「明日のために、休める大人に。」というメッセージを掲げて誕生した新メンズヘアケアブランド「Levätä(レバタ)」。マンダムとNEW STANDARDは、ユーザーに徹底的に寄り添うブランド開発手法「BDX(BRAND DIGITAL TRANSFORMATION)」により、日々のヘアケアに新たな体験価値を見いだしたという。それは日常のシャワータイムをセルフコンディショニングの時間として捉える、新たな価値(イミ)の創造だ。その開発舞台裏を、キーパーソンたちに聞いた。
──Levätäの開発経緯についてお聞かせください。
ここ数年の間に「自分のケアは誰かに任せるのではなく自分で行う」というセルフコンディショニングの考え方が広がりました。そういったトレンドの実態をひも解いていくと、ただ疲れたから休むのではなく「明日頑張るために今日はしっかり休みたい」という、プロアクティブな思いで休息を求めている方が多いことが分かり、忙しい現代人のニーズに応える形でLevätäの開発がスタートしました。
かつては「限界まで頑張る」といった姿勢が評価される風潮も一部でありましたが、その時代に比べ近年のVUCA時代では、人々の心身に対する価値観が変化してきました。現代では、心身を労り安定させ、持続的なパフォーマンスを出していくことの重要性が高まっています。そういった社会的背景の中における生活者たちのお悩み・課題に着目し、「セルフコンディショニングを日々のルーティンに落とし込む」というアプローチを試みました。休むために何か特別なことをするのではなく、バスタイムという日常の行動の中で自分を整える体験を創出したいと考えたのです。
──ユーザー起点のブランド開発は、どのようなプロセスで進んだのでしょうか。
生活者へのインタビューを重ねる中で見えてきたのは、日々の生活の中で、頭の疲れや凝りといった頭の疲労を感じている方々が多いということでした。それに加え、毎日のシャンプーやトリートメントに対して、髪や頭皮を清潔に保つという機能面の価値だけでなく「洗うこと自体が気持ちいい」「1日の終わりを感じられる」といった、洗髪以外の価値を感じている方が多いということ。そこから、単に“髪・頭皮を清潔にする”だけではなく、“自分自身を整える体験”としての価値を提供するためのブランド開発を目指しました。
Levätäの開発では、従来の機能起点によるブランド開発プロセスとは異なり、NEW STANDARD社が研究開発している新価値創造メソッドを活用しました。このメソッドは、モノ消費・コト消費に続く「イミ(意味)消費」の時代に対応したユーザー起点の商品・サービス・ブランド開発プロセスです。
今回の開発では、全フェーズで当社独自のインサイト発見メソッドを用いたデプスインタビューを行い生活者のインサイトを分析・抽出しました。その結果から導き出したインサイトを起点に、製品が使われる新しい文脈を考案し、その内容を発展させてブランド・アイデンティティ(BI)を構築しました。このプロセスで活用したのが、記号に新しい文脈を付与することで、そのモノや体験に新たな価値(イミ)が生まれることを提唱する、文脈解釈に基づく「意味のイノベーション理論」です。
Levätäの開発では、「メンズヘアケア」という記号に、「マインドフルネス」という文脈を掛け合わせ、新しい意味の創造を目指しました。従来のシャンプータイムが「毛髪と頭皮のケア」という文脈の中で意味解釈されていたのに対して、「心と頭のケア」という視点で捉え直すことで、「髪や頭皮の汚れを落とすだけでなく、心身のモヤモヤまで洗い流す」というウェルビーイングなヘアケア行動としての提供価値を見いだしました。
──Levätäのプロジェクトは部門横断で進められたそうですね。
本プロジェクトでは商品企画・宣伝・店頭販促・技術といった異なる部門のメンバー全員が最初からワンチームになり、BIの創造の段階から意見を出し合いました。これはマンダムとして非常に新しい取り組みでしたが、ブランドの本質について各部署が早期から共通認識を持てたことでスムーズな連携が実現しただけでなく、単に機能の価値だけではない新たな体験価値を創造することができました。
私は広告宣伝の部署でコミュニケーション領域を担当しています。普段は商品企画部門が中心となって考えた製品の情報を受け取るような形で、コミュニケーションにおけるクリエイティブやメディアプランに落とし込むといったことも少なくないのですが、Levätäでは、開発初期からブランドに関する協議を重ね、認識を深めたことで、円滑にコミュニケーション戦略に落とし込むことができました。
実は、今回は広告クリエイティブもデプスインタビューで得たインサイトをヒントの一つにしました。企業側の「伝えたいこと」と、ユーザーの「心に響くこと」は必ずしも一致するとは限りません。だからこそ、生の声に根差した表現づくりに挑戦できたことは、非常にやりがいがありました。
今回は商品開発の初期段階から、商品の中身開発も並行して行いました。香料のプロトタイプをユーザーに試してもらいながら、そこから想起される体験や情景を丁寧に収集してきたことで、機能と情緒の両面から立体的に体験価値を設計することができたと実感しています。
──Levätäの開発には、NEW STANDARD社のデザイン研究の成果が生かされているそうですね。
当社は「感性設計学を応用した意味のイノベーション理論の構築」というテーマの共同研究を進めています。これまでデザインなどのクリエイティビティは文系的なアプローチとして捉えられていました。しかし、私たちは神経科学や心理学の知見を生かし、生活者が感じる商品に対する意味的価値やインサイトなどの感性的な要素をいかにデザインや開発プロセスに落とし込めるのか、といったことなどを設計工学という観点で研究開発しています。インサイトや感性という曖昧な領域に科学的なアプローチを導入することで、よりユーザー起点の再現性の高いブランド開発が可能になるからです。
Levätäのプロジェクトには、文脈解釈に基づく「意味のイノベーション理論」をはじめ、神経科学、心理学、AI分野などで注目されるベイズ脳や自由エネルギー原理などに用いた私たちの研究成果が随所で生かされています。今、意味的価値や感性価値の理論的枠組みを明らかにするための研究や実務領域は、ありがたいことに、機能価値起点の開発に限界を感じている、学術界、ビジネス界、双方から注目を集めています。今後さらに、学術的な知見と企業の実践が相互に影響し合うようになれば、商品・サービス・ブランド開発のあり方そのものが進化していくと考えています。
──機能面では従来の商品とどのような違いがあるのでしょうか。
徹底的にユーザー起点で設計されたLevätäは、泡立ちから香り、手触り、容器のデザインに至るまで、すべての要素で安らぐ感覚を提供できるよう設計されています。特に、温かさと冷たさを同時に感じさせる「温冷感スパ処方」という当社独自の技術は、頭皮がじんわりとほぐれていくような解放感を生み出します。ここには、当社がボディペーパーなどの他カテゴリーで蓄積してきた知見が生かされました。
さらに、シャワータイムをセルフコンディショニングの時間として活用してもらえるように、頭のほぐし専門店「悟空のきもち」全面協力の下、「瞑想シャンプーメソッド」という独自のメソッドを開発しています。これは「泡の音色に耳を傾ける」「首を傾けながら呼吸を意識する」といった、瞑想的要素を取れ入れ、五感を使って深いリラクゼーションへ導くものです。頭皮をニュートラルな状態に戻し、心身の疲れを洗い流すような“瞑想体験としてのシャンプー時間”を味わえるので、ぜひLevätäの使用時にお試しいただきたいです。
──現時点での反響と、今後の展望についてお聞かせください。
おかげさまでLevätäは、Amazonのシャンプー部門で新着1位※を獲得し、順調なスタートを切ることができました。Levätäの体験を通じて、癒やしや頭がほぐれていくことの気持ち良さなどを評価するお声を多数いただいており、手に取ってくださった方には、私たちの届けたかった価値が届いているのを感じています。今後は、Levätäで創造できたシャンプー行動における新しい価値を文化として定着させていきたいと思います。
「お風呂の時間が楽しみになった」というお声もあり大変うれしく思っています。今回の広告施策では、手法や手段ではなく、切り口に着目した立案を行いました。「明日のために、休める大人に。」というコンセプト、そして「新体験・瞑想シャンプー」というキャッチーなメッセージの下、共感ベースで行ったコミュニケーション施策が工夫したところだったかと思います。それは、全員がワンチームでLevätäの開発にコミットメントして取り組めたことによる、一気通貫した顧客体験の創出を考えてきたからこそだと感じています。今後もブランドに共感してくれる方とのつながりを深めながら、ファンの裾野を広げていきたいです。
Levätäのように、社会的文脈とユーザーインサイトを結びつけたブランドはこれからの時代にますます必要になると思いますし、今後はそういったブランドが他にも登場してくるとも思います。その中でも、Levätäには「シャンプーという日常行動を通してストレスや疲労を解放する」という体験価値を牽引するブランドであり続けてほしいですし、これからもユーザーに徹底的に寄り添いながら、時代とともにアップデートしていければと思っています。
繰り返しになりますが、今回の開発では、全員違うバックグラウンドを持つメンバーがワンチームとなってプロジェクトを完遂することができました。マンダムさんと一緒につくり上げたこの新しい文化・体験をどんどん広げていきたいと思っています。今後Levätäは日本国内だけでなく、世界でも受け入れられるブランドになっていってほしいと思っています。今回マンダムさんと一緒に取り組んだ経験を、当社の研究にも生かしつつ「日本って、こんなにすごいものが作れるんだよ」ということを、世界中に伝えていきたいですね。
※Amazon新着ランキング 2024年12月16日調べ