

ブランドのファンをロイヤルカスタマーにまで育て、増やす。そのためには、顧客を理解するためのデータ利活用が重要だ。技術も進化している。2024年12月6日に開催されたオンラインセミナー「ロイヤルカスタマー戦略の進化 1stパーティデータを活用したセルフ型調査で顧客理解を実現するサスティナブルなデータ収集と活用」では、ロイヤルカスタマー戦略の課題と解決方法、実際のユースケースなどが披露され、データ利活用の要点が示された。

モニタス
代表取締役社長
林 秀紀 氏
「顧客データとアンケートデータはつながるのか?」というテーマを掲げたモニタスの林氏は、「マーケティングリサーチは今、変化してきています。様々なデータを収集・分析し、インサイトを提供するものと再定義されました」と述べる。時代の変化に伴い新たなサービスが生まれてきているという。
その発展の影で実は、企業の1stパーティデータとアンケートデータを分離させる「壁」も生じている。顧客の声を届けるマーケティングデータを連携・活用しづらい状況にもなっているのだ。
モニタス
代表取締役社長
林 秀紀 氏
モニタスの「スパコロ」は、この壁を壊すソリューションだ。ロイヤルカスタマーに特化した環境構築ができる。自社顧客資産を対象に、セルフ型アンケートによってサスティナブルかつ、ブランド体験を壊さずに顧客理解のための意識データ取得が可能。顧客の行動の「なぜ」を裏付ける意識データを収集・活用できるのだ。
たとえば、大手家電量販店のアプリにスパコロを組み込んで取得したアンケートデータは、顧客IDと紐づけて顧客DBにそのまま格納され、構造的に整理整頓することができる。スパコロでは自社顧客以外のアンケートモニター2800万人にアンケートを行い、自社顧客との市場比較調査を行うといったことも可能だという。
さらに、クイックオンラインインタビューで迅速に自社顧客へインタビューができる機能も搭載。林氏は「実際に使われているアサヒビールの樋口さんに、どのような活用シーンや気づきがあったのかを実例でお話しいただきたい」と話し、次のセッションにバトンを渡した。

アサヒビール
マーケティング本部消費者インサイト室 主任
樋口 群 氏
続いて登壇したアサヒビールの樋口氏は、「お客様を主語として得たインサイト情報を深化し、マーケティング活動を進化/新化させることが我々のミッションです」と冒頭で話す。それを実現するには自社のファンやロイヤルカスタマーを活用し、「早く・安く・賢く」インタビュー調査を成功させることが重要だと考えている。
アサヒビール
マーケティング本部消費者インサイト室 主任
樋口 群 氏
そのため、アサヒビールでは自社サイト「Asahi Park」に、スパコロのクイックオンラインインタビューを構築している。
アサヒビールは、排出ごみ削減のためにある製品のパッケージからシュリンクフィルムをなくすことを検討していた。そこで同社は仮説検証のため、お客様の「本音」の収集にスパコロのクイックオンラインインタビューを使用。限られた時間で必要なインタビュー人数を集め、調査を履行。仮説検証や本音の聴取がスムーズにでき、その内容に基づき未然に顧客離反を防ぐことができたという。
また、調査会社の保有モニターを使った通常のオンラインインタビューの実行前に、試験的にクイックオンラインインタビューを行ったケースも。ここでは試験調査で満足のいく結果を得られ、調査費を1/10以下に抑えられた。対象者のさらなるファン化やブランド参加意欲の活性化といった効果も生まれている。
自社のファンやロイヤルカスタマーを対象に「早く・安く・賢く」インタビュー調査を成功させる仕組みを構築したアサヒビールでは、これによって、さらなるファン化や新しい顧客体験の推進効果も生まれた。スパコロはブランドエクイティの向上にも寄与し、マーケティング活動の本質的なアプローチに活用できると考えている。最後に樋口氏は、「同じようなお悩みを抱えているのなら、自社の会員サイトに焦点を当てて、『早く・安く・賢く』リサーチを行っていただければ」とエールを送る。

日経クロストレンド
発行人
佐藤 央明
最後のセッションでは、日経クロストレンド発行人の佐藤をモデレーターとし、パネリストとしてモニタス スパコロアドバイザーの重原氏と、クアルトリクスの中嶋氏を招いたパネルディスカッションが行われた。
日経クロストレンド
発行人
佐藤 央明
最初に提示されたのは、「顧客におけるデータ活用の現状は?」というテーマ。中嶋氏は、「より効率的に顧客の声を深く聞くためには、適切なターゲットに絞り込み、顧客データに合わせた質問を行うこと。さらにAIを活用した回答の深堀りをするといったこともできるようになります」と話す。AIによる深掘りにおいては、回答に合わせて個人ごとに質問を変えていくものだが、深掘りすることによる回答率の低下はほとんど見られなかった。さらに、詳細に回答してもらえることで、質も上がるという。質問を人に合わせて深い内容にしていき、ブランドについてより深く考え理解してもらうことを目的としたマーケティングキャンペーンとして、アンケートを活用するケースも増えてきている。
クアルトリクス
ディレクターソリューション エンジニア
中嶋 祐一 氏
続いての「デジタルデータと意識データの分断」というテーマでは、重原氏が言葉を重ねる。分断されているデジタルデータ(行動データ)と意識データ(アンケートデータ)を統合し、1つのユーザーIDにまとめてデータを整理して、マーケティングに活用することを、重原氏は10年ほど行ってきた。
クアルトリクス
ディレクターソリューション エンジニア
中嶋 祐一 氏
「顧客のロイヤリティなどを定量的なデータで見ている場合が多いのが現状です。しかし本来は、アンケートなどの意識や定性的なデータを連携させてデータを活用し、マーケティングなどに役立てる必要があります。本質的なロイヤリティは、顧客に聞いてみなければ分からないものだからです」(重原氏)
デジタルデータと意識データを紐づけた活用は、接客の改善やコールセンターの接客などには役立てられている。しかしマーケティング領域では進んでいない。「とはいえ最近では、クアルトリクスやスパコロなどのソリューションが出てくることで、使いやすいデータを集めることができるようになってきています」と重原氏は話す。
モニタスにおけるデータ収集とID統合のフロー
NPSと売上に相関性があるのか聞かれることが多いという中嶋氏は、「そこに相関性はありますが、数多く買っていても不満があるという人もいて、そこを深掘りすることが重要です」と指摘する。売上からだけでは見えない不満を解消し、顧客満足度を上げることで顧客離反を防がなければならない。
3つ目のテーマは「デジタルデータと意識データの融合メリットとは?」。デジタルデータでは測れないものが多く、仮説ベースで顧客の気持ちや本音などを想定するしかないと話す重原氏。デジタルデータと意識データの融合で、より深いインサイトを得られ、より深いコミュニケーションにつながる。これを可能にするソリューションが今は出てきており、ID連携も容易になりつつあるという。
モニタス スパコロアドバイザー
(元トレジャーデータ 執行役員 最高顧客責任者(CCO))
ハイブアイキュー 代表取締役社長
重原 洋祐 氏
また重原氏はもう1つ、部門間の「壁」もあると続ける。リサーチを行う部門とデータマーケティングを行う部門がマージできていないケースが多いという。「リサーチャーが定量的なデジタルデータ(行動データ)を見ることで、もっと見えてくるものがある。リサーチャー自身の進化や高度化も、デジタルデータと意識データの融合メリットとなるのではないでしょうか」(重原氏)。
モニタス スパコロアドバイザー
(元トレジャーデータ 執行役員 最高顧客責任者(CCO))
ハイブアイキュー 代表取締役社長
重原 洋祐 氏
中嶋氏は、「定性的な意識データをネガポジなどで数値化することで、計算かつ理解しやすいデータにできるメリットがあります」と述べる。たとえば、「上司への不満」の意識データを数値化すれば、「不満が高い人ほど会社を辞めやすい」という関係性を計算できる。一方で、数値化すると意識データに含まれていた「感情や気持ち」はよく分からなくなる。意識データに属する、社員の「感情や気持ち」をビジネスの現場に伝え、行動を改善させることも忘れてはならない。
アンケートの「フリーコメント」(自由回答欄)に含まれるトピックや感情を抽出。
回答者が何を考え、どんな行動をするか、定量的に把握できる
最後に2人のパネリストは次のように話して、セミナーを締めくくった。
「これまではデジタルデータに比べ、意識データは量が少なく、突合などが難しいという課題がありました。新たなソリューションが出てきている今、ようやく両者を融合できる状況になってきています。スパコロのような使いやすいソリューションを使うことで、たとえば十万人の会員に簡単にアンケートを行って意識データを大量に取るといったことができます。融合を積極的に進めていただきたいですね」(重原氏)
「今日の話のポイントは、プロセスだと思っています。たとえば、商品企画でどのような人のどんな声を聞きたいのか、ツールを使ってインタビューを行うまでの一連のプロセスが重要。データや仕組みが整っていなかったり、データが分断されていたりすれば、プロセスは止まってしまいます。デジタル・意識を含めたデータを活用するには、いかに社内でプロセスを仕組みとして作っていくかが重要だと思います」(中嶋氏)
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