キリンの「本麒麟」、次なる挑戦
発泡酒として破格のヒットを続ける「本麒麟」が、2026年11月、いよいよビールへと生まれ変わる。ゲームチェンジャーが挑む次のステージとはどんなものなのか。8年間にわたり「うまさ」を追い求めてきた歴史をひもときながら、妥協を許さないブランドの本気を探る。
2018年の発売以来、累計44億本※という驚異的な成長を遂げてきた「本麒麟」。わずか8年間で、名実ともにキリンを代表する主力ブランドとなった。※2018年3月~2026年4月の販売数量 350ml換算
実は「本麒麟」は、発売当初からビール化を見据えていた製品だ。本麒麟発売の2年前である2016年に、2026年10月に酒税が一本化されることが発表された。これによって、発泡酒が持っていた、酒税の観点での「安さ」というメリットはいずれ失われる。これを前提として、将来的にビール化することも見据え、ビールを感じさせる「うまさ」を中心価値として、2018年に本麒麟が発売されたのだ。

赤い缶に聖獣麒麟があしらわれた
本麒麟のパッケージ
発売時の経営トップによる「新ジャンルというカテゴリーを飛び越えて徹底的においしいものを造ろう、ビールに近い味の品質感のあるものを造ろう、という思いからできたのが『本麒麟』」(当時の布施孝之社長)との発言にも、その意思が表れている。
「本当はうまいビールを手軽に飲みたい」というユーザーの本音に応えるために、100年以上培ってきたこだわりと技術を注ぎ込んだ。手ごろな価格でユーザーの身近にあるからこそ、良いものを造りたい。「うまくなることなら、ぜんぶやる」という意気込みのもと、毎年リニューアルを繰り返して製品を進化させてきた。
発売翌年の2019年にはドイツ産ヘルスブルッカーホップを増量し、ビールに近いコクを向上。2022年には「本麒麟」で初となるデコクション製法(2つの仕込み窯を用いてそれぞれ異なる温度でじっくり煮込む製法)を採用して、麦のコクとまろやかな味わいをさらに引き出した。最新の現行品は、アルコール由来の雑味を低減しつつ、大麦を増量することで力強いコクを担保。「ブランド史上最高のうまさへ」を掲げる自信作としている。
| 年次 | 主なリニューアル内容 (中味・パッケージ) |
|---|---|
| 2019年 | ドイツ産ヘルスブルッカーホップを増量。ビールに近い力強いコクを向上させた。 |
| 2020年 | 仕込過程で新技術を採用し、さらなるコクを付与。パッケージの「聖獣麒麟」のデザインをより本格的なものへ変更。 |
| 2021年 | ドイツ産ヘルスブルッカーホップをさらに増量。高いビール品質を期待させるデザインへ進化。 |
| 2022年 | 本麒麟初となる「デコクション製法」(2つの釜でじっくり煮込む製法)を採用。麦のコクとまろやかさがさらに引き出された。 |
| 2023年 | 飲みごたえを強化しつつ、原料比率を調整し、飲み飽きないうまさを向上。赤色のパッケージをより鮮やかなトーンに調整。 |
| 2024年 | 大麦を増量し、大麦由来の「飲みごたえ」を向上。麦のうまみがしっかり感じられながら、雑味が少なく飲み飽きない味わいを実現。 |
| 2025年 | 「ブランド史上最高のうまさへ」を掲げ、力強いコク・飲みごたえを維持しながら、原料配合や仕込み、発酵工程を適正化することで、アルコール由来の雑味を軽減。パッケージの金の色味が明るくなり、より上質な印象へ。 |
発売以来、国際コンテストで11回もの受賞を勝ち取り、客観的な味の評価にこだわっているのも特徴だ。世界五大ビール審査会の一つに数えられる「インターナショナル・ビアカップ」では2018年に金賞、2024年に銀賞を獲得。2025年には「ベルリン・インターナショナル・ビア・コンペティション」「ロンドン・ビア・コンペティション」「モンドセレクション」の金賞をはじめ、「国際味覚審査機構(ITI)」で二つ星を、「ジャパン・グレートビア・アワーズ」で銀賞を受賞した。これらの結果は、たゆまぬ「味のこだわり」が世界で認められた証と言えよう。

| 年次 | コンテスト名 | 年 | 賞 |
|---|---|---|---|
| 1 | インターナショナル・ビアカップ | 2018 | 金賞 |
| 2 | インターナショナル・ビアカップ | 2024 | 銀賞 |
| 3 | ジャパン・グレートビア・アワーズ | 2025 | 銀賞 |
| 4 | ベルリン・インターナショナル・ビア・コンペティション | 2020 | 金賞 |
| 5 | ベルリン・インターナショナル・ビア・コンペティション | 2025 | 金賞 |
| 6 | メルボルン・インターナショナル・ビア・コンペティション | 2019 | 金賞 |
| 7 | ロンドン・ビア・コンペティション | 2025 | 金賞 |
| 8 | モンドセレクション | 2019 | 金賞 |
| 9 | モンドセレクション | 2025 | 金賞 |
| 10 | 国際味覚審査機構(ITI) | 2025 | 二つ星 |
| 11 | ジャパン・フード・セレクション | 2020 | 金賞 |
そして今、「本麒麟」は、製品名にもパッケージにも社名である「麒麟」を掲げ、「本物のうまさ」を意味する「本」を冠したキリンの正統派ブランドとして、麦100%の生ビールへと新たな挑戦を始める。
2026年5月27日、キリンビールは2026年下期ビール成長戦略発表会を開催した。発表会では、「本麒麟」のビール製法化リニューアルについて説明。キリン伝統の製法・原料を継続しながら、ビールとしてのうまさを向上させるという。具体的には、麦100%処方へ変更することで、麦本来のうまみがありながら、飲み飽きない味わいを実現。直感的なうまさが伝わる「生ビール」製法を採用する。さらに、デイリービールとしての飲みやすさを追求して、アルコール度数を5%に変更するという。
本格ビールへの階段を駆け上がってきた「本麒麟」が、この秋以降、技術開発力、ブランド力を駆使してどんな戦いを見せるのか。ビール業界に詳しい元・日経トレンディ編集長の能勢剛氏は次のように推測する。「この秋の酒税一本化で、ビール市場には非常に大きな変化が予想されます。新ジャンルなどでカテゴリー分けされていたものが、いわば全部が同じステージ上で戦うことになる。独自の個性を打ち出したり、高級路線で差別化を図る製品が多くなる一方で、どの製品がビール市場の主軸の地位を勝ち取るかの争いも激しくなるでしょう。ビールを進化させ続ける技術開発力、メーカーのシンボルを全面に打ち出したブランド力の両方を磨いてきた『本麒麟』は、まさにそこを目指しているように思います」
「本麒麟」のビール化は、日経トレンディの下半期ブレイク予測に選出された。酒税一本化を見越した戦略的な商品である「本麒麟」に対して、マーケットの期待が高まっている。
「うまさ」の追求、ブランド価値の向上といった正攻法の助走期間を経て、今まさに本番のステージに立とうとしている「本麒麟」。これからどんな挑戦や進化を見せてくれるのか、この秋、キリンの本気が楽しみだ。
