ノンアルコールカクテルテイスト飲料※1市場が拡大する一方で、「飲まない人」に最適な選択肢は、いまだ限られている。
アサヒビールが2025年9月に発売した「ウィルキンソン タンサン タグソバー」は、
そうした課題に対し、“夜専用炭酸水”という新カテゴリーで応えた商品だ。
日経トレンディのヒット予測を受賞。夜専用という新カテゴリーで、飲まない人の夜に新しい価値を届ける。
お酒でもジュースでもない、夜の時間を楽しむための飲み物は、いかにして生まれたのか。
ブランドマネージャーの山添智香子氏に、開発の背景と新市場創出の狙いを聞いた。※1 ノンアルコールでサワーやカクテルのような味わいを楽しめる飲料の総称
仕事を終え、自宅でひと息つく夜の時間。アルコールを飲む人にとっては、ビールやチューハイ、ワインといった定番の選択肢がある。一方で、飲まない人が手に取るのは、水やお茶、清涼飲料など、昼間と変わらない飲み物がほとんどだ。こうした選択の偏りに目を向けると、近年広がりを見せるノンアルコール市場にも、新たな可能性が見えてくる。

商品数の拡大やフレーバーの多様化により、
堅調な伸びを見せるノンアルコールカクテルテイスト飲料市場。
ただ、その多くは“お酒の代替”にとどまっているため、
まだまだ拡張の余地はありそうだ
「ノンアルコールカクテルテイスト飲料市場は右肩上がりの伸長を続けており、日常の選択肢として定着しつつあります。しかし、今の市場はお酒を飲む人向けで、飲めないシーンでの“お酒の代わり”という立ち位置となっています。お酒を飲まない人には関係のないカテゴリーと思われてきました」と言うのは、アサヒビールでウィルキンソン タンサン タグソバーを担当する山添智香子氏だ。
アサヒビールの調査によると、国内の成人人口約9000万人のうち、「飲酒を好む」人は約2000万人、「あまり飲まない」人は約2000万人、残りの約5000万人は「飲めない、または飲まない」人が占めるという。にもかかわらず、これまでのノンアルコール飲料は、飲む人を基準に設計されてきた。

「お酒を飲まない人にとって、『清涼飲料は子どもの飲み物』『炭酸水やペットボトル飲料は、日中のどが渇いたときに飲むもの』『ノンアルコール飲料はお酒を飲む人のもので、お酒の代替品』というイメージは強く、『大人向けの特別な飲み物が欲しい』というニーズがあることが分かったのです」(山添氏)
そこで行き着いたのが、「夜専用」というキーワードだ。飲まない人でも、夜にお酒のような時間を楽しめる、大人のための飲み物をつくれないか。そう考えた背景には、山添氏自身の体験があった。「実は私もお酒が飲めず、夜のお供といえばもっぱらお菓子やアイス、ジュースばかり。そんな中で出合ったのが、特別な大人感を味わえるノンアルコール飲料でした」
ノンアルコール飲料の奥深さに衝撃を受けた山添氏は、この世界観を飲まない人にももっと広めたいとアサヒビールに転職。入社3年目にして、従来のノンアルの常識を覆す新ブランドを立ち上げた。それが2025年9月に発売された、夜専用炭酸水「ウィルキンソン タンサン タグソバー」だ。
「ウィルキンソン タンサン タグソバー」は、その名の通り「ウィルキンソン」のおいしさをベースにつくられた、ノンアルコールカクテルテイスト飲料だ。「夜専用」とうたうだけあって、アルコール分0.00%でありながらその味わいは複雑で、昼に飲むいつもの炭酸水とは明らかに異なる。
フレーバーは、爽やかなレモンの風味とジンジャーの辛味のバランスが取れた、刺激的な味わい、無糖の「レモンジンジャ」と、爽やかなライチの風味とトニックの苦みが絶妙に調和した、すっきりとした甘さの「ライチトニック」の2種類。どちらもウィルキンソンの特長である強炭酸※2を活かしたスパイシーかつ刺激感たっぷりの仕上がりで、まさに「大人のための夜専用炭酸水」のコンセプトを具現している。※2 アサヒビール内ノンアルコールカクテルテイスト飲料比較
ユニークなのは、ノンアルコール飲料であることをあえて強調していない点だ。これも、顧客インサイトから導き出された戦略の一つだという。
「お酒を飲まない方は、ノンアルと聞いただけで『自分向けではない』と判断される方も少なくないんです。その障壁を取り除くためにも、タグソバーは、ノンアルコール飲料として前面に出すのではなく、“夜専用のウィルキンソン”という見せ方にしています」(山添氏)
それだけに、パッケージにも徹底的にこだわった。マットに仕上げた缶の中央にツヤ感のある「WILKINSON」のロゴを大きく配置し、アイキャッチで「夜専用炭酸水」を訴求。いつもとは違う“特別なウィルキンソン”であることがひと目で分かる設計とした。また帯には氷のビジュアルを施し、「冷えた炭酸水」の冷涼感と爽快感を演出。同時に、お酒を飲む人にも手に取ってもらえるように、チューハイやノンアルコールのようなお酒っぽい雰囲気を出す工夫も凝らしている。

黒を基調とした「レモンジンジャ」と、
赤を際立たせた「ライチトニック」。
2つの缶を並べることで、
店頭でもスタイリッシュに映えるパッケージデザイン
「夜専用炭酸水というコンセプトですが、ノンアルコール飲料であるため、店頭では、お酒売り場の中のノンアルコール飲料コーナーに置かれます。そのため、お酒を飲む人にもアピールする仕掛けを用意しました。見る人によって、自由に解釈できるところもポイントです」(山添氏)
飲まない人にとっての見た目は、缶で売られている夜専用の炭酸水。缶をプシュッと開ける体験やスパイス感のある味わいで、ジュースとは違った、夜の時間にぴったりな飲み物として、お酒のような楽しみ方ができるのも、「夜専用炭酸水」ならではの醍醐味だ。
「仕事終わりや食後に、缶を開けて晩酌する。お酒好きの方には当たり前の夜の楽しみを、飲まない人にも味わっていただきたい。そんな思いもあって、缶パッケージのみの展開としています。ふだんペットボトル飲料に慣れ親しんでいる方にとっては缶で飲むこと自体が新鮮で、プシュッと開ける感覚に日常からの開放感や夜時間のはじまりを感じていただけており、お客様からも大変好評です」(山添氏)
実際に寄せられた声の中には、「缶をカシュッと開ける瞬間が良い」「缶でお酒の雰囲気はありつつも、炭酸水に近くて自分たち向け」「缶で夜専用だから特別感がある。冷蔵庫に缶が冷えているとワクワクする」とポジティブなものが多い。特筆すべきは、今までお酒もノンアルコール飲料も飲んでいなかった層が、お酒売り場へ立ち寄り、何度もリピートしているという事実だ。これも、「ウィルキンソン タンサン タグソバー」が夜の飲み物の新しい選択肢として受け入れられている証しといえよう。発売当初から好評を博しており、さらに日経トレンディのヒット予測を受賞した。
「ウィルキンソン タンサン タグソバー」は、炭酸水であるウィルキンソンから生まれた。発売から約5カ月経った今、ウィルキンソンファンはもちろん、ノンアルコール飲料未体験のお客様や、既存のノンアルコール飲料カテゴリーのお客様も含めた幅広い層に支持されるブランドとなりつつある。
「『夜専用炭酸水』という新しい価値提案により、これまでノンアルコール飲料を選択肢に入れていなかった人たちの行動を変えられたのではないかと思っています。当初ターゲットとしていたお酒を飲まない人たちに加え、普段はアルコールを飲む方々からも好評をいただいています。意外だったのは、お酒が大好きなので、今までノンアルコール飲料は飲んでこなかったし興味もなかった、といった“ノンアル否定派”のお客様にもタグソバーは大変好評だということです。これを機に、ノンアルコールカクテルテイスト飲料カテゴリーに新しいお客様を連れてきて、さらなる活性化につなげていきたいと考えています」(山添氏)

その根底には、アサヒビールが提唱する「スマドリ(スマートドリンキング)」の考え方がある。スマドリとは、飲む人も飲まない人も、その日の体質や気分、シーンに合わせて、お酒やノンアルコール飲料をスマートに楽しむ新しい飲み方のこと。その先に目指すのは、飲む人も飲まない人も互いを尊重し合い、「みんなが飲みトモ」になれる社会だ。
「飲まない人同士で集まったときも、『ウィルキンソン タンサン タグソバー』で乾杯してもらえたらうれしいですね。食事にもとても合いますのでおすすめです。また、夜の趣味時間のお供として、無糖でスパイシーな『レモンジンジャ』はポテトチップスに、すっきりとした甘みと苦味を併せ持つ『ライチトニック』はバームクーヘンのような甘いスイーツにもよく合います」(山添氏)
大人が夜を楽しみたいときに飲む特別な夜専用炭酸水。「ウィルキンソン タンサン タグソバー」の挑戦は、ノンアルコール飲料市場における新たなカテゴリー創出の可能性を示した。夜の飲み物に物足りなさを感じている人や強炭酸好きの人は、ぜひ一度ノンアルコール飲料売り場にも足を運んでみてほしい。きっと求めていた一杯に出合えるはずだ。

