日経 xTECH元年 特別トップインタビュー

アナログ・デバイセズ

アナログ技術で顧客や社会の難題を解決

アナログの両雄統合で
生まれたシナジーが
顧客価値の向上に貢献

アナログ・デバイセズ 代表取締役社長

馬渡 修

アナログ・デバイセズ 代表取締役

望月 靖志

アナログ半導体業界を代表するアナログ・デバイセズとリニアテクノロジーが経営統合を果たし、新生アナログ・デバイセズが誕生してから2年近くが経過した。統合によるシナジーはどのように現れているのか。現在は同社日本法人の二枚看板である、アナログ・デバイセズの日本法人を率いてきた馬渡修氏、旧リニアテクノロジーの日本法人を率いてきた望月靖志氏に話を聞いた。

2017年3月に、アナログ・デバイセズとリニアテクノロジーが経営統合され、新生アナログ・デバイセズが誕生しました。大手2社の統合ということで話題にもなりましたが、あれから2年近くが経った現在の状況を教えてください。

馬渡 アメリカの東海岸で1965年に創業したアナログ・デバイセズと、西海岸で1981年に創業したリニアテクノロジーは、それぞれアナログ半導体業界を牽引してきた歴史を持っています。従来アナログ・デバイセズはシグナルチェーンを構成するオペアンプやAD/DAコンバーターのほか、MEMSセンサーなどが強く、かたやリニアテクノロジーはDC/DCコンバーターなどの電源系に強みを持っていたため、両社が一緒になればいいビジネスができて、シナジーが得られるだろうということで統合が図られました。

 では実際にシナジーやメリットはどうかというと、期待以上に出ていると感じています。まず顕著なのは、製品ラインアップの拡充です。両社の製品は重なる分野がそれほどなかったこともあり、補完によってバランスがとても良くなり、業界でのシェアも向上しました。

 また、日本法人では社員の意識や仕事への取り組み方も変化してきました。リニアテクノロジーにはベンチャー的なスピード感があった一方で、アナログ・デバイセズにはコンセンサスを大切にしながら組織として動くところがありましたが、今はそれぞれのいいところが融合していると感じます。お客様に関しても、リニアテクノロジーは小口を含めて顧客数がとても多かった一方で、アナログ・デバイセズはキーカスタマーにフォーカスするスタイルでした。お互いに学ぶ点がたくさんあり、とても良い効果を生んでいると感じています。

望月 外部からはアナログ半導体の競合同士が突然、経営統合したかのように見えるかもしれませんが、実はそうではないんですね。統合の少し前に、アナログ・デバイセズの社長兼CEOであるヴィンセント・ロウチに「どうしてリニアテクノロジーと統合しようと考えたんですか」と直接尋ねる機会があったんですが、「実は15年ほど前から一緒になりたいと思っていた」という意外な答えが返ってきたんです。馬渡が言ったように、シグナルチェーン製品に強いアナログ・デバイセズに対して、電源ICに強いリニアテクノロジーでしたので、「製品を補完できる関係にあるリニアテクノロジーにラブコールをずっと送っていた中で、ようやく機が熟した」というのが彼の答えでした。後になって旧リニアテクノロジーの取締役会長兼共同創業者のボブ・スワンソンにその話をしたら、やはりその通りだったと同意していました。ですから十数年来の想いがようやく実ったという意味合いだったんですね。

顧客も統合を高く評価

統合によるシナジーというお話がありましたが、ビジネスでメリットは出ていますか。

馬渡 当社では「1+1>2」という表現を使っていますが、これまでアナログ・デバイセズがお付き合いしてきたお客様と、リニアテクノロジーがお付き合いしてきたお客様それぞれに、両社の製品を組み合わせてより完成したフルラインアップのソリューションをご提案できるようになったこともあって、新しいビジネスが非常に増えています。それぞれがカバーできていなかった領域のお客様との関係を深めることができたのも、大きなメリットのひとつです。

 さらに、アナログ・デバイセズがフォーカスしてきた特定アプリケーション向けASSP(Application Specific Standard Product)製品と、リニアテクノロジーがフォーカスしてきた標準品との組み合わせで、いわば縦糸と横糸のようなビジネスが実現されるわけです。私自身これからの発展をとても楽しみにしています。

両社の統合に対する顧客の反応や評判はいかがでしょう。

望月 日本法人では、馬渡がカントリーマネージャーとして米国本社とのやりとりを担っていて、そのぶん私は国内のお客様を訪問させていただいております。年間150社を回らせていただいておりますが、どのお客様も統合に対して歓迎の意を示していただいていますね。

 実際に、以前から両社と懇意にしていただいていたある自動車メーカーの経営層の方に統合をご報告したところ、「とても良いことですが、もっと早く統合されても良かったのでは」などとおっしゃっていただくこともありました。知見のある方ほど、デジタル技術だけではモノは作れず、小型化やローパワー化などで差別化を図るには高精度なアナログ技術が非常に重要だということをよく理解されていて、統合の意義を高く評価してくださっています。

かつてリニアテクノロジーは、原則として製品の製造中止はしない、といったことをうたっていました。こうした方針は変わったのでしょうか。

馬渡 新しい価値を提供しながらも、それぞれが持っていた製品やサービスの良さは残していこうというのが米国本社を含めた考えですので、ご質問のようなことは安心していただいていいと思います。実はアナログ・デバイセズとしても、明言こそしていなかっただけで、製造中止はほとんどしない会社だったんですよ。

望月 リニアテクノロジーがなぜそうしたことを明文化できていたかというと、自社ファブを持っていたからなんです。新生アナログ・デバイセズとしても、今後も原則として製造中止はしないという考えは継続していきます。また、低価格が求められるハイボリューム製品は外部ファウンドリーを使う可能性もあるので、そのようなことも視野に入れながら最適な方法を考えていくことになるでしょうね。