巧妙化する詐欺から自身や家族を守れ! AIをフル活用したトレンドマイクロ 「詐欺バスター」と「みんなで防ぐ」アプローチとは

「詐欺」という言葉を聞いても、自分は無関係だと感じる人は多いのではないだろうか。しかし、実は被害に遭った人の7割が「自分はだまされない」と考えていたことが分かった。また生成AIの登場以降、詐欺の手口は急速に巧妙化している。誰も安全とはいえない時代に、自分や大切な家族を守るためにはどうすればよいのか。セキュリティーのエキスパートであるトレンドマイクロの本野 賢一郎氏に、日経BPの勝俣 哲生が話を聞いた。

若い世代の詐欺被害が増加
生成AIによって手口も高度化

トレンドマイクロ株式会社 詐欺対策チーフアナリスト 本野 賢一郎 氏

勝俣詐欺が深刻な問題になっています。警察庁の発表※1でも発生件数や被害総額は年々増大していますが、最近の傾向や特徴を教えてください。

本野非対面で接触して現金などをだまし取る、いわゆる「特殊詐欺」の被害者は、これまで65歳以上の方が主でした。ただ、最近は若年層の被害者が増えつつあります。詐欺犯は電話で最初の接触をしかけてくることも多く、電話のやりとりに慣れていない若年層がつい電話に出てしまうことが、被害拡大の一因だと考えています。

勝俣数年前に生成AIが登場したことも、被害拡大の要因になっているのでしょうか。

本野その通りです。少し前は詐欺メールの日本語が不自然なことがよくありましたが、今は生成AIを使って、日本語のネイティブ話者が書いたものとほぼ見分けのつかない文面を誰でも作れるようになっています。これにより、宅配業者などを装ったSMSで偽のサイトに誘導し、個人情報を窃取するケースなどが多発しています。

また、現在増加しているのがディープフェイクを使った詐欺です。これは著名人や他人の顔や声をAIで生成し、ビデオ通話をかけて詐欺行為を行うもの。まるで映画の話のようですが、既にそのような手口も登場しています。

勝俣国も対策に乗り出していますが、何より重要なのは詐欺のターゲットになる私たち一人ひとりが気を引き締めることかもしれません。

本野おっしゃる通りです。当社の調査では、7割の人が「自分はだまされない」と思っているという結果が出ました※2。詐欺を自分ごと化していない人ほど、付け込まれる可能性があります。

AIの攻撃にはAIで対抗する
最新詐欺対策アプリの実力は

株式会社 日経BP トレンドメディアユニット長 勝俣 哲生

勝俣巧妙化する詐欺に、どのように対策を打てばよいのでしょうか。

本野とても難しい問題ですが、1つの方法はテクノロジーを活用することだと私は考えています。当社は、巧妙化する詐欺に対抗するためのツールとして、スマホ・タブレット向けアプリ「トレンドマイクロ 詐欺バスター」(以下、詐欺バスター)をリリースしました。

例えば「詐欺電話対策」機能では、独自の脅威情報と、NTTタウンページや警察、金融機関との連携に基づいて作成したデータベースと照らし合わせ、不審な番号からの着信時とその番号への発信時に画面上に警告を表示します。着信自体を拒否することも可能です。

勝俣そのような機能があれば、怪しい電話に出てしまうケースを防げますね。また、私はかかってきた電話番号が怪しいと思ったら一度Webで検索することにしています。詐欺バスターを入れておけば、その手間も不要になりそうです。

本野加えて、AIをフル活用している点が詐欺バスターの大きな特長です。例えば、怪しいSMSを自動で振り分ける「詐欺メッセージ対策」、スクリーンショットやテキストを基に詐欺かどうかを解析する「詐欺チェック」、ディープフェイクを検出する「ディープフェイクスキャン」などの機能にAIを用いています。

勝俣AIによる攻撃にはAIで対抗するわけですね。中でも、スクリーンショットを基に詐欺を見分ける機能はあまり聞いたことがありません。

本野詐欺チェック機能はWebサイト、SNSやオンライン広告、LINEでの会話などのスクリーンショット、あるいは郵送で届いたDMの写真などを送ると、それが詐欺である可能性などをAIが判定してくれます(図)。

勝俣郵送のDMにも対応できるんですね。ちなみに判定精度はどうですか。

本野詐欺チェック機能は、AIの学習を強化することで、高い精度を実現できています。ディープフェイクスキャンは現状ベータ版(2025年5月時点)ですが、照明の角度や微細なノイズの有無、画像の周波数分析など、複数の観点で分析することで、高精度に検出することができます。詐欺バスターは30日間無料体験ができますので、インストールして怪しいメールや広告のスクショを詐欺チェック機能に送ってみてください。送られた情報が詐欺かどうか判定した上で、もし詐欺であれば対処方法もガイドしてくれます。AIの技術を実感できると思います。

図 トレンドマイクロ 詐欺バスターの「詐欺チェック」機能

受信したメールやWeb画像など、選択した要素の詐欺リスクをAIが判定し、推奨される対応と併せて表示してくれる

図 トレンドマイクロ 詐欺バスターの「詐欺チェック」機能

詐欺被害は「みんなで防ぐ」
コミュニティづくりも重要に

勝俣詐欺バスターなどのテクノロジーを使うほかにも、有効な方法はありますか。

本野もう1つ重要なのは、「みんなで詐欺を防ぐ」という視点です。例えば、詐欺バスターのAIが発するアラートは、詐欺の知識を持つ家族が画面を見て「これ、詐欺じゃない?」と声をかけるのと同じ役割を果たします。このように、家族や周囲の人々の知識と技術を持ち寄って支え合うことこそが、巧妙化する詐欺への最も効果的な対抗策だと考えます。

勝俣なるほど。トレンドマイクロが行っている産官学連携も、まさにその考え方につながる取り組みといえそうです。

本野また、より多くの人に詐欺バスターを使ってもらえれば、それだけデータが蓄積されます。それが製品にフィードバックされて、さらに強固な守りを提供できるようになります。そのような新たな価値を生むコミュニティづくりにも力を入れていく予定です。

勝俣日本のセキュリティー対策は全般的に脆弱だといわれます。詐欺バスターのようなツールや、みんなで防ぐための活動がきっかけになって、草の根から改善されていくことに期待しています。

本野詐欺を含めたサイバー攻撃は水に例えられ、壁が低いところへ流れる(守りが弱いところが狙われる)といわれます。「日本を狙っても割に合わない」――。詐欺の実行組織にそう思わせるよう、みんなで力を合わせて壁を高くしていきましょう。ぜひ、家族や周りの人にも声をかけて一緒に取り組んでいただければと思います。

※1
「 令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」警察庁
※2
トレンドマイクロ調べ


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