


国内はもとより、世界のRTD市場の拡大が止まらない。
サントリーも『-196(イチキュ-ロク)』ブランドを主軸にグローバル戦略を展開中。
成果は上々で、今や『-196』は世界12の国と地域で親しまれている。
その快進撃、海外で受け入れられる要因とは何なのか。
元財務官僚で、長く日本テレビ系列「NEWS ZERO」のメーンキャスターを務めた
関西学院大学教授の村尾信尚氏に聞いた。

村尾 信尚 氏
関西学院大学 教授/NEWS ZERO 元メーンキャスター
1955年岐阜県生まれ。78年一橋大学経済学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。外務省在ニューヨーク日本国総領事館副領事、三重県総務部長、大蔵省主計局主計官、財務省理財局国債課長などを経て、2002年退官。03年10月より関西学院大学教授。06年10月~18年9月「NEWS ZERO」(日本テレビ系列)メーンキャスターを務める。豊富な経験を踏まえ、幅広いネットワークを形成しながら、政策提言・教育研究・情報発信を行う。

栓を開けたらすぐに飲める手軽さで、今やすっかり市民権を得たRTD(Ready To Drink)。低糖質、低カロリーを求める健康志向、コロナ禍における家飲み需要といった追い風もあり、RTDの国内市場は伸長を続けてきた。
各社が熾烈(しれつ)なシェア争いを繰り広げるなか、サントリーは『-196』ブランドを中心としながら国内市場をけん引している。2005年に発売を開始した『-196』はブランド生誕20周年となる25年に約3400万ケース※を出荷し、過去最高売り上げを達成した。※1ケース8.4L(350ml×24本)換算

国内市場で得た自信と知見を生かし、サントリーはグローバル市場にも積極的に打って出ている。なにしろ、RTDのグローバル市場は30年に20年比で約2倍の約500億ドルに拡大する見込み。この巨大な市場を制することは、企業の成長戦略に欠かせない命題なのだ。
世界戦略においても、サントリーの顔となるのは『-196』。21年にはオーストラリアでいち早く販売を開始してトップシェアを獲得。アメリカでは25年の対前年売り上げが約3倍。カナダでは25年2月に販売開始したところ、新商品ランキング1位に輝いた。

各国エリアに応じたマーケティングを展開。
缶にはあえて日本語も使用している

「圧倒的な果実の爽快感には驚かされました」
これが、チューハイ自体ほぼ未体験だったという村尾氏の、『-196』を飲んだ際の第一印象。
「お酒といえばビールと日本酒が中心で、なんとなく若者の飲み物という思い込みもあって、手に取らなかったんです。今回飲んでみて後悔しました。どうして、もっと早く飲まなかったんだろうって。果実のもつうまみと香りが凝縮されていて、非常に爽やかな気分になる。私は特にシャインマスカットが気に入りました。これ、スポーツ観戦のときに青空の下で飲んだら最高でしょうね」

お酒好きながらも、『-196』未体験だった村尾氏の言葉だからこそ説得力がある。同じく初めて『-196』を口にする外国人に近い条件での感想が得られた。飲んだ瞬間に、飲酒シーンが想起できるほどの個性があるのは、商品としてこれ以上ない強みだ。
「それから、食事の邪魔をしないところがいいですね。すっきりした味わいでしょ。邪魔をしないどころか、食事の味を最大限に引き立ててくれる。助演男優賞をあげたいくらいの名脇役を演じてくれますよね。海外では昼でもお酒をよく飲みます。アルコール度数も低めだし、ランチシーンにもマッチするんじゃないでしょうか」

シンプルな商品名がもたらす普遍性も、外国人に大いにアピールできるポイントだと村尾氏は言う。
「誰もが理解できるアラビア数字が商品名というのはもちろんなのですが、そこにちゃんと意味があるのがいい。果実をまるごと液体窒素で凍結して砕いた状態でお酒に浸漬させているから、果実だけでなく果皮に含まれる成分も余すことなく引き出せる。その液体窒素の沸点が-196℃で、そこから名付けたというストーリーとか、きちんとした科学的根拠があるというのは、食品に安心や安全を強く求める外国人にも響くはず」
果汁だけでなく、果皮にこそ「香り」「うまみ」など“おいしい成分”が詰まっているというのが開発の出発点。厳選した果実をまるごと-196℃で瞬間凍結し、それをパウダー状に粉砕。香りなどの成分までそのままお酒に浸漬させるため、果実味を余すことなく引き出せる。このサントリー独自の製法により、一口目から圧倒的な果実味を感じ、後味はあくまでもすっきりという、果汁だけを使ったチューハイでは難しい味わいを実現した。
安心、安全は、声高に叫ぶだけでは消費者には届かない。そこで必要なのは信頼。その点、サントリーならではの伝統が強みになる。
「世界的に認知されているメード・イン・ジャパンというのも、新しい商品を海外で展開するのに追い風になりますよね。細部にまでこだわり、妥協を許さない日本人がつくる商品なら間違いないと、すでに多くの人が認識しています。『-196』も、居酒屋で自分で生レモンを絞ってつくるレモンサワーのうれしさをご家庭でも楽しんでいただきたいという思いからスタートしたんですよね? それを再現する製法を見つけ出すなんて、いかにも日本人らしいエピソードだと思います。120年超の歴史があるサントリーという企業が、そこまで努力していると知ってもらえれば、さらに海外の方の興味を引けるのではないでしょうか」

最後に、村尾氏は『-196』の大きな可能性にも言及してくれた。『-196』はRTDを世界に広めるアンバサダーになれる存在だと。
「現在、世界は深刻な分断に悩まされています。政治的、軍事的な対立によって、国際協調は非常に困難な状況です。ただ、それでも例えば日本のアニメや韓国のKポップは、国境や人種を超えて世界中の人が同じものを楽しんでいますよね。政治家の演説よりも、エンターテインメントのほうがよほど世界をひとつにする力がある。私は、食文化にも同じような力があると思っています。世界中の人が『-196』を飲んでおいしいと思う。同じ価値観を共有する。大げさでなく、これは民間外交だと思いますよ。ぜひ、『-196』には分断された世界の架け橋のような存在になってほしいですね」

