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デカボチャレンジ企業を選ぶ基準は知名度や給与、やりがいだけではない。自分の仕事が社会課題にどのように向き合っているのか。とりわけZ世代は「社会的インパクト」を重視する傾向が強まっている。こうした価値観の変化を背景に、企業と学生が社会課題の解決策を共に考える事業共創プロジェクト「デカボチャレンジ」が開催された。主催するのは、三井物産と博報堂の共創プロジェクトとして立ち上がったEarth hacksだ。「デカボチャレンジ2026 Spring」は、企業や自治体が提示する課題に対し、学生がチームで解決策を提案する5日間のプログラムで、Z世代と共に脱炭素社会の実現などを目指して新規事業を創出する場として注目されている。

デカボチャレンジ

企業と学生が共に磨き上げる
共創型プログラム

デカボチャレンジは、企業と学生が社会課題をテーマに共創する5日間のビジネスコンテストだ。2026年3月6、7、13、14日の4日間にわたってグループワークが行われ、最終日の16日に決勝プレゼンテーションが実施された。約4000人の応募者から選抜された100人ほどの学生が参加し、参加企業8社それぞれに対して4名×3チームが編成され、学生たちは提示された課題に対して議論を重ねながら提案を磨き上げていった。

デカボチャレンジの特徴は、単なるアイデアコンテストや短期インターンとは一線を画す「共創型」の設計にある。参加学生は、企業や自治体が提示する実在の課題に対し、チームで解決策を構想するだけでなく、企業担当者と複数回のディスカッションを重ねながら、「企業のアセットをどう活用するか」「収益化はどう成立させるか」という現実的な制約も踏まえ、実現可能なビジネスプランを磨き上げていく。

参加団体はBtoB企業、BtoC企業、官公庁、自治体など多種多様で、テーマも学生にとって決して身近とはいえないものが多い。脱炭素、障がい者支援、次世代エネルギーといった社会的に重要でありながら、複雑な構造を持つ課題が提示される。それに対し学生たちは、企業理解を深めながら、独自の視点で再解釈し、具体的な施策へと落とし込んでいく。4日間という限られた時間の中で、課題設定からインサイト、施策、さらには収益性や実現可能性までを一貫して提示することが求められる。

こうした設計の背景には、社会課題を「自分ごと」として捉え、行動につなげるためのEarth hacksが重視する体験設計の思想がある。単に取り組みを説明するだけでは共感は生まれない。社会課題そのものだけでなく、それに挑む企業や人への理解を深めるプロセスを通じて、はじめて当事者意識が芽生えると考えている。

これらのプロセスを経て最終日である5日目に行われるのが、決勝プレゼンテーションだ。全チームの中から選抜された8チームがビジネスプランの発表を行い、審査員から選ばれた大賞と参加学生の投票による学生大賞が選ばれる。今回は審査が拮抗したため特別に審査員奨励賞が設けられた。

大賞を受賞した「東京建物」チーム受賞挨拶
学生大賞を受賞した「TOKYO GX ACTION 2026実行委員会」チームの発表風景
審査員奨励賞を受賞した「リコー×リコーブラックラムズ東京」チームの発表風景

なぜ今、企業と学生の
「共創」が必要なのか

デカボチャレンジで扱われるテーマは、いずれも企業単独では解決が難しい社会課題ばかりだ。脱炭素やサステナブル消費といった領域では、生活者の意識や価値観そのものを変えていく必要がある。また、社会課題解決をビジネスとして成立させるためには、単なるアイデアではなく、「共感され、実際に行動につながる仕組み」まで設計が求められる。中でもZ世代の価値観は急速に変化しており、従来の調査やマーケティング手法だけでは、その実態を十分に捉えきれない。こうした背景を踏まえ、Earth hacksは企業と学生が同じ視点で課題に向き合い、議論を重ねながら価値を磨き上げていくプロセスにこそ意義があると位置づけている。

これらの取り組みが企業にもたらす価値について、Earth hacks代表取締役副社長 和田佑介氏は次のように語る。

「企業にとってのメリットは大きく3つあります。1つは、Z世代のリアルなインサイトが深く理解できること。2つ目は、企業単独では生まれにくい新しいアイデアや事業の種が得られること。そして3つ目が、共創を通じて企業への共感が生まれ、ブランドとの関係性が深まることです」

Earth hacks代表取締役副社長 和田佑介氏とグループワーク中の学生が対話する様子

デカボチャレンジを通じて企業と学生の間に深い相互理解が生まれ、企業にとっては課題に向き合う過程で思考力や価値観を発揮する優秀な学生と出会う機会にもなっている。
「通常のインターンは、学生と企業がある意味『利害関係』を持って向き合いますが、デカボチャレンジは、純粋に課題に向き合い優勝を目指す中で、企業のことを徹底的に理解しようとする。そのプロセスの中で、結果的に企業のことを好きになるという構造になっています」(和田氏)

また学生側にも大きな変化が生まれている。
「就職活動の一環として参加する学生もいますが、実際に体験すると『それだけではない』と気づきます。社会課題に本気で向き合い、楽しそうに取り組んでいる大人たちの姿を見て、自分もこうありたいと思うきっかけになるんです」(和田氏)

和田氏は、このプログラムを通じて「成功体験を持ち帰ってほしい」と語る。
「自分たちで考え抜いたアイデアが評価されるという経験が、自分の可能性を信じるきっかけになります。それが次の挑戦につながっていくと思っています」

Z世代の発想が
企業に新たな視点をもたらす

各企業のテーマごとに予選を勝ち抜いた8チームが挑んだ決勝では、社会課題の解決とビジネスとしての実現性を両立させた提案が相次いだ。

審査員からは、Z世代ならではの視点を評価する声が目立った。
「Z世代はデジタルネイティブ。スマホとの距離感や隙間時間の捉え方など、企業にとってヒントになる視点が多い」と五味智治氏。Z世代の悩みや行動は、企業にとって新たなヒントになり、日常のリアルな感覚がそのままインサイトとして昇華されていた点を評価した。

清水佑介氏は学生のレベルの高さについて「回を重ねるごとにレベルが上がっていて、現場で実務経験を積んだ社員の提案を聞いているようだ」と評価。ことソーシャルというテーマにおいては、学生とプロフェッショナルは垣根なく協業していけるのではないか、と言及した。

また、バブリー氏は、難易度の高いテーマに対しても、企業の価値を情緒的価値として再設計し、施策レベルまで落とし込んでいる点に着目。「課題発見からインサイト、そしてアクションまで一貫している」と評価した。

五味 智治 氏

五味 智治

三井物産株式会社
サステナビリティ・ソリューション事業部
Social Impact室 室長

清水 佑介 氏

清水 佑介

株式会社ねごと 代表
Earth hacks株式会社 CCO

バブリー 氏

バブリー

合同会社CGOドットコム
総長

中村 勇介

中村 勇介

株式会社 日経BP
日経クロストレンド編集長

特に印象的だったのは、社会課題に対しても収益化まで踏み込んだ提案が多かった点だ。中村勇介(日経BP 日経クロストレンド編集長)は、「ビジネスとして成立しているか」という観点から評価し、「社会課題だからといって理想論で終わるのではなく、投資と回収まで考えている。完全にビジネスプレゼンになっていた」と語った。

Z世代の発想は企業の意思決定に耐えうるレベルにまで昇華されている点が、審査員の評価からも浮き彫りになった。

学生と企業が共に課題に向き合い、解決策を磨き上げていくプロセスの重要性について、Earth hacksの代表取締役社長 関根澄人氏は決勝の冒頭で「早く行きたければ一人で進め。遠くに行きたければ、みんなで進め」と語る。 5日間の議論を通じて学生たちが体感したのは、まさにこの『共創の価値』だった。

学生が得たのは
「答え」ではなく「問い続ける力」

優勝した「東京建物」チームの4人に話を聞くと、このプログラムの価値は結果以上に、問いを深め続けたプロセスにあったことが見えてくる。参加理由はさまざまだが、5日間の経験はそれぞれの認識を大きく変えた。

大賞を受賞した「東京建物」チーム。左から宮川さん、鈴木さん、加賀さん、上田さん

チームで議論を重ねる中で、一人では見出せなかった考えにたどり着けたという実感は共通している。上田さんは「メンバーそれぞれの強みが異なっていたからこそ議論が深まった」と振り返る。鈴木さんも「一人だったら安直な方向に逃げていた。本質的な議論ができたのはこのチームだったから」と語った。

また、企業と直接向き合う中で、ビジネスのリアルに触れた経験も大きい。宮川さんは「現場の声に触れたことで『手触り感のある事業づくり』を改めて志向するようになった」という。加賀さんも「これまでの視点が広がり、『自分たちで突き詰めたアイデアを実際に動かしてみたい』という思いが強まった」と話す。

こうした経験はキャリア観にも影響を与えている。上田さんは「志やビジョンを軸に将来を考える羅針盤ができた」と語り、鈴木さんも「誰と組むかが成果を左右することを強く実感した」という。

単なるケーススタディではなく、仲間と共に考え抜き、企業のリアルに触れる中で自らの価値観と向き合う。デカボチャレンジは、学生にとって「問い続ける力」を育む機会となっていた。

Z世代と企業をつなぐ
新しい共創のかたち

学生たちを激励するEarth hacks 代表取締役社長 関根澄人氏

デカボチャレンジは、学生にとっての学びの場であると同時に、企業にとっても価値の高い機会になっている。Z世代のリアルなインサイトを深く理解できるだけでなく、新規事業のヒントとなるアイデアや、共感を軸に意欲の高い学生との接点を得ることができる。

さらに、学生の提案が実際に社会実装されるケースもあるという。
「提案で終わらず実装につながる可能性がある点が、この取り組みの大きな価値です」(和田氏)

こうした共創の関係は、プログラム終了後も継続していく。Earth hacksでは、参加学生と企業が継続的に対話を深める場として「デカボミートアップ」を定期的に開催し、チャレンジを起点とした関係性をさらに発展させていく構想だ。

デカボチャレンジ

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