある程度自動化できたら、またフィールドに戻すことも考えられる」(尾花氏)
米調査会社のガートナーは「2025年までにBtoBビジネスにおける売り手と買い手のやりとりの70%はデジタルデータとして保存される」とレポートしている。そうなれば、あらゆるデータが孤立していては意味がない。データ連携をベースとした売上と営業生産性にかかわる組織・機能・イニシアチブであるRevOpsだからこそ、日本企業の営業スタイルを変革する潮流になりつつあるのだろう。