オフィスビル開発、ホテル事業などを手掛ける大手不動産デベロッパーの森トラストは、2023年5月に本社を移転した。移転プロジェクトをリードした同社の山内貴矢氏が、新本社オフィスのコンセプトと働き方の変化を説明した。
コロナ禍による働き方の多様化により、森トラストではコミュニケーション不足や会社への愛着の希薄化、Web会議増加に応じたオフィスの音声・通信環境未整備といった問題を認識していた。本社移転プロジェクトは、これらの問題を解決すると同時に、これからのオフィスのあるべき姿を体現し、外部に発信することを目的とした。
「テレワークが当たり前になった時代でも、自然と訪れたくなり、社員一人ひとりが自分らしい働き方を実現できるオフィス環境を目指しました」(山内氏)
この目的に沿う形で、人の集まる「デスティネーション」(目的地)としてのオフィス。そして、時代や社会の変化とそれに伴う働き方のニーズに即応する「アジャイル」(可変的)なオフィスという2つの要素から成る、“DESTINATION × AGILE OFFICE”というコンセプトを定めた。
目的地として出社したくなる場所を実現するために、①ENERGY:オフィス内に社員が互いの熱量を高めて増幅する場所、②SYNERGY:コミュニケーションを促進し共感や一体感を育む場所、③COZY:心身共に満たされ自分らしくいられる場所、という3つの要素をオフィスの設計に落とし込んだ。
加えて、アジャイルなオフィスを実現するため、フレキシブルにレイアウトが変更できるように工夫を施した。森トラストの中核事業であるホテルのロビーをイメージした空間デザインで、一部什器や植栽にはキャスターが付けられており、接客スペースからセミナー会場などへの改変を容易にしている。フロアの8割に可変性を持たせているという。
オフィス内の執務デスク数は全社員相当数を確保しながら、仕事の内容に合わせて座席を自由に移動できる。「従来のABW(アクティビティベースドワーキング)では、仕事の内容に合わせて働く場所を決めるため、部署のメンバーがバラバラに座ってしまい、コミュニケーションが取りづらい問題がありました。新しいオフィスでは部署が占有できる『BASE』というスペースを設け、座席選択の自由度と、チームでの集まりやすさを両立しています」(山内氏)。
会議デバイスはリアルの会議を前提として会議室の利用シーンを検証し、最適な機器を選定した。
「ディスプレイはソニーのブラビアを選びました。信頼できるメーカーであること、また会議室、応接室の大きさに合わせて設置できる豊富な画面サイズのラインアップがあることも重要でした。さらに譲れなかったのは、当社の会議では図面を画面に表示することが多いため、画面を拡大しても細部までしっかり読める性能があることが必須でした。ブラビアは、これらの条件をすべて満たしていました」(山内氏)
約3800㎡の新オフィスには、約450人の社員が70~80%の出社率で出勤しており、社員アンケートでは、移転前と比べて移転後はコミュニケーション量が増えたと回答したユーザーが85%に上った。またWeb会議ツールについても、約7割がおおむね満足している。残りの約3割に対しては、操作に慣れていないことも影響していると考え、山内氏のチームではマニュアルのブラッシュアップを行った。山内氏は、今後も出社したい環境を提供することで、エンゲージメントや会社への愛着を高める取り組みを継続すると語った。