新商品・リニューアルの動向 6選

新しい方向性を打ち出した新商品から、数年ぶりのフルモデルチェンジまで、時代のニーズを鋭く捉えた商品が、今年も次々と誕生している。そんな注目の6商品を「日経クロストレンド」発行人や元編集長たちが徹底分析。ヒットの要件とトレンドの兆しを、それぞれの視点から読み解く。


ヒットを占う

重要性が高まるオーラルケア

毎日のセルフケアをサポート

品田 英雄

勝俣 本日は注目の6商品を取り上げ、本音で語っていきたいと思います。まず、8年ぶりにフルモデルチェンジしたパナソニックの「ドルツプレミアム W音波振動ハブラシ スマート」から。

品田 市場導入後、販売好調のようですが、この8年で大人でも矯正する人が増え、審美面も含めてオーラルケアへの意識が相当変わりましたよね。高齢化社会が進むなか、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという「8020運動」なども推進されています。

尾島 見た目もそうですが、時代的にニオイに敏感になって、口臭を気にする人が増えたということもあるかもしれないですね。あと、歯周病は口腔内だけではなく、体全体に影響を与えるということも周知されてきましたし。

勝俣 今回、歯間フィットブラシ×W音波振動※1で、歯間の歯垢除去力が2倍※2になっています。形状は下に向かってシェイプしていてスマートですね。

尾島 ヘッドが薄めで、磨きやすそう。

能勢 洗練されたデザインですね。電動ハブラシを最初に使ったとき、歯の表面の感触に「これはすごい」と感動しませんでしたか? その後、実は歯間の汚れをきちんと落とすことが大事という話になって出てきたのが「ドルツ ジェットウォッシャー」です。それで今度は「歯間も一緒に磨けます」という電動ハブラシを出したことは、これまでの延長線上で信頼感があるなという印象です。これ1台で両方の機能をすべて満たすということではないと思いますが、電動ハブラシの働きがそこまで領域を広げてきたというのは、消費者にとってはいいですね。

品田 歯科医院に定期的に通ってケアしていますが、やはり日々のハミガキは大事。新製品を使用していますが、「ブラッシングナビ」機能が、適切な磨き角度や押しつけすぎをブラシの柄の光でガイドしてくれます。テクノロジーでセルフケアの質を高めてくれるのはいいですよね。

※1 音波領域内での、2軸の異なる立体的な振動。EW-DT88・DP58・DP38はヨコ約3万1000、タタキ約2万ブラシストローク/分の振動
※2 パナソニック基準による歯間部人工プラーク除去率比較。EW-DT88 W-CLEANモードレベル3と、
極細毛ブラシコンパクト×W音波振動(W-CLEANモード時)EW-DT63との比較。実際の口内での効果は異なる場合がある

※1 音波領域内での、2軸の異なる立体的な振動。EW-DT88・DP58・DP38はヨコ約3万1000、タタキ約2万ブラシストローク/分の振動
※2 パナソニック基準による歯間部人工プラーク除去率比較。EW-DT88 W-CLEANモードレベル3と、極細毛ブラシコンパクト×W音波振動(W-CLEANモード時)EW-DT63との比較。実際の口内での効果は異なる場合がある

利便性とおいしさを両立

健康にフォーカスした食品も

尾島 和雄

勝俣 次の商品は、日清製粉ウェルナの「マ・マー レンジで2分 もちもち生パスタ」です。

能勢 パスタって、家でつくろうと思うと結構手間がかかりませんか?

尾島 そうですね。お湯を沸かすのに時間がかかるし、後片付けも面倒で。

能勢 フライパン1つで完結するワンパンパスタのレシピが流行ったり、なるべく手間はかけたくないという層は増えています。日清製粉ウェルナは早くからトレンドを捉えていて、1986年に早ゆでパスタを、1993年には冷凍パスタを発売しています。その極めつけが、電子レンジで2分加熱するだけで食べられる生パスタです。

勝俣 時間だけでなく、夏の猛暑でガスを使いたくないという理由で、レンジ調理商品はかなり急進しました。そういうトレンドにも乗っていますね。

能勢 米の価格高騰で、より手軽に食べられるのであれば、米以外の主食として、パスタも選択肢に入ってきます。

勝俣 生パスタの市場は、国内のパスタ市場の1割程度で、そこに挑戦するのはさすがだと思います。

尾島 「生」という言葉の特別感もありますよね。希少なものという感じ。

品田 ただ、「生」と書かれていると、すぐ食べるか分からないときには、日持ちが心配になりますが。

能勢 これは常温で8カ月保存可能です。だから、買い置きしても冷凍庫のスペースをとらないのもいい点です。

勝俣 食べてみると、本当にもちもちしていますよね。

能勢 フェットチーネとスパゲティの2種類の麺と同じブランドのパスタソースで無数の組み合わせがつくれます。個食にはもちろん、家族みんなで食卓を囲んでいるけれど、ソースはそれぞれ選ぶという楽しみ方もありますね。

勝俣 次は「明治ヘモグロビンA1c対策ヨーグルト」。健康な⽅の⾼めのヘモグロビンA1c低下をサポートする機能が報告されているMI-2乳酸菌が入った機能性表示食品となっています。

尾島 みなさん、健康診断で一番気になる数値は何ですか?

品田 肝臓系かな。あと、コレステロール、血糖値、尿酸値も気になりますね。

尾島 私は最近、血糖を結構気にしていて。この商品名にあるヘモグロビンA1cは、直近1~2カ月の平均的な血糖値の推移を示す中長期的な指標で、血糖コントロールにおいて重要視されていますが、一般的には認知されていないですよね。食後血糖値にアプローチする商品はあっても、ヘモグロビンA1cへの効果を訴求した商品は見たことがなく、これが世界初※3のヨーグルトだそうです。

勝俣 世界初※3ですか。そのまま商品名にも使っているあたりに、その指標の存在や重要性を知ってもらいたいという意気込みを感じますね。知ることで、自分の健康診断表を見直したり、消費者の行動が変わっていく可能性があります。

能勢 血糖コントロールについては、メディアでもよく取り上げられるようになって、注目されていますよね。まずは自身のヘモグロビンA1cの数値をチェックして、要注意ゾーンと呼ばれる5.6%以上なら対策を考えるのがよさそうですね。

尾島 ヨーグルトで健康管理というのは習慣として定着しているし、取り入れやすい商品だと思います。

※3 パッケージ上でヘモグロビンA1cに言及する乳製品として
2025年6月先行技術調査およびMintel GNPDを活用した明治調べ

※3 パッケージ上でヘモグロビンA1cに言及する乳製品として2025年6月先行技術調査およびMintel GNPDを活用した明治調べ

ヒットを占う

日々のご褒美にぴったりなビール

RTDの印象が変わるサワー

勝俣 哲生

勝俣 ここからは、お酒カテゴリーの注目商品を紹介します。1本目はキリンの新しいビール「キリングッドエール」です。これ、香りがいいですよね。

尾島 最近は、フルーティーな味と香りで後味のよいビールの人気が高く、その流れを汲んでいますね。

品田 なぜいま、エール系のビールがそんなに人気なんですか?

尾島 一気にグラスの半分くらい飲み干すというのではなく、フルーティーな香りを味わうという飲み方が若い層を中心に1つのトレンドとして確立してきているからでは? 苦いビールは飲めないという人も増えているんですよ。これは、香り成分だけを取り出す加工を施した希少なクライオホップを使用。さらに雑味を抑えてフルーティーさを引き出す独自のブライトアロマ製法を採用しているそうです。

能勢 このビールは「明るい」という言葉が使われているけれど、実際に飲んでみて、味そのものが明るいと感じられました。まったく新しい方向性だなと思います。

勝俣 パッケージも、高価格帯のビールというと金色や黒を使って高級感を演出したものが多いですが、色味が斬新ですよね。フレンドリーな高級感とでもいうような。

尾島 「日常のご褒美」というコンセプトもあるみたいで、いいことがあった日に選びたくなるような色ですよね。さらに自分だけでなく、日本の未来を明るくするブランドアクション「グッドエールJAPAN」として、売上の一部を活用しながら、日本各地の地域コミュニティを支援する取り組みも行っています。

勝俣 缶の二次元コードでサイトにアクセスして、応援したい自治体を選んで寄付することもできるんですね。

能勢 額は小さいけれど、クラウドファンディングということか。

尾島 「グッドエール」を購入することが、実は人の役にも立っていると知ると、さらにいい気分になって、よりおいしく飲めそうですね。

勝俣 お酒のカテゴリーのもう1本はサントリーの「THE PEEL(ザ・ピール)〈レモン〉」です。こちらは前回の座談会でも取り上げましたが、4月に発売後2カ月で年間販売計画の5割を突破、6月には25年の販売計画を当初の150万ケースから200万ケースの上方修正と、非常に好調です。ここまでの好調を予想していましたか?

品田 果汁ではなく果皮を使ったレモンサワーということで、「通好みの商品かな」という印象だったので驚いています。サントリーの調査では、ビール好きの97%が「また飲みたい」と回答していて、それが宣伝にも使われていますね。

勝俣 消費者の反応を見て、それがすぐに広告コピーに反映される機動力はさすがですね。

能勢 既存のレモンサワーは、一口目の印象をいかに強くするかにこだわったものが多く、それって印象には残っても飲み飽きてしまうことも。これはそうならずに、飲めば飲むほど、おいしさが分かるという商品設計です。甘くなくてスッキリしているので、食事に合うと思います。

尾島 インパクト重視の商品は人工的な甘さが気になるものも多く、料理とマッチしにくいこともありますからね。

能勢 レモンサワーを極めていった結果、サントリーは長年の果皮研究をもとに、南イタリアの伝統酒リモンチェッロから着想を得て開発したそうで、〈果皮〉は新しいチューハイの選び方になりそうです。

勝俣 アルコール市場の来年の大きなトピックとして酒税法が改正されます。それにより、RTD市場がさらに注目されていく可能性もあります。

品田 値段も含め、どれを選ぶかが変化していく時代。その選択肢が増えて、消費者にはうれしい商品だと思います。

世界最高水準の

堅牢・防水性の高性能スマートフォン

世界最高水準の

堅牢・防水性の

高性能スマートフォン

能勢 剛

勝俣 今回最後の商品はスマートフォン「arrows Alpha」です。「arrows」はもともと堅牢性の高さを謳っていましたが、今回さらに磨きがかかっています。

品田 薄くてスマートで、一見、堅牢だとは思えないですね。

能勢 スマホって各社だんだん似たような感じになってきて、買い替えの動機がなくなりつつあります。これは世界最高水準の堅牢・防水性能を謳っていて、米軍の物資調達に使われるMIL規格の23項目に準拠しています。低温、防水、防塵などに優れていますが、特に堅牢性に関しては1.5mの高さからコンクリートへの落下にも耐えられるんですよ。ガジェット機能を盛り込むのではなく、基本的な部分を徹底的に鍛えた商品ですね。

尾島 それはいい。なんかいろいろあっても使わない機能も多いですしね。

勝俣 実際に26種類の方向でコンクリートに落下させる対衝撃試験を見せてもらいました。1.5mの高さから落として激しくぶつかっても、すぐに電源がついて問題なく作動していました。

能勢 スマホって落とすと画面が割れたり壊れたりするので、ケースに入れて使う人が多いですよね。メーカーは薄さと軽さの競争をしているのに、ケースに入れると消費者はそれが享受できないんです。でも、これだけ丈夫だとそのまま使って問題ない。

尾島 今どきはケースつけていると「おじさん」っていわれちゃうしね。ケースなしのほうがカッコいいのかも。

勝俣 防水に関しては、石鹸をつけて洗うこともできるんですよ。実験室に取材にいった際に、1000回も手洗いの実験をしていると聞きました。

品田 それは、すごいな。ハイエンド商品で8万円台という価格設定も大きな魅力といえますね。

勝俣 今回も時代に合った商品ばかりでした。ここから次のヒット商品が生まれることを期待しましょう!

座談会を終えて…

能勢 剛

元・日経トレンディ編集長 能勢 剛

成熟市場にはさほど商品の進化がないと思いがちですが、まったくそうではなく、斬新な切り口なり技術的なブレイクスルーがさらに新しい市場を切り開いていく。そう改めて感じさせてくれる商品が並んでいたのが、今回の特徴ですね。

品田 英雄

日経BP 総合研究所 客員研究員 品田 英雄

飲料や食品に関しては特に何が好まれるかを予測するのが難しい時代になっている気がしていて、開発担当者の大変さを感じます。そのなかでも、消費者のニーズを読み解き、新しい商品を生み出す企業努力はさすがだなといつも感心します。

尾島 和雄

元・日経トレンディ編集長 尾島 和雄

今回は大手メーカーが新しいジャンルをどんどんつくっていこうとする意欲に溢れた商品が多かった印象です。スマホに関しても、最近はソフトウェアの話が多いなか、改めて機器としての性能に目を向けさせたという点で魅力的で新しいと感じました。

勝俣 哲生

日経トレンディ発行人 勝俣 哲生

買い物で失敗したくない傾向が続く中で、新ブランドの挑戦は年々難しくなっています。ですが、今回は新市場を創造する意欲にあふれた商品がそろいました。いずれも「出して終わり」ではなく、定番化が期待できる商品。メーカーの本気を感じました。