建築サミット2018 レビュー

(エービーシー商会) 進化するエキスパンションジョイントカバー 省エネ対応型断熱仕様と、静粛な樹脂製床タイプ

エービーシー商会 アルウィトラ・シーリング販売推進部 技術支援課 課長 力丸 真也 氏

断熱性や気密性の向上、段差の解消。エービーシー商会の「アーキパンション 断熱仕様」、樹脂製Exp.J.C.「アーキウェイブ」は、現代の建築空間が求める性能を確保し、建築設計に新たな可能性をもたらす製品だ。従来製品との違いや具体的な性能について、同社の力丸真也氏が解説する。

 エキスパンションジョイントカバー(Exp.J.C.)に求められる基本的な性能は追従性だ。建物の動きに対して追従し、構造体を損傷させないようにすることが最も重要で基本的な性能となる。床部分には耐荷重性が必要で、人や台車が通過しても強度上保持できることが求められる。このほか外部に取り付ける場合には、雨水の浸入を防ぐ止水性や、風によって脱落しない耐風圧性が欠かせない。耐火建築物では耐火性、外に音を漏らさない遮音性など、条件に応じた性能も必要になる。

 当社では、「こんな製品がほしい」という設計者のニーズにこたえ、時代の要請に即したExp.J.C.の製品を相次いで投入している。

厚さ10mmの断熱帯で寒冷地の外壁断熱性をクリア

 今日、必要とされながらも標準仕様として“あるようでなかった”性能がExp.J.C.の断熱性だ。高い断熱性は快適で健康な居住環境を生み出し、結露の発生を防ぐ。省エネや環境問題にも貢献する。省エネ基準への適応に際して必要な基本性能でもある。

 建物の断熱性を高めるには、断熱材によって隙間なく包み、窓やドアなどの開口部材に高性能の製品を用いる。ここで弱点となっていたのがExp.J.C.の設置部だ。従来のExp.J.C.は空気や熱を遮断しないので、いくら屋根や外壁、開口部まわりを断熱しても、Exp.J.C.の設置部から熱が逃げてしまう。

 これまでExp.J.C.の断熱性を高めようとする場合には、止水シートと耐火帯の間にグラスウールを充填することもあったが、この方法は追従性が低く、建物が動いた際に破損しやすい。一定の断熱性能を有する耐火帯で代替する方法も考えられるが、実現できる断熱性には限界がある。

 「アーキパンション 断熱仕様」は、こうした課題を解決する製品だ。高い断熱性を備えた特殊部材の「断熱帯」を設置。高い断熱性、特殊スライド機能による追従性を備え、既製のExp.J.C.にも取り付けられる。

 可動性を確保するため、断熱帯の厚さを10mmに抑えた。断熱性能試験の結果は、熱貫流率U値0.35W/㎡・K。これは、寒冷地(省エネ基準地域区分の1、2地域)で外壁に求められる断熱レベルに相当する。同等の断熱性を実現するには、グラスウール10Kで143mm、ポリスチレンフォームで106mm、硬質ウレタンフォームで74mmの厚さが必要になる。

 アーキパンション 断熱仕様を用いればExp.J.C.が熱橋となる状況を防ぐことができ、結露対策にも有効に働く。

「アーキパンション 断熱仕様」の断熱イメージ

シンプルな納まりで気密性の高い樹脂製Exp.J.C.

 当社では以前から樹脂製Exp.J.C.「アーキウェイブ」を手掛けている。同製品の第1の特長は、JMA KOBE、新潟中越地震(小千谷)、東北太平洋沖地震(日立)などの実地震波による振動台実験にもしなやかに対応できる可動性にある。現時点で落下事例はなく、先日の大阪北部地震でも被害を受けなかった。軽いので、万が一落下したとしても二次災害を防げる。

 納まりのシンプルさも特長だ。クリアランス部分を覆って設置する金属製Exp.J.C.の場合、150mmのクリアランスに対する見つけ寸法は270mm。仕上げ面からは25mmの厚みが出る。アーキウェイブは内外壁の仕上げ材の面内に設置するので、仕上げ面から飛び出さない。

 金属製の場合、外壁と庇が交錯する部位では庇の外周部沿いに設置する必要があるが、アーキウェイブでは庇に関係なく上下方向に直線状に貫ける。スリット状の外観になるので、木造建築物に設けても違和感がない。

 そのほか、「アーキウェイブ 気密仕様」では、サッシやドアに求められる気密性能で最も高いA-4等級を大幅に上回る性能を有する。弱点になりやすいコーナー部も工場で一体成形するため、建築物全体で高い気密性能を確保できる。高断熱仕様と組み合わせれば、高断熱・高気密の仕様が可能だ。

樹脂製のフラットで復元性に優れる床タイプが登場

 その樹脂製Exp.J.C.「アーキウェイブ」に新たにラインアップするのが床面に用いる床タイプだ。

 これまではアーキウェイブに床タイプはなく、内壁・天井に樹脂製を採用しても床では金属製にしなければならなかった。床にかかる大きな負荷に対する強度を確保しつつ、追従性を持たせるのが難しかったからだ。

 新製品の「アーキウェイブ 床タイプ」は、アルミ形材の金物下地と樹脂を組み合わせることで、これらの相反する要求性能を両立させることに成功した。クリアランス内に納まるのは従来のアーキウェイブと同様だ。

 大きな特長は、断面がフラットな納まりになることだ。金属製Exp.J.C.には段差が生じるため、台車やストレッチャーなどの重量物が通過する際には衝撃や金属音が生じる。アーキウェイブ 床タイプは床面が平滑なので、静かに通過できる。

 復元性の高さももう1つの特長だ。許容荷重以上の負荷を受けると塑性変形が起きる金属製Exp.J.C.では、地震によって生じる変形や破損が利用者のケガを誘発する恐れがある。これに対しアーキウェイブ 床タイプは樹脂製のため塑性変形を起こさずに復元するので危険性が低い。1,500Nの耐荷重試験や3,000Nを積載した台車荷重に対する試験を実施したところ、変形は認められなかった。

 可動性については、100mmのクリアランスに対しXYZの全方位で30mmの設計可動性を確保。実地震波を入力した振動実験でも、損傷せずに可動に追従することを確認した。

 意匠の面では、主張しないデザインが可能になる。金属製Exp.J.C.は壁と同様に見え幅が大きくなるが、アーキウェイブ 床タイプは見え幅が小さい。柔らかみを備えたモスブラックとトープグレイの2色を用意し、建築空間に調和したデザインを可能にしている。

 現代の建築は、多様な性能が求められる。条件に合わせたExp.J.C.の選択肢の提供により、建築設計の可能性が広がることを期待している。

●床用Exp.J.C.の納まり比較 ●「アーキウェイブ 床タイプ」のカラーバリエーション
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