生成AI、約9割が
マーケティングでの活用を検討開始
日本IBM
コンサルティング事業本部
理事・パートナー
兼 alphabox マネージング・ディレクター
高田 晴彦 氏
IBMの調査では、3年以内に約3分の2の企業がマーケティングの変革に寄与すると期待し、約9割が何らかの形で生成AI活用の検討を開始しているという。
日本IBM
コンサルティング事業本部
理事・パートナー
兼 alphabox マネージング・ディレクター
高田 晴彦 氏
また、企業の経営者・CMOからは、「生成AIとのやり取りを通じて人間の感性やアイデアが刺激され、よりクリエイティブなアウトプットが出せる」、「企業にとっての成果だけでなく、真に顧客の生活に寄り添った提案ができる」、「これまでマーケティングが抱えていた人の経験やスキルへの依存、属人化を解決できる」といった声が寄せられている状況にある。
これを受け高田氏は「共通しているのは、マーケティングの付加価値や競争力を高めるために役立つという期待感。多くの企業が単なる業務効率化や、便利ツールの枠を超えた活用方法に着目しています」と指摘した。
IBMではこうしたトレンドを踏まえ、「AIファーストのマーケティング」への変革を後押しする。CDPやMA、CRMなど既存のテクノロジーがマーケティング業務の高度化に貢献してきたのは事実だが、人が担ってきた領域を生成AIがカバーできれば、DXが大きく前進するからだ。
「裏側の仕組みだけにとどまらず、お客様行動のデジタル化という表側の接点も含めた高度化の取り組みが、今後のマーケティングにとって重要になってきます」と高田氏は言う。
AIファーストのマーケティングを表したイメージとして披露したのが、「ハイパーパーソナライゼーション」「ハイパークリエイション」「ハイパーオートメーション」をキーワードとしたビジョンムービーだ。若きマーケターの目を通じて、いかに生成AIが人間の良きパートナーになるかを表現した内容で、映像や音楽を含むすべての要素を生成AIのみで制作したことにも驚く。
「マーケティングは、生活者の心をどう揺り動かすかを考える極めてクリエイティブな業務です。一方で、その大半を運用といったオペレーショナルな部分に割いているのも現実です。生成AIを活用することで、人間の創造性を高め、また集中できるようにし、さらに高いマーケティング効果と顧客体験を実現していくことが我々の考える未来像です」(高田氏)
生成AIは人間のコワーカーであり、さらなる創造性を引き出す存在になる
石油も広告も、業界さまざま。
各社と進む生成AI活用マーケティング
続けて高田氏は、IBMと各社による共創事例を紹介した。通信、石油流通、広告と業界が多岐にわたるのも特徴である。
通信業界のA社では、モノ売りからコト売りへとビジネスモデルの転換を迫られる中で、新たなアイデア創出や企画推進に悩みを抱えていた。社内のリソースやノウハウが不足しているためだ。
そこでCRMやコールセンターなどから抽出したVOC(Voice of Customer=顧客の声)をもとに生成AIによってペルソナを生成し、ペインと価値提供のシーズを可視化。人間と協業することでサービスにつながるアイデアを多数つくり出し、プロトタイプ制作までの手順を高速化した。これにより、従来は数カ月間かかっていた調査・分析を数日間まで圧縮。人間が企画業務に集中できる恩恵をもたらした。
石油流通業界のB社には、ガソリンスタンドでのマーケティング事例がある。B社は毎月500万件を超えるタイヤ点検、オイル交換などの油外商品取引を伸ばすためにMAを活用したクーポン配信を行なっていた。しかしターゲティングに関する工数が多く、精度や効率に限界を感じていた。
この課題を解決すべく、生成AIを導入。セグメントごとに顧客の嗜好や関心を抽出して解像度を高め、パーソナライズしたクーポンを作成して配信する仕組みを構築した。従来の10倍以上のセグメント生成とパーソナライズドマーケティングを実現し、作業負荷はそのままにクーポン使用率・商品売上を24%向上することに成功したという。
広告業界のC社は、生成AIをBtoBマーケティングに活用した。広告主が持つCRMデータ、SNSデータをベースに生成AIと壁打ちの対話をしながらペルソナと購買グループを設定。顧客理解の効率化、ターゲット見極めの精度向上を図り、同時多発的に多様な施策を組み合わせたキャンペーンを可能にした。
BtoBマーケティングではクライアントの意思決定プロセスが見えにくく、持続的・効果的なキャンペーンの実施が難しい。この状況において、新たなマーケティングソリューションを提供した好サンプルと言えるだろう。
AIエージェントが
マーケティングを次のフェーズに導く
ここで触れた以外にも多数の事例が進行しており、その中からたくさんのユースケースが誕生している。従来はユースケースごとに生成AIのアセット群を開発してきたが、2025年5月には、これらを業界・業務別「エージェント型AI」ソフトウェアと、AI+(AIファースト)の標準業務プロセスに束ねた「IBM Consulting Advantage for Agentic Applications」を発表。自社開発のエージェント型AIソフトウェア・ソリューションを100種類以上の業界・業務向けに展開し、AIファーストの世界観を加速する構えだ。
「マーケティングではペルソナやジャーニーマップの自動生成、高速な市場・顧客分析、コンテンツのトランスクリエーション、ブランドのマネージメントなど多数の機能が必要となります。これらの仕組みを単独のAI技術だけではなく、サードパーティの製品と組み合わせてソリューションとして提供できるのが、IBMの強みです」(高田氏)
個別業務への導入ではなく、AIファーストの観点で業務プロセス全体の変革を行う
ただし、ソリューションは万能薬ではない。高田氏は講演の最後、「適用する際には部分的な業務ではなく、AIファーストで全体を変革していく姿勢が何よりも重要です」と強調し、次のように変革のイメージを語った。
「生成AIを活用すれば、解像度の高い顧客理解、パーソナライズの具現化、膨大なクリエイティブによる高速なPDCAなど、戦略部門、企画部門、運用部門それぞれに多大なメリットが生まれます。さらに組織横断的に自律型AIエージェントとコラボレーションすることで部門や業務のサイロ化が解消され、マーケティングに関わる人たちが持つ創造性を高めて発揮できます。鍵を握るのは、AIファーストで全体の業務プロセスを再設計すること。IBMはこれからも企業の皆さまに伴走しながら、豊かな顧客体験を実現するための効果的なマーケティングを支援していきたいと考えています」(高田氏)
