スマートフォンの縦長画面に最適化され、独自の進化を続ける縦型コンテンツが大変な人気だ。スマートフォンの活用実態を熟知するKDDIと、縦型コンテンツの企画制作を手掛けるQREATION(キュリエーション)がタッグを組み、SNSを舞台に独自のエンターテイメント・プロジェクトを進めている。それが「Project TOWA」だ。エンターテイメントの最先端を行く同プロジェクトの概要と狙いについて、両社のキーパーソンに聞いた。

8カ月で8億回再生される
アカウントに成長

両社が進める「Project TOWA」の概要を教えてください。

望月 スマートフォンを中心に多彩なサービスを展開するKDDIと、縦型コンテンツの制作に強みを持つQREATIONがタッグを組みました。「Project TOWA」は動画コンテンツを、単なる動画を超えた知的財産(IP)と位置づけ、動画コンテンツの海外配信、イベントやグッズ展開などを含む大きなビジネスに育てていくプロジェクトです。

現在、「本日も絶体絶命。」「ときめき図鑑」「いつだって究極の選択」「合コンの悪魔」という4つの動画シリーズを展開しています。中でもショートコント「本日も絶体絶命。」は開始から8カ月ほどで7億回再生され、フォロワー数がYouTube、TikTok、Instagramの合計で60万人を超えています。「いつだって究極の選択」と「ときめき図鑑」は、月間2500万~3000万回再生ほどで推移しています。全体の月間再生回数は1.6億回ほど。1人当たり平均5回見ているというデータがあるので、1本のコンテンツを50万人が見ている計算になります。

「本日も絶体絶命。」「ときめき図鑑」「いつだって究極の選択」の累計再生回数は8億回にのぼる

米永 縦型コンテンツとは、スマートフォンの縦型ディスプレーを隅々まで使って視聴できる動画のことです。スマートフォンが生活に欠かせないデバイスとなる中で、縦型コンテンツが急速に普及しており、中国、東南アジア、米国などで人気を博しています。スマートフォンに最適な縦型コンテンツは、世界規模で新たなエンターテイメントの可能性を生み出しています。

本プロジェクトで目指す両社の狙いは何でしょうか。

KDDI
DXデザイン本部 R&Aセンター
ARPU企画グループ サブグループリーダー
望月 祐司 氏

望月 KDDIの主な狙いは2つあります。1つ目は、ユーザーにもっとスマートフォン上での体験を楽しんでいただくことです。したがって、「Project TOWA」は、YouTube、TikTok、Instagramなど、多数のユーザーを抱えるメジャーなプラットフォームで横断的にどなたでも視聴できるように展開しています。

KDDI
DXデザイン本部 R&Aセンター
ARPU企画グループ サブグループリーダー
望月 祐司 氏

携帯電話の市場が成熟し、サービスや価格だけではキャリア各社のオリジナリティーを発揮しにくい時代になっています。そんな中で、ブランドのイメージや親しみやすさは、サービスを選ぶ際の重要な要件になっています。スマートフォンユーザーとの接点を増やし、「KDDIは面白いことをやっている」という認知を広げることで、ブランドイメージの向上につなげたいと考えています。

2つ目の狙いは、このプロジェクトを企業のマーケティングやブランディングなどに役立てていただくことです。SNSを中心に展開する縦型コンテンツが「瞬間的な話題性」に終始するのではなく、独自の世界観を持ち、視聴者の感情を動かすコンテンツとして成長すること。さらには企業のマーケティングにも貢献できる仕組みを作ることを目指しています。縦型コンテンツという新しい市場が立ち上がるこのタイミングで、効果的な広告やタイアップにぜひ活用していただきたいと思っています。

米永 私たちクリエイター側の狙いは、スマートフォンをベースに「現代のマスコンテンツ」を生み出すことです。昔は皆がテレビ番組を見て、学校や職場で同じ話題で盛り上がっていました。それが、日本のエンターテイメント産業を支えてきたと思います。

今日はメディアとコンテンツが多様化し、共通の話題というものがあまりありません。一方、スマートフォンのユーザー数という視点で見ると「マス」と呼べるような規模になってきていると思います。その誰もが見るような、本当に人気の高いコンテンツを作ることができれば、多くの人を魅了するような現代のマスコンテンツに成り得ると思うのです。

スマートフォンのユーザー特性をよく知るKDDIの分析力と、当社のコンテンツプロデュース力を掛け合わせ、日本中が熱狂するようなコンテンツを生み出していきたいと思います。

「本日も絶体絶命。」は、 “コント師×俳優×TikTokクリエイター”の異色の布陣で、「絶体絶命」をテーマに全く新しいショートコントを繰り広げる。開始から8カ月ほどで7億回再生されている

「朝の配信によって視聴を習慣化する」
という新セオリーを確立

KDDIは多くの制作会社と協働していますが、QREATIONが他の会社と異なる点は何でしょうか。

望月 1つは、IP開発ができることです。動画コンテンツを受託制作している会社はたくさんありますが、ゼロの状態からアイデアを出してオリジナル作品を企画し、完成させる力を持つことがQREATIONの大きな特長です。しかも、それを縦型コンテンツでできる会社というのは、まだ少ないと思います。

もう1つは、芸能界や他のメディア各社からの強い信頼を得ているため、人気と才能があるタレントや俳優、クリエイターを起用する力があることです。米永さんや、StudioQ統括で取締役の橋本和明さんがテレビ界の出身で、大きな信用を得ているからこそ可能になるのだと思います。この点は、IPビジネスまで見据えたコンテンツ開発をしていく上で、非常に重要な要素となってくると思います。

QREATIONにとって、KDDIと協業することの意義を教えてください。

QREATION
代表取締役 CEO
米永 圭佑 氏

米永 スマートフォンの利用に関する豊富なデータと経験を持ち、ユーザー特性をよく知っていることです。いくら良いコンテンツが作れても、効果的に出していかなければ、多くの人に見てもらうことはできません。

QREATION
代表取締役 CEO
米永 圭佑 氏

KDDIと組むことで、様々な気づきや発見がありました。例えば、SNSにコンテンツを配信する時刻は、朝より夕方の方が良いというのがこの業界のセオリーです。SNSを見ているユーザー数が一番多いのは夕方だという事実が、あらゆるデータで証明されているからです。

しかし、本プロジェクトはその逆をやっています。例えば、「本日も絶体絶命。」というショートコント作品は、平日の朝7時に配信しています。これは、KDDIの提案でした。朝に配信することで、通勤通学の時間やお昼休みのスキマ時間に見てもらい、すぐに会社や学校で話題にしてもらうためです。その方が、視聴の習慣化に効くというのが、KDDIの狙いでした。

その狙いは、的中しました。7時に投稿し続けてきた結果、ユーザーの視聴形態が習慣化しています。今では、新作を配信すると即座に数十万回再生されます。

望月 確かに夕方はゴールデンタイムですが、コンテンツが多様化している中で、夕方に見たコンテンツは翌日には忘れられてしまいます。習慣化を狙うなら朝に出すという、新しいセオリーを確立できました。

米永 ユーザーを深く理解したKDDIが「朝配信の方が成功する」と自信を持って提言してくれたからこそ、私たちも勇気を持って挑戦することができました。こうした新しい視点を得られることが、KDDIと組むことの大きな意義だと考えます。

世界中で盛り上がっている
縦型コンテンツの魅力とは?

縦型コンテンツの魅力について教えてください。

米永 縦型コンテンツの主な魅力は、2つあります。1つは、スマートフォンでの視聴に適したダイナミックなクリエイティブが表現できることです。もう1つは、TikTokやInstagramに代表される縦型動画プラットフォームが持つ拡散性です。新しいコンテンツを投稿すると、まず100~400人にランダムに配信されます。その人たちが連続的に高評価をすると、加速度的に拡散していく仕組みです。新しいコンテンツを浸透させやすいプラットフォームです。

縦型コンテンツのビジネスモデルや海外での広がりについて教えてください。

米永 ビジネスモデルとしては、主に2つあります。1つは、広告です。視聴者数が加速度的に増えているため、広告媒体としての価値が急速に上がっています。通常の広告だけでなく、コンテンツやクリエイターとのタイアップも増えています。

もう1つが、課金型ショートドラマです。中国で爆発的に盛り上がり、北米や東南アジア、韓国、香港、台湾などに波及し、その流れが日本にも来ています。1話あたり平均数十円を課金するショートドラマが人気を博しており、世界中で盛り上がりを見せています。1話1〜3分ほどの短い動画が連続ドラマになっていて、何話か無料で見た後に、途中から有料で見ていくことになる形態です。日本でも、1話単位の課金はデジタルコミックなどで馴染みがあり、親和性があると思います。外国でも通用する上質な日本発コンテンツを制作し、世界に発信していきたいと考えています。

望月 そうした縦型コンテンツの魅力を生かし、2025年3月下旬から課金型ショートドラマの新作「合コンの悪魔 ~サレ妻たちの華麗なる復讐~」(全10話一挙配信/1話約2分程度)を縦型コンテンツ専用の配信プラットフォーム「UniReel」で配信しています。

企業やクリエイターの仲間を募り
さらなる挑戦を続ける

今後の展開と抱負について、教えてください。

望月 今はIPとしての動画コンテンツを増やしている段階です。KDDIのリソースを活用し、動画を軸に様々なビジネスを展開していきたいと考えています。スマートフォンの利用がこれだけ普及している今、これまでになかったスマートフォン発のエンターテイメントを創出していきたいと考えています。

米永 上質な縦型コンテンツを日本から発信し、グローバルでヒットさせることが目標です。世界共通のスマートフォンを媒体と捉えているからこそ、KDDIと組むことで世界を目指せると考えています。

ゼロからオリジナルでコンテンツを作る。それをしっかりと市場に届け、ビジネスを成功させる。この流れを大切にしながら挑戦を続けます。小説、映画、テレビ、インターネットという形で、エンターテインメントはメディアの発展と共に成長して来ました。その最先端にあるのがスマートフォンであり、縦型コンテンツです。縦型コンテンツはSNSで爆発的に普及し、量から質への転換が起こり始めています。私たちはこの世界のプロとして、上質で面白いと思ってもらえる作品づくりを目指します。

望月 KDDIとQREATIONの協業により、スマホ時代のエンターテイメントを切り拓くべく、縦型コンテンツで様々な挑戦をしています。しかし、この2社だけではできないことが、まだたくさんあります。興味を持っていただける企業があれば、ぜひご連絡をいただきたいです。世の中を変えるような新しいエンターテイメントの世界を、一緒に作っていきましょう。