広告戦略を媒体横断で再現する AaaS Demand Platformが切り開く次世代運用 広告戦略を媒体横断で再現する AaaS Demand Platformが切り開く次世代運用

広告戦略を媒体横断で再現する AaaS Demand Platformが切り開く次世代運用 広告戦略を媒体横断で再現する AaaS Demand Platformが切り開く次世代運用

近年、広告のデジタライゼーションやAIの普及などにより、広告戦略は高度化、複雑化している。一方で、戦略フェーズで綿密に定めた「誰に・いつ・どこで・何を訴求するか」を実行のエグゼキューションフェーズで思うように再現できないという矛盾も浮き彫りになっている。なぜ、戦略と実行の間に乖離が生まれるのか。日経クロストレンド発行人 勝俣哲生が、株式会社博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長 飯塚隆博氏とともに、博報堂DYグループが提唱する広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS」と、その新たな一手「AaaS Demand Platform」の狙いを語り合う。

なぜ今、戦略が実行フェーズで再現しにくいのか なぜ今、戦略が実行フェーズで
再現しにくいのか

勝俣 ここ数年、広告戦略の設計自体はかなり高度になっていますよね。一方で、現場からは「思った通りに配信されていない」という声もよく聞きます。このズレは、どこからきていると見ていますか。

飯塚 その違和感は多くのマーケッターが感じていると思います。データが増え、戦略やターゲットを精緻に描けるようになった一方で、生活者の行動はより複雑化し、それに伴ってマーケティング戦略やメディア戦略も高度になっています。KPIやペルソナも多層化し、戦略設計の精度は確実に上がったものの、実行段階でその戦略を同じ精度で再現することが難しくなってきました。

株式会社博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長 飯塚 隆博 氏

勝俣 なぜ、実行フェーズで再現しにくくなっているのでしょうか。

飯塚 媒体やプラットフォームが高度化するほど、運用が「個別最適の集合体」になりやすいからです。DSPやプラットフォームの多機能化によって精緻な戦略設計や高度なターゲティングが可能になった一方で、設定項目や選択肢が増え、戦略を現場の配信設定に正確に落とし込むことが難しくなっています。戦略としては「誰に、いつ、どういう文脈で伝えるか」をいくら精緻に描けたとしても、それを複数媒体にまたがって、現場のエグゼキューションにどこまで忠実に再現できるか。この「戦略の再現性」が現在の広告運用においてきわめて重要な鍵を握っています。

戦略の高度化/媒体の多様化による
運用の複雑化

広告を「枠」から「効果」へ―AaaSが目指してきたもの 広告を「枠」から「効果」へ
AaaSが目指してきたもの

勝俣 そうした課題意識の中で、博報堂さんは2020年からAaaSを展開してきました。改めてAaaSは何を変えようとしてきたビジネスモデルなのでしょうか。

飯塚 AaaSは、メディア投資効果の最適化を通して広告主の事業成長に貢献するビジネスモデルです。出発点はシンプルで、広告主が求めているのは、広告の「枠」ではなく、その先の「効果」です。さらに以前からテレビは視聴率、デジタルはインプレッションやCVと評価指標が分断されていることも課題でした。広告投資が事業成果にどうつながっているかを同じ指標で説明できない状況が続いていたため、AaaSは、テレビとデジタルを横断して効果を捉え、広告の設計そのものを見直す仕組みとして立ち上げました。

現在は550社以上に導入いただき、広告主ごとのKPIに合わせたカスタマイズと、汎用的な機能をスピーディに使いたいニーズの両方に応える形で進化してきました。

AaaSの4つのコンセプト

勝俣 AaaSは立ち上げから5年経っていますが、様々なソリューションがあり、かなり進化していますよね。

飯塚 はい。現在は、マーケティングレイヤーで投資配分を最適化するAnalytics AaaS、テレビとデジタルを横断してKPIを最適化するTele-Digi AaaS 、テレビとデジタルの各メディア単位で最適化を行うTV AaaS、Digital AaaSという4つの主要ソリューションを軸に展開しています。それに加えて、マーケティング環境の変化に合わせて、対応KPIの拡充に加え、DoubleVerify、The Trade Desk など、プラットフォーマーや各領域で強みを持つパートナーと連携し、機能拡張を進めています。

4つの主要ソリューション

戦略と実行をシームレスにつなぐ ―AaaS Demand Platformというアプローチ 戦略と実行をシームレスにつなぐ
AaaS Demand Platformというアプローチ

勝俣 そこで、AaaS Demand Platform(ADP)という構想ですね。

飯塚 はい。ADPは、広告戦略を媒体横断で再現し、広告配信を最適化・実行するためのプラットフォームです。これまでは、戦略を設計・構築したあと、人がそれぞれの媒体に合わせて翻訳し、配信設定へと落とし込んでいました。

ADPでは、博報堂DYグループが長年蓄積してきた独自の生活者データや、総合広告会社として戦略設計からメディアバイイングまでを一気通貫で担ってきた知見をAIに学習させ、媒体ごとに異なる膨大な変数や分散するデータを横断的に統合・解析します。

戦略ターゲットや予算をインプットすれば、各DSPやプラットフォームを横断して最適な形で配信設定へと反映され、描いた戦略がシームレスに実行へと反映されていきます。配信結果は継続的に分析・学習され、その知見が次の打ち手へと還元される。高度なPDCAを通じて、広告投資を単発の施策ではなく、事業成長につながる意思決定として捉え直すことが可能になります。

CP中、CP後の最適化を通して
高度なPDCAを実現

将来的にはTVも含めたオールメディアと接続していくという構想を持っていますが、まずは第一弾としてデジタル動画メディア領域に対応する機能をリリースしました。具体的には、AaaSで分析・設計したターゲットのペルソナが、それぞれのDSPやプラットフォームではどのアフィニティやターゲティング設定に相当するのかをAIが自動的に変換・推奨します。緻密に描いたペルソナをそのまま各メディアに最適な形で配信設定へ反映できるため、戦略ターゲットへの合致度が高い配信を媒体横断で実現できます。

まずはこの部分から進化させることで、戦略と実行の間に生じていたズレを最小化し、描いた戦略をより忠実に再現できる状態をつくっていきたいと考えています。

AIがペルソナから
各媒体の最適なターゲティング設計を提示

戦略を「描いて終わり」にしない広告配信・運用へ 戦略を「描いて終わり」にしない
広告配信・運用へ

勝俣 ADPが入ることで、広告配信・運用はどう変わりますか。

飯塚 いちばん大きいのは、スピードと再現性の質が変わることだと思います。これまでは、戦略を描いても、各媒体への落とし込みに時間がかかり、その間に環境が変わってしまうことも少なくありませんでした。ADPでは、描いた戦略がシームレスに実行へ反映され、配信結果もすぐに返ってきます。そのため、戦略を立てて終わりではなく、キャンペーン中に走りながら検証し、改善し、戦略そのものを進化させていける。単にPDCAを速く回すというよりも、同じ戦略を、より早く、より正確に再現できるようになることが大きな変化です。

勝俣 ADPは、今後どこまで広げていく構想なんでしょうか。

飯塚 先ほど述べた通り、デジタル動画メディアへの対応から始め、将来的にはテレビを含めたオールメディアへの展開を考えています。生活者にとってはメディアの違いは関係ありません。同じ生活者体験の中でどう接点を設計するか。そこを一つの戦略として扱える状態をつくりたいと考えています。

勝俣 機能面では、どんな領域を強化していく予定ですか。

飯塚 ブランドセーフティやアテンションといった領域は、かなり重要になってくると見ています。単に配信量やクリックだけではなく、広告がどの文脈で、どう受け取られたのか。広告配信の「質」まで評価できなければ、本当の意味での最適化にはなりません。各領域で強みを持つパートナーと連携しながら、ADPの中に組み込むことで、投資対効果の向上につなげていきたいと考えています。

戦略と実行をつなぐ循環を当たり前にする 戦略と実行をつなぐ循環を
当たり前にする

勝俣 AaaS、そしてADPを通じて、これからの広告配信・運用はどう変わっていくと考えていますか。

飯塚 戦略(プランニング)と実行(バイイング)が分断されない世界に近づいていくと思います。描いた戦略がそのまま実行され、結果を見てまた次を考える。高度なPDCAを当たり前に回せる状態をつくりたい。広告は、再現できて初めて戦略になります。ADPは、その前提を支える基盤です。

日経BP トレンドメディアユニット長 日経トレンディ・日経クロストレンド発行人 勝俣 哲生

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飯塚 隆博

株式会社博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長

1995年博報堂入社。初任はテレビスポット。その後13年メディアプラニングとプロデュースに携わり、約200社のクライアントのメディア・コン テンツ業務に関わる。その後、テレビスポットと動画を6年、さらにデー タソリューションの開発/実装を4年経験し、2021年度から博報堂DYグ ループのメディアDXソリューションであるAaaSの導入推進を担当。

飯塚 隆博氏

勝俣 哲生

株式会社 日経BP トレンドメディアユニット長
日経トレンディ・日経クロストレンド発行人

人材サービス企業を経て2005年に日経BPに入社。『日経トレンディ』記者として、食品・飲料、日用品、小売り業界などを担当。年末の恒例企画「ヒット予測」特集を10年に渡り手がける。2016年に日経トレンディ副編集長、2018年から日経クロストレンド副編集長。2023年4月に日経クロストレンド編集長。2025年4月から現職。媒体事業の統括を行っている。

勝俣 哲生