「BE:YOND by b-en-g 2018」レビュー デジタル時代を迎えて ものづくり企業は変革していく開催日:2018年10月25日(木)/会場:ANAインターコンチネンタルホテル東京

SPECIAL TALK 1 意外に進んでいない設計部門のデジタル化 プリベクト 北山一真氏 × MONOist 三島一孝氏

IoT時代を迎えて急速に進む、ものづくりのデジタル化。しかし、研究開発から商品企画、製品設計というエンジニアリングチェーンのデジタル化は意外に進んでいない。現状はどうなっているのか。デジタル化を加速するためには何をすべきなのか。製造業に詳しいコンサルタントであるプリベクトの北山一真氏とものづくりスペシャリストのためのオンラインメディア「MONOist」の三島一孝氏が語り合った。

今の設計図は真のデジタル化にはなっていない

株式会社プリベクト
代表取締役
北山 一真

三島氏経済産業省が「ものづくり白書」で指摘しているように、製造業のデジタル化にはサプライチェーン革新とエンジニアリングチェーン革新の側面があります。しかし、エンジニアリングチェーン革新のほうはデジタル化の文脈であまり触れられていません。どのように見るべきだと考えますか。

北山氏エンジニアリングチェーンは研究開発、商品企画、製品設計という流れになるわけですが、この中でもっともデジタル化が進んでいるというイメージがあるのは製品設計工程でしょう。しかし、設計はものづくりの中でもっともデジタル化が遅れている領域。あえて言えば、いまだ昭和の時代の仕事のしかたを続けているのです。

三島氏設計ではCADやCAEなどのデジタルツールをふんだんに使いますが、それでも遅れているのでしょうか。

北山氏確かに、作図にはCAD、強度計算書にはExcel、仕様書にはWordと、設計作業の多くはツールで行われています。ただ、そこで使われているのは「絵」と「文字」だけ。一見するとデジタル化が進んでいるように見えますが、「情報」にはなっていないのです。ですから、人が目で見ないと仕事にならないというのが実際の姿。例えば、設計図を何十枚、何百枚と作ったとしても、後工程は必ず人が目で情報を抜き取り、判断して仕事が始まります。機械が自動的に処理することができないのです。

三島氏そういう意味では、確かに設計現場での自動化はあまり進んでいないようです。

北山氏今は、開発するバリエーションの数が極めて多く、開発サイクルもどんどん短くなっています。開発業務においても自動化を進めて、人間と機械の共存を実現しなくてはなりません。そのためにも、「絵と文字」からの脱却が必要なのです。例えば、CADのパラメトリック機能を応用すれば、CADデータから寸法値を自動的に抽出し寸法情報をデータベース登録する仕組みなどを構築することができます。また、CADデータから寸法を抽出できるなら、その逆に、データベース内の寸法値から自動的にCADデータを作成することもできるようになります。ただ、残念なことに、そうした機能は、設計の現場ではほとんど使われていません。手だれのエンジニアには自動化に対する懐疑もあるのでしょうし、全部を手でやるべきだという精神論が残っているのかもしれません。とにかく、いまだに、絵と文字なのです。

プロジェクト損益を見える化して製品に関わる情報を設計に集める

アイティメディア株式会社
MONOist編集部
編集長
三島 一孝

三島氏そうした“遅れ”に気付いたものづくり企業は、どのように変わっていけばいいのでしょうか。

北山氏この“遅れ”の根本の原因は、エンジニアリングチェーン領域へのシステム投資が少ないことにあります。経営者からすると開発領域はよく分からず、自分事の改革になっていないからです。関心を持ってもらうためには“会計”との連動が必要になります。多くの企業には、年や四半期ごとの期間損益を見える化するERPパッケージの導入は進んでいます。このERPは経営者が関心をもって、大きな予算をつけて大改革を行いました。同様のことをエンジニアリングチェーンでも必要となります。最近は、製品の販売だけでなく、出荷後のサービスや保守でも稼ごうとする企業が増えてきました。このようなビジネスモデルを期間損益だけで評価はできず、プロジェクトごとやプロダクトごとの損益評価の重要性に気付きます。しかし、製品情報が設計と製造で分断が起きており、プロジェクト損益の見える化の弊害となっています。設計と製造で製品情報や部品表(BOM)の連携を実現することで、経営者にプロジェクト/プロダクト損益の見える化に関心をもってもらえます。それらのプロジェクト損益を見える化する仕組みこそが、PLMパッケージとなるのです。
また、製品情報がライフサイクルを通して連携できると、製造以降の実品質データや実際原価データなどを設計へフィードバックるすことができます。近年、IoTの活用が注目されていますが、IoTで収集した実品質データを設計工程にフィードバックすることで真の品質のPDCAサイクルが実現でき、設計にてデータを用いた品質コントロールができるようになるのです。

三島氏PLMパッケージは以前からありましたが、プロジェクト損益の見える化には使われてきませんでした。なぜなのでしょうか。

北山氏それは、技術の領域と会計の領域が分断されていたためです。しかし、PLM製品を使って利益やコストを一気通貫で見せることができれば、設計開発段階でコストの約80%が決まるということを、経営層や会計部門の方々にも理解してもらえるようになります。その結果、製品に関わる情報を設計工程につなぐための投資が十分に行われるようになり、ものづくりのデジタル化が一気に進むのです。

講演会会場

IoT時代になっても日本の強みは地道な改善と継続的な見える化

三島氏将来に向けて、日本の製造業は何をすべきでしょうか。

北山氏海外では、1人の天才を見つけてきて、その人に何億円もの年俸を払って頑張ってもらうという経営スタイルの企業が珍しくありません。しかし、日本の企業はそういうスタイルをまねるべきではない、というのが私の考えです。新卒一括採用で企業に入った人が師匠と弟子の関係性で育っていき、年功序列の終身雇用で家族を守っていくという日本の雇用モデルは、とても良い文化だと私は思っています。海外企業との競争ではいろいろと工夫しなければならないこともあるでしょうが、日本企業にとっての勝機はやはり地道な改善と継続的な見える化にあるのではないでしょうか。であるからこそ、設計のデジタル化や情報化に力を入れていただきたいと思うのです。

三島氏一般の企業でもIoTやAIを活用できるようになった今、ものづくりに対する考え方も大きく変わろうとしています。大げさに言えば、一から再構成するルネサンスが始まっていると表現してもよいかもしれません。ものづくり企業全体の再生を考えると、製造部門だけでIoTやAIの恩恵を享受するのではなく、設計部門の在り方を見直すことも大切なはずです。そのような取り組みを進めることによって、日本のものづくり企業はこれからのIoT時代を勝ち抜くことができると信じています。

関連資料ウンロード

  • BENG 価値創造へのチャレンジ イメージ

    今こそ求められる「価値創造」へのチャレンジ
    負のスパイラルを逆回転させる復権への道

    日本の製造業がスパイラルアップしていくためには何が必要なのか。ローランド・ベルガー代表取締役社長の長島聡氏と東洋ビジネスエンジニアリング常務取締役の羽田雅一の対談。

  • BENG 製品ポートフォリオ イメージ

    日本の製造現場と共に進化を続ける製品ポートフォリオ
    すべては「ものづくりデジタライゼーション」のために

    日本のものづくり産業の未来を切り拓いていくために東洋ビジネスエンジニアリングはどのような製品を展開しているのか。最新のポートフォリオを概観するとともに、IoT領域の注目製品を紹介する。

問い合わせ先

東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
BE:YOND by b-en-g 2018事務局
TEL:03-3510-1590
FAX:03-3510-1626
E-mail:beyond@to-be.co.jp