新商品やリニューアル商品を、トレンドのスペシャリストである日経クロストレンド発行人や元編集長たちが徹底分析する本企画。今回も時代のニーズを映す6つの注目商品が出揃った。ヒットを生む条件とは何か。各社の挑戦とトレンドの兆しを読み解く。
日本の夏に必須の冷感インナー
コスパと機能性がさらに進化
勝俣 本日は注目の6商品を取り上げ、特徴やポイントを探っていきたいと思います。まずは、しまむらのCLOSSHI PREMIUM 「超COOL」インナーから。実際に生地を触ってみていかがですか。
能勢 確かにひんやりしますね。触れているだけでも涼しく感じます。
品田 冷たくて気持ちいいですね。今年の夏も酷暑が予想されるので、こうしたアイテムはますます手放せなくなりそうです。
勝俣 昨年もよく売れたそうですが、中身は変わっているんですよね。
品田 そうなんです。昨年はナイロンとポリウレタンの構成でしたが、今年はポリエステルを追加。しかも一般的なものではなく、異形断面のポリエステルを使うことで、より機能性を高めています。
能勢 内側がナイロンで接触冷感、外側はポリエステルで放熱機能があり、気化冷却も期待できる。素材の編み方でその役割を分けているんですよね。
品田 プレーティング(添え糸編み)っていう技術を使っているようです。これによって放熱機能が高まり、内側に熱がこもったり、ムレたりすることなく、より涼しく過ごせるインナーに進化しています。
勝俣 なるほど。着ている間の快適さも重視しているわけですね。この商品は今年も伸びると思いますか。
能勢 冷感インナーは特別なものではなくて、もう当たり前に使う必需品になってきた感がありますよね。
品田 だからこそ、毎日使える価格であることが重要になる。その点でこの商品はかなり強いと思います。
勝俣 男性・女性用とも、979円(税込)ですからね。さらに今年から展開されている子ども用は、2枚で1089円(税込)と割安です。
品田 その安さもさることながら、やはり注目したいのは、これがしまむら発であるということ。“しまラー”と呼ばれるファン層の影響力は大きく、SNSなどを通じて、これまであまり接点のなかった男性層にも広がっていく可能性があります。
勝俣 家族の分もまとめて買う、という流れも期待できますね。「#しまパト」のような文化もありますし、店頭で見つけやすいパッケージも後押ししてくれそうです。
品田 暑さと物価高が進む中、「超COOL」インナーの機能性とコストパフォーマンスの高さは、十分に選ばれる理由になると思います。
満足感あるおいしさと機能性
食をより楽しむアレンジも
勝俣 次に紹介するのは、農心ジャパンの「辛ラーメン トゥーンバ」。ピリ辛クリームパスタ風という新しい切り口で、日経トレンディ2025年ヒット商品ランキングで18位にランクインしています。
能勢 カップタイプは、電子レンジ調理にも対応しているんですよね。
勝俣 もちろん熱湯だけでも作れますが、違いが気になりますよね。まずは食べ比べてみましょうか。
品田 まずは熱湯調理の方から。もちもちの麺に、“SPICY&CREAMY”な味わいは、定番の辛ラーメンとはまた違うおいしさです。
勝俣 レンジ調理の方は、見た目からして違いますね。麺がふっくらとして、ソースもよく絡んでいます。
品田 口に含んだときのもちもち感も格段に上がっています。
能勢 全然違いますね。熱湯調理はカップ麺の延長という印象ですが、レンジ調理の方は、料理に近い仕上がりになっていると思います。クリーミーでカルボナーラのような満足感がありますし、麺の量も多いので一食としてきちんと成立します。
品田 カロリーも489kcalと決して低くないですが、それとは別の価値観ですよね。おいしく刺激的なものをしっかり食べたいという欲望に応えてくれる。袋タイプもあるので、チーズやベーコン、マッシュルームなどを加えてアレンジする楽しみもありそうです。
勝俣 まさに、そうした発想から生まれたのがこの商品なんです。韓国では「辛ラーメン」をカスタマイズして食べる文化があって、「トゥーンバ」も消費者の間で人気のレシピを商品化したものだそうです。
品田 SNSを通じてファンがアレンジを発信し、それが商品として広がるスピード感もすごいですよね。ファンのつくり方やつながり方など、学ぶことが多いと感じます。
勝俣 企業側が消費者の楽しみ方に寄り添ってくれると、また買いたくなりますよね。実は日本でも話題となり、かなり売れているようです。
能勢 韓国発のグルメが若年層に浸透する流れが数年続いていますよね。
品田 とりあえず韓国で流行しているものには飛びつく層が一定数いるんですよ。でもおいしくなければ続かない。生き残った商品には、それだけ価値があるということです。今年40周年を迎えた「辛ラーメン」はその典型といえるでしょう。
勝俣 続いては、森永乳業の「ビヒダスヨーグルト Wのビフィズス菌」。おなかの脂肪と腸内環境をWでケアする機能性表示食品です。
能勢 ビフィズス菌ってよく誤解されてますけど、乳酸菌とは全然違う菌です。乳酸菌はほぼ全てのヨーグルトに入っていますが、ビフィズス菌が入っているのは2割程度。大腸まで届いて腸内環境に作用してくれるビフィズス菌もあります。今回は2種類入っていて、より効果が期待できる設計になっています。
勝俣 しかも、150億個のビフィズス菌が配合されているそうです※1。
能勢 ビフィズス菌BB536とビフィズス菌MCC1274という種類の菌ですね。これらの働きで腸内環境を整え、脂肪の代謝にも影響するという考え方で、今の健康ニーズとかなり合っていると思います。
品田 ビヒダスのプレーンヨーグルトを食べるのが日課なので、ビフィズス菌が2種類になったことでどう変わるのか、すごく気になります。
勝俣 実際に食べてみましょうか。
能勢 味はよく馴染んだ、いつものビヒダスという感じですね。
品田 でも逆にそれがいい。日常的に食べるものって、こういう安心感のあるおいしさが大事ですから。
能勢 慣れ親しんだ味に機能性がプラスされることが、一番ありがたい。
勝俣 続けやすさという意味でも重要ですね。この商品は400gの大容量タイプなので、習慣的に取り入れるにはちょうどいいサイズです。
能勢 個食タイプが100g前後なのに対して、これは4回分で356円(税込)とコスパもいい。その日の気分に合わせて、はちみつやジャム、ナッツを加えたりと、毎回自由にアレンジできるのも魅力です。
勝俣 大容量ヨーグルトを購入する層の高齢化が進む中で、今回の商品は30〜40代女性の取り込みも意識しているようです。
品田 確かに、パッケージも従来品に比べると少しやわらかい印象で、女性にも手に取りやすそうですね。
能勢 機能性をことさら強調せず、見慣れたビヒダスの延長線上にありながら、品質感ややさしさを感じるデザインになっています。
勝俣 腸内環境を整えることと、おなかの脂肪にアプローチすること。この2大健康ニーズに大容量で応える本商品は、毎日続けたい人にこそぴったりの選択肢といえそうです。
※1 機能性関与成分:ビフィズス菌BB536 100億個、ビフィズス菌MCC1274 50億個 一日あたりの摂取目安量(100g)当たり
ビール類とRTDの進化に見る
アルコール市場の新潮流
勝俣 では、酒類・飲料カテゴリーにいきましょうか。こちらはアサヒビールの新商品、「アサヒスタイルフリートリプルゼロ」です。従来の同スペックのアサヒビールゼロゼロ系ビール類と飲み比べてみて、いかがですか。
品田 従来品もおいしいけれど、比較すると明らかに違いますね。より自然なビールに近い味わいを感じます。
勝俣 同じアルコール度数なのに、ビールに近い本格的な飲みごたえですね。
能勢 ゼロゼロ系ビール類でありがちな味の違和感もなく、おいしいです。
品田 プリン体ゼロ※3、糖質ゼロ※4と来て、今度は甘味料ゼロ※5。それで「トリプルゼロ」というわけですが、ゼロっていつからこんなに喜ばれる数字になったんでしょうね。
勝俣 引き算はマイナスではなくて身体への気づかいという認識が広がってきたからでしょう。日経トレンディでも、過去に「ダブルゼロの次はトリプルゼロだ」と予測したことがありました。
品田 ゼロが増えて、さらにおいしくなった。その理由は、ビールと同じ発酵・醸造工程で造っているからなんです。しかも、麦芽使用量は従来品の5倍と大幅に増えています。
能勢 麦芽使用量を増やせば味わいは豊かになりますが、その条件下で3つのゼロの同時実現は、高い技術精度が求められたはずです。
品田 それこそ開発工程もゼロベースに戻して、大きな壁を乗り越えたっていうことですよね。凄まじい意気込みを感じます。
勝俣 健康志向が高まる中、こうしたゼロゼロ系商品の市場をどう見ていますか。
品田 ゼロであっても、味がよくなければ続かないし、広まらない。やはりおいしさで選ばれる商品が市場を形成していくんだと思います。
勝俣 一方で、ブランドスイッチが起きにくいのもこの市場の特徴です。
能勢 トライアル後に習慣化してもらうためにも、最初の一口で納得できるおいしさが肝となるでしょう。その点で、この商品には説得力がある。ビールに近い本格的な味わいを求める層にも、十分響くと思います。
品田 ゼロが3つ並んだパッケージも、シンプルで分かりやすい。店頭でも手に取りたくなるし、試してみておいしければ、飲み続ける理由にもなります。健康志向の人はもちろん、ビール好きの方にも、ぜひ一度体験してもらいたいですね。
勝俣 続いては、サントリーの「−196[イチキューロク]」。今年20周年を迎えた、RTDのロングセラーブランドです。
能勢 私もしょっちゅう飲んでいるので、今回の商品は楽しみです。
勝俣 その1つが、「−196無糖〈ダブルレモン〉」です。こちらはアルコール度数7%のタイプですね。
品田 レモン感が圧倒的ですね。ダブルレモンというだけあって、しっかり果実感がありますし、無糖ですっきりなおいしさも引き立っています。
勝俣 もう1つが、アルコール度数5%の「−196〈レモン〉」です。
能勢 缶を開けたときに、レモンの香りが、ふわっと立ち上がってきますね。飲み口もやわらかくて、果実感がより前に出ている印象です。
勝俣 同じレモンチューハイでも、気分やシーンに合わせて飲み分けられるのはいいですね。
能勢 「−196」は、フレーバーの種類が豊富なだけでなく、度数のバリエーションも増やしながら若い層にも浸透してきたブランドです。今回も5%と7%で間口を広げているのは戦略的ですね。
品田 「−196」って名前のインパクトもあって記憶に残りやすい。これは製法から来ているんですよね。
能勢 そうです。−196℃で果物を瞬間凍結してパウダー状にし、それをお酒に漬け込むという独自製法から命名されています。果実を丸ごと凍結しているので、皮まで含めた果実感を楽しめるのが特長です。
勝俣 その製法自体も画期的だし、それが20年経った今もブランドの強みとなっているわけですね。
品田 強みの果実感とすっきりした味わいは、ビール好きな人とも親和性が高い。RTDの枠を超えて人気が広がる可能性もありますね。
勝俣 日本だけでなく、オーストラリアを中心に、アメリカ、カナダなどでもかなり売れているようです。
能勢 2018年には、「世界最大のスピリットベースRTD飲料(最新年間販売数量)」として、ギネス世界記録に認定されたこともあるみたいですね。
品田 世界売上1位はすごいですね。
勝俣 海外にRTDを広めたという意味でも、功績は大きいですよね。今日は2種類のレモンを試しましたが、他にも無糖〈クリア〉や無糖〈アセロラダブル〉など多彩なラインアップがあるので、飲み比べてみるのも楽しそうです。
ポーション飲料で広がる
気軽で新しいカフェ体験
勝俣 最後は、味の素AGFの「ブレンディ(R)」ポーションです。全部で7フレーバーありますが、今日は「濃縮コーヒー無糖」を水、そしてミルクで割ったものをそれぞれ飲んでみましょう。
品田 水で割っても、しっかりコーヒーのコクがあっておいしいですね。
勝俣 ミルクで割ると、濃厚なカフェオレ感が楽しめます。ボトルコーヒーに牛乳を入れてもこうはならない。濃縮ならではの味わいです。
能勢 むしろ、レギュラーコーヒーに近いおいしさだと思います。
品田 味に奥行きがありますよね。
勝俣 年々夏が暑く、長くなっている中、ポーション市場は順調に伸びています。なかでもこの「ブレンディ(R)」ポーションは、25年4月~26年3月期で前年同期比約160%※6と市場を牽引する存在です。
能勢 この手軽さとおいしさなら、売れるのも納得です。冷たい飲み物って、自分で作ろうとすると手間がかかるんですよ。まず熱いコーヒーを淹れてから、氷で冷やしたり。
勝俣 氷で薄まる分も計算しながら、調整する必要もありますしね。
能勢 その点、水さえあればすぐ作れる手軽さはいい。しかも個包装なので、これ1つ持ち歩けば、いつでもどこでもおいしいドリンクを気軽に楽しめます。
勝俣 バリエーションも豊富だから、仕事中やランチタイムなど、気分で飲み分けられるのもいいですね。
能勢 私は全種類制覇していますが、すべてに共通するのが、自然で控えめな甘さ。苺オレや抹茶オレも甘すぎず、大人向けの味わいです。
品田 カロリーも低いので、わが家でもゴクゴク飲んでいます。個人的にはフルーツティー推しです。
能勢 うちでは、キャラメルカフェオレが人気ですね。私自身は、抹茶オレのダブル使いが気に入っています。濃茶みたいでおいしいんですよ。
品田 今は個食化が進んで、同じ家庭でも好みが分かれている。そうした中で、1杯ずつ手軽に作れ、アレンジも楽しめるポーションは、すごく時代に合っていると思います。
能勢 アレンジの自由度は高いですよね。割るだけでなく、アイスにそのままかけたりと、多彩な楽しみ方ができるのもポーションの魅力です。
勝俣 機能や手軽さに加え、自分なりの楽しみを広げられること。今回の6選に共通するこの価値は、今後のヒットを占う鍵となりそうですね。
※2 ゼロゼロは、プリン体ゼロ・糖質ゼロのことであり表示基準は※3・※4を参照
※3 100ml当たりプリン体0.5mg未満を「プリン体ゼロ」と表示
※4 食品表示基準による
※5 原材料には糖類を使用
※6 インテージSRI+/推計販売金額
座談会を終えて…
元・日経トレンディ編集長 能勢 剛
今回は、日常的に使う商品に新しい価値をどう組み込むかという工夫が際立っていました。健康性を高めると味や価格とのトレードオフが生じがちですが、それを全く感じさせず、日常使いできる形に仕上げている。各社の企画力と企業努力の積み重ねがうかがえます。
日経BP 総合研究所 客員研究員 品田 英雄
成熟した市場において、さらに新しい価値を追求していく商品が目立ちました。そうした中で新奇性を打ち出すのは簡単ではなく、企業の意気込みや実力がより問われます。そのハードルを乗り越えて生まれた今回のラインアップには、引き続き注目していきたいです。
日経クロストレンド発行人 勝俣 哲生
消費者の安心志向が強まる中で、ロングセラーブランドに新たな価値を加えた商品が選ばれやすくなっています。奇抜さよりも、日常の中で無理なく続けられること。その延長線上で、新しい価値やおいしさを高めていく動きは、今後より鮮明になっていくでしょう。