Webやメール、AIなどデジタルを活用したBtoBマーケティングが広がりを見せている。
そうした中、多くの企業が直面するのが、リードの「量」と「質」に関する課題だ。
認知拡大やリード数といった「量」を重視しすぎると、その後の営業工数が増大する。収益化しやすい「質」を重視しすぎると、その分、リード獲得件数が減少する。大切なことは、質と量の最適なバランスを見つけることだ。技術系商材のBtoBマーケティング支援を得意とする株式会社ALUHA(アルハ)は、これを実現する新たな手法を提唱している。それが「バランスベースドマーケティング」(以下、BBM)である。
量重視のLBM、質重視のABM
BtoBマーケティングにはさまざまな手法があるが、顧客やリードの「量」と「質」の軸で分類すると、2つの手法に大別できる。1つはより多くのリード獲得と受注件数という量を重視する「LBM(リードベースドマーケティング)」だ。もう1つはLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の高い企業をメインターゲットにして質を重視する「ABM(アカウントベースドマーケティング)」である。
2つの手法には一長一短がある。LBMはリード獲得の量は増えるが、質の低いリードも含まれる傾向がある。「多くのリソースや工数をかけて営業しても、思ったほど商談や利益につながらず、マーケティング担当者も評価されにくい」とALUHAの荻野 永策氏は語る。
その課題を解決する手法としてABMが注目されたが、ABMはターゲットアカウントを設定し、接点の創出と関係構築、そして商談獲得と工数がかかるため、売上につながるまで時間がかかる。商談、そして売上増につながった場合も「特定の顧客への依存度が高くなるため、取引の縮小や顧客の流出などがあると、自社の業績に与えるダメージも大きい」(同氏)というデメリットがある。

荻野 永策 氏
マーケティング部門は「売上」に対する直接的な貢献が計りにくいため「リード獲得の量」を追求する傾向がある。それに対し営業部門は「売上」で評価されるため、「リードの質(LTVの高さ)」を重視する。「マーケティング部門と営業部門の目標が合致していないため、両者の間に齟齬が生まれやすい」と荻野氏は指摘する。
リードの質と量のどちらを重視するかは社内事情、競合の動向、営業の意向などによって変わってくる。「例えば、予算未達のため、量重視から質重視にするといった方針転換があった場合、その変化に営業もマーケティング部門も機敏に対応しなければなりません。もし、両者に齟齬があると、連携がうまくいかない」と荻野氏は続ける。
質と量のバランスを重視するBBM
柔軟かつ営業との齟齬が生まれにくい施策が可能に
質と量のジレンマを改善し、自社の利益を最大化する。また戦略変更や事業環境の変化に柔軟に対応する手法として注目したいのが、ALUHAが提唱する「BBM」である(図1)。「自社のリソースを効率よく活用し、BtoBマーケティングプロセスの各段階における質と量の最適なバランスを追求していく手法です。LBMか、ABMかという二者択一ではない、BtoBマーケティングの新たな選択肢として考案しました」と荻野氏は説明する。
図1 BBMのファネル
BBMの実践に不可欠な指標になるのが、「ICP」だ。これは自社事業と相性が良く、受注すれば高いLTVが期待できる理想的なリードや顧客像のこと。このICPを定義し、該当するリードや顧客の割合を可視化することで、ICP率というKPIを算出することができる。このICP率がリードや顧客の質と量のバランスを示すKPIになる。
例えば、何らかの施策で400件のリード獲得に成功し、そのうちICPに該当するリードが150件あれば、ICP率は37.5%となる。さらに見込み客の育成、商談化、受注といったマーケティングプロセスにおいてもICPに該当する見込み客をどれだけ獲得・育成できているかをICP率として可視化する。(図2)
図2 ICP率の算出イメージ
プロセスごとにICP率を可視化することで、「自社のマーケティングとセールスは質に偏っているのか、量に偏っているのか」を判断できるようになる。全体的に量に偏っている場合は、「受注件数」の増加が結果として見込めるが、代わりにLTVが低くなっている可能性がある。逆に質に偏っている場合は、LTVの向上は期待できるが、受注件数が下がりシェアも落ち、特定の顧客に売上が依存する。
こういった判断を、ICP率をKPIにすることでできるようになるのがBBMの特徴だ。
狙っている方向性と実態のギャップを確認、最適なバランスが崩れている場合には、施策の見直しもできる。
「各プロセスにおいて、ICPに該当するリードとそうでないリードに分類し、ICPに該当するリードにはABM寄りの施策を、そうでないリードにはLBM寄りの施策を展開します」と荻野氏は話す。
企業のマーケティング戦略は事業戦略と密接に関連している。最適なICP率を見つけ、継続的に施策を調整・最適化していくことで、戦略変更に機敏に対応しつつ、利益の最大化とリソースの効率活用を目指すのがBBMだ。
BBMにはもう1つ大きなメリットがある。ICPやICP率という“共通指標”によって、部門を超えたコミュニケーションが可能になることだ。BBMでは営業、マーケティング部門、さらに事業部もICP・ICP率という“共通指標”を軸に議論を深めることができる。
「質と量の最適なバランスをどこに設定するか――。マーケティングや営業のコストと受注利益の投資対効果は妥当か――。営業や事業部、マーケティング部門間で合意形成を図り、納得感を持って施策を展開していけます」と荻野氏は訴える。
ICPの定義
BBM成功のポイントとなるICP。そのICPはLTV条件(大口の受注につながる可能性)、受注の近さ(名刺交換か製品デモ依頼かなど)、顧客の課題と自社の強みの相性などから定義していく。その前提として、LTV条件、受注の近さ(確度)、課題の相性について、それぞれ分析・定義が必要になる。「課題の相性」は、社内に蓄積されたリードや顧客の課題情報を収集してデータベースに集約すると分析しやすくなる。
試行錯誤で培った経験値が強み
BBMの導入から実行まで伴走支援
もともとBBM考案の背景には自社の課題解決があった。
ALUHAでは、2008年頃より、Webサイトによる情報発信などでリード獲得に力を入れ始めた。BtoBマーケティングの情報がまだ少なかった時代、リード獲得数は着実に増加していったが、リソースが限られていることから「獲得した大量のリードを十分にフォローできない」という状況に陥った。
そこで「量より質」を狙うべくABMを検討する。当初、「顧客が解決したい課題」と「自社が解決できる課題」にズレが生じ、営業工数に対して受注が伸びない状態が続いたが、自社に蓄積されていた顧客の課題をデータベース化し、それをエビデンスとして、ABMに取り入れたことで精度が向上、売上増つながった。さらにLTV向上を実現することもできたが、同時に特定の顧客企業への依存度が高まることによるリスクも見えてきたという。
このようにLBM、ABMの両方を実践し、そのメリット・デメリットを経験、「LBMで量を重視する」「ABMにしないとリソース不足に陥る」など自社リソースや競合の動き、市場の動向を見ながら、その時々で柔軟にマーケティング手法を切り替える体制・組織づくりがBtoB企業には必要と考え、たどり着いたのが質と量の最適なバランスを重視したBBMなのだ。
導入以降、同社では売上・利益の継続的な成長を実現、自らその有効性を実証している。
「弊社は、ソフトウエア開発会社として創業した会社なので、技術理解力は非常に高い。専門性の高い技術を活用した製品・サービスについても、その本質と強みを深く理解し、お客様のニーズにマッチした最適な施策を提案できる」と荻野氏はALUHAの強みを述べる。実際、製造業やIT業界のBtoBマーケティングを数多く支援しており、業界を代表するリーディングカンパニーの支援実績も多数ある。
BBMのゴールは「利益を最大化するバランス」を追求することだが、いきなり全ての施策のICP率を算出するのは難しい。また認知拡大やリードの獲得量を最優先にする商材い、あるいはセールス先が限られる商材など、BBMに不向きな製品・技術もある。
「今のお客様の状況に合わせて、何をゴールに定め、何から始めて、どんなふうに計画を進めるのかを共に考えていきます」と荻野氏は語る。
ALUHAでは、自らが試行錯誤を繰り返して培った経験値やノウハウを生かし、マーケティング手法の選定から、戦略・計画の策定、実行、KPIの可視化、人材教育までワンストップで支援、企業が抱えるBtoBマーケティングの課題解決を目指している。