夏こそ“キンキンDRY!”

スーパードライが挑むキンキンDRY戦略 スーパードライが挑むキンキンDRY戦略

「冷凍庫3分」ビールの「4℃の壁」に挑んだ科学的根拠を聞く 「冷凍庫3分」ビールの「4℃の壁」に挑んだ科学的根拠を聞く

2026年10月、ビール業界にとって大きな節目となる最後の酒税改正が行われる。
ビール需要のさらなる拡大が期待される中、アサヒビールは「アサヒスーパードライ」の
新たな価値として、「辛口」×「冷え」を打ち出した。
お客様にとって本当にうまいビールとは何か——。
その問いに向き合う中で展開しているのが、「キンキンDRY戦略」だ。
調査で判明した「生ビールへの期待断トツ1位が“冷え”(58.1%)」というファクトと
「仕上げに3分冷凍庫」という驚きの新提案。
“キンキン”の裏にある温度と味覚(飲みごたえ・キレのよさ)の緻密な科学的ロジックとは何か。
ブランドマネージャーの堀謙太氏に、戦略の狙いと、その先に見据えるスーパードライの進化について聞いた。

聞き手:日経BP 総合研究所 客員研究員 品田 英雄

酒税改正を追い風に「本当にうまいビール」が選ばれる時代へ 酒税改正を追い風に「本当にうまいビール」が選ばれる時代へ

品田 2020年から段階的に実施されてきた酒税改正が、いよいよこの10月、最終フェーズを迎えます。これまでの改正を経て、ビール市場はどのように変化していますか。

日経BP 総合研究所 客員研究員
品田 英雄

堀 酒税改正が始まった2020年以降、ビール類市場において、ビール、発泡酒、新ジャンルの中でビールの数量構成比は順調に伸び、2025年には57%まで上昇しました。私たちの調査では、2026年10月の酒税改正後に「ビールを飲む量を増やしたい」と回答した方が35%近くいらっしゃいます。このことから、10月以降はさらにビール需要が高まっていくと見ています。

発泡酒・新ジャンルに対するビールの数量構成比率は、2020年の酒税改正から伸長。
第2回改正の2023年には50%を超え、直近では57%まで伸びている

品田 ビールの選び方も変わってくるのでしょうか。

堀 これまでは価格も商品の選択理由の1つでしたが、酒税が統一されて価格差が縮小する中で、お客様も「せっかく飲むなら本当にうまいものを」という気持ちで商品を手に取るようになると思います。そのときに選ばれるブランドであるためには、「スーパードライ」の本来の価値を明確にし、さらに磨き込んでいくことが重要だと考えています。

アサヒビール
「スーパードライ」ブランドマネージャー
堀 謙太

品田 各社にとっても大きな勝負どころになりそうです。

堀 10月は各社が全力をぶつけ合う戦いとなるでしょう。でも、それは業界側の事情に過ぎません。お客様にとって重要なのは、どのメーカーが頑張ったかではなく、「どのビールが本当にうまいか」ということ。私たちは10月をゴールではなく、それまで取り組んできたブランド活動の“通信簿”が出る時期だと考えています。だからこそ今年の夏は、昨年から展開している「冷え」戦略を加速し、「スーパードライ」のうまさをお客様にしっかりとお届けするチャンスだと捉えています。

ビールのうまさに直結する「冷え」「スーパードライ」でその価値を最大化 ビールのうまさに直結する「冷え」「スーパードライ」でその価値を最大化

品田 あらためて、「冷え」に着目した理由を教えてください。

堀 当社の調査では、お客様が生ビールに一番期待する価値は「冷え」だということが分かりました。「泡立ち」や「鮮度」といったさまざまな要素がある中で、「よく冷えている」が断トツでトップだったのです。つまり、冷えは単なる温度ではなく、ビールの味わいを構成する極めて本質的な価値の1つだということ。そして、その価値と親和性が高いのが、「スーパードライ」の辛口だと考えています。

生ビールに期待されるのは、「よく冷えている」が58.1%と圧倒的。
2位以下の「泡立ち」「鮮度」などを大きく引き離す結果となった

品田 冷えと辛口には、どんな関係があるんでしょうか。

堀 まず、温度を下げると炭酸が液体に溶け込みやすくなります。すると、のどに感じる炭酸の刺激が増し、飲みごたえが向上します。一方で、温度が下がることで苦味は感じにくくなるため、後味のスッキリさもよくなります。私たちはスーパードライの辛口を、「飲んだ瞬間の飲みごたえ」と「瞬時に感じるキレのよさ」と定義しています。冷やすことによって辛口のうまさがより際立つのです。

冷やすことで炭酸刺激が増すと同時に、苦味感が抑えられ、よりスッキリとした後味に。
「スーパードライ」ならではの辛口のうまさが増幅する

品田 冷やせばどんなビールでもおいしくなる、という単純な話ではないんですね。

堀 おっしゃる通りです。香りやコクを特長とするビールは、冷やし過ぎると個性が損なわれることもあります。その点、飲みごたえとキレを両立した辛口の「スーパードライ」が、冷えと非常に相性がいいというのは、研究を重ねてたどり着いた確信です。そこで、キンキンに冷えた「スーパードライ」を、ブランド体験そのものとしてお届けするために展開しているのが、「キンキンDRY戦略」です。

品田 キンキンというのは、シズル感もあって分かりやすいですね。

堀 インタビュー調査をすると、お客様は「よく冷えた」とは言わずに、「キンキンの」と表現されるんです。この一言に直感的なうまさが凝縮されています。私たちが「キンキンDRY戦略」と呼んでいるのも、お客様のお声を大切にした結果です。

業界の常識を覆した「仕上げに3分冷凍庫DRY」への挑戦 業界の常識を覆した「仕上げに3分冷凍庫DRY」への挑戦

品田 では、今夏のキンキンDRY施策について教えてください。

堀 最も象徴的な取り組みが、「仕上げに3分冷凍庫DRY」です。冷蔵庫でしっかり冷やした「スーパードライ」を、飲む直前3分間冷凍庫で冷やす※1というご提案です。ご家庭で気軽にできるワンアクションで、よりキンキンのうまさを味わっていただけます。※1 冷凍庫には、20分以上入れないでください。他のブランド、缶以外の容器は冷やさないでください。凍結のおそれがあります。

品田 ビールを冷凍庫に入れるというのは、斬新なアプローチですね。

堀 お店で飲む「スーパードライ」は、4℃未満で提供されることが多いのですが、一般的な家庭用冷蔵庫で冷やせる温度は、おおよそ4~6℃までです。この「4℃の壁」を突破することで、おうちでも最高の「スーパードライ」を体験していただきたいと考えました。そのためにいろんな方法を試し、たどり着いたのが「仕上げに3分冷凍庫DRY」です。とはいえ、業界的にはビールを冷凍庫で冷やすのは禁じ手。最初は、社内でも反対も一部ありました。

品田 どうやって説得したんですか?

堀 研究所のメンバーとも連携しながら、温度変化や凍結リスク、味わいへの影響などを徹底的に検証し、適切な時間であれば安心して楽しんでいただけることを確認しました。そのうえで、経営陣が「全社戦略として、勇気と覚悟をもってやる」と決断してくれたのです。

品田 そこまでしてでも届けたい価値があったということですね。

堀 はい。ご家庭でキンキンDRYを楽しんでいただくためには、避けて通れないテーマでした。実際に体験されたお客様からは、「唸るほどうまかった」「家で飲むビールの印象が変わった」といった声もあり、想像以上の手応えを感じています。

品田 そう聞くと、すぐにでも試したくなってきますね。

堀 ぜひやってみてください。いつもの「スーパードライ」のうまさが格段に上がります。この夏、日本全国のご家庭で、一人でも多くの方にキンキンDRYを体験していただきたいですね。

キンキンDRYの先にあるもの 今年10月、「スーパードライ」は次のステージへ キンキンDRYの先にあるもの 今年10月、「スーパードライ」は次のステージへ

品田 飲食店での体験づくりについてもお聞かせください。

堀 樽・サーバー・グラス・注ぎ方、そして「冷え」まで徹底してこだわってスーパードライを提供している「スーパーコールド」認定店の展開や、冷たさを五感で体感できる「キンキンタンブラー」の導入を昨年から進めています。タンブラーには、熱伝導率の高いアルミと、温度に反応して色が変わる示温インキを採用しています。冷えたビールを注いだ瞬間に、キンキンの冷たさが視覚と触感で伝わるという仕掛けです。

4℃未満になると、「辛口カーブ」が浮かび上がるキンキンタンブラー。
手に感じる冷たさと目に鮮やかなブルーで、うまさへの期待感を高めてくれる

品田 触ってみると、本当に冷たいですね。色もみるみる変わっていきます。青くなったこの曲線、どこかで見たことがあるような……。

堀 これは、スーパードライのシンボルである「辛口カーブ」※2をあしらったものです。示温インキによるこのカーブは、今年1月から缶体パッケージのデザインでも採用しています。スーパードライは飲食店で提供される生ビールから、ご家庭で楽しまれる缶ビールまで、お客様との接点が数多くあります。それらの接点で、「ブルーのカーブが見えたら、キンキンにうまいビールが飲める」というイメージを定着させていくのが狙いです。※2 「スーパードライ」の特長である「飲んだ瞬間の飲みごたえ、瞬時に感じるキレのよさ」を分かりやすく伝達するために、研究所パネリストの味覚評価をベースに特長を視覚化したもの。

缶にも、温度に反応して色が変わる示温インキを採用。
冷蔵庫で冷やすと、カーブがブルーに変わる

品田 家庭から飲食店まで共通のブランド体験を設計しているわけですね。

堀 おかげさまで、「スーパーコールド」認定店をはじめ、-2℃から0℃未満で提供する「スーパードライ エクストラコールド」設置店、キンキンタンブラー取扱店などの「冷え」にこだわった体験ができる拠点は全国で3万店を突破しました。さらに、2027年までに10万店のキンキン体験拠点を作っていきます。

品田 夏を越えれば、いよいよ勝負となる10月の酒税改正。「スーパードライ」の次なる挑戦も気になります。

堀 10月には、「スーパードライ3.0」へと新たな進化を遂げます。1987年の発売時、スーパードライは「辛口」というコンセプトで日本のビールの常識を塗り替えました。2022年には発売36年目にして初めてのフルリニューアルを行い、今年10月には、約40年の歴史で2度目となる中味の変更に踏み切ります。テーマは、「冷やしてさらにぶっちぎりにうまい※3。辛口<生>の追求」です。※3 「スーパードライ」における温度帯別評価比較において

品田 なるほど。これまでの取り組みはすべてそこにつながっていたんですね。最後に、読者へメッセージをお願いします。

堀 まずはこの夏、「仕上げに3分冷凍庫DRY」で本当にうまいビールを楽しんでいただきたいですね。キンキンDRYで、うだるような暑さの日本を元気にしたいと願っています。そして10月には、「スーパードライ3.0」を全国にお届けします。今回スーパードライで実現した新たな味は、ご支持いただいている「辛口」の中味骨格は継承しながら、辛口カーブに描く「飲みごたえ」「キレのよさ」の特長をよりダイナミックに表現した、自信作です。ぜひご期待ください。

取材を終えて 日経BP 総合研究所 客員研究員 品田 英雄 取材を終えて 日経BP 総合研究所 客員研究員 品田 英雄

今回のお話で印象的だったのは、「キンキン」という非常に感覚的で親しみやすい言葉の裏側に、徹底した研究や技術開発、ブランド設計があったことです。ビールの温度と味わいの関係を科学的に突き詰め、その成果を「仕上げに3分冷凍庫DRY」やキンキンタンブラーといった体験へと落とし込んでいる点に、価値づくりへの強い意志を感じました。また、「キンキン」という言葉自体も企業が生み出したものではなく、お客様の表現を起点としていることから、生活者視点を大切にする姿勢もうかがえます。「スーパードライ」の原点を磨き上げながら、新たな体験価値を創造していく。その積み重ねこそが、長く愛されるブランドを支えているのだと実感しました。この夏は、私もキンキンDRYで暑さを乗り切っていきたいと思います。