日経 xTECH元年 特別トップインタビュー

ブロードコム

業界1位か2位でなければ競争はできない

すべてはシンプルで明快
M&A推進の先に描く
ポートフォリオとは

ブロードコム(アバゴ・テクノロジー株式会社)
代表取締役社長

水野 大地

2016年、米Avago Technologies社がBroadcom Corp.を買収、社名をBroadcom Inc.と変えた。新生ブロードコムは有線から無線まであらゆる通信技術で強力な存在となった。これまで様々な企業買収を経て成長してきた企業として動向が注目されてきたが、その目的はどこにあり、何を目指しているのか日本法人代表取締役社長の水野大地氏に、ブロードコムが描くポートフォリオについて詳しく聞いた。

改めてブロードコムの事業について教えてください。

水野 半導体をベースに考えれば、当社の事業は大きく分けて4つあります。それは有線、無線、ストレージ、と産業・車載になります。例えば有線関係ではAI用ASIC、光ファイバーを使ったシステムのDSP、Ethernet SwitchやPHYなどを提供しています。日本が強い車載関係でも、車載環境に合った製品を開発しEthernet SwitchやPHYを提供しております。

2018年度の業績はいかがでしたか。

水野 弊社の2018年度は10月末までとなりますが、市場の後押しもあり、グローバル全体で非常に好調でした。日本においても、付加価値の高いところへの投資をすることで、過去7年間で最高の売り上げ記録に至りました。

 日本における注力事業の一つである産業分野では、サーボモーターやロボット関連を中心に製品開発を行った結果、20~25%増を見込んでいます。また車載分野も大きく成長し、特に電気自動車(EV)向けのアイソレーションチップや車載Ethernet用チップなどで存在感を示すことができました。車載Ethernetチップ「BroadR-Reach」は、日本車載メーカー向けの売り上げとしてはまだまだ小さいですが、国内では倍々ゲームで伸びております。車載 Ethernetに関しては量産出荷実績が1,000万個以上の実績があるBroadR-Reachは、欧州ドイツを筆頭に日本の自動車メーカー各社へと今後広がっていく予定です。2019年も引き続き、産業や車載分野、ASICなど日本市場で需要の高い分野へ注力していきます。

M&Aを推進する狙い

ブロードコムは、昔から様々な企業を買収して大きくなったことで注目されてきました。

水野 そうですね。「M&Aで企業を強くしていくことは当社の一つの方針である」と、CEOのホック・タンも明言しています。これは当社の目的が、「いかにお客様が望む製品を開発し、利益をもたらすか」であるためです。

 当社は約20の各製品事業部があり、Sustainable Franchiseと呼んでおります。それを営業や生産部門が横串を通す事業形態です。各フランチャイズ(製品分野)はそれぞれにP/L(損益収支)を持つファイナンスがあり、利益をもって再投資できることが求められます。ただし基礎研究開発部門は本部が一任しており、これにより様々な無駄を省くことができています。例えばファウンドリーが何nmのプロセスと定義すれば、中央の基礎研究開発部門がPDK(プロセス開発キット)の情報を必要とする事業部と共有します。つまり、当社にある数多くのIPを共通で活用しながら、各フランチャイズがそこに強みを重ねることができるわけです。

 当社はすべてのプロセスをシンプルにし、かつベンチャー企業のように早く動ける体制になっています。CEOへのレポートは、日本法人からCSOを介してCEOへ直接届きます。オフィスも必要最低限で構えており、人員構成も本社の8割はエンジニア、日本のオフィスでも75%がFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)です。M&Aをはじめ、製品開発、エンジニアの採用など、投資するのは付加価値のある部分のみです。

他方で、旧ブロードコムのIoT開発プラットフォームWICEDが、Cypress Semiconductor社に売却後に、大きな業績を上げたような例もあります。

水野 各フランチャイズは、グローバルで1位か2位の強さがなければ競争できません。例えばブロードコムが現体制になる以前、Avago社だけでEthernet Switchや PHYを独自に開発してBroadcom Corp. をキャッチアップしようとすれば、10年以上の年月がかかったでしょうから、マーケットシェアを取るためには買収が必須でした。他方ではWICEDの場合、当社の製品ポートフォリオを見直せば、携帯電話や企業向けのWi-Fiは強かったものの、IoTの売り上げは小さかったため手放す結論に至ったというわけです。Cypress社にはマイコンもあればメモリもありますので、カスタマーリーチがブロードコムとは違います。ブロードコムは汎用マイコンを持っていないため、WICEDであれほどのシナジーを生み出すことはできなかったでしょう。重要なのは、自社の描くポートフォリオの中でいかにシナジーを生み出せるかという点です。

2018年はQualcomm社の買収断念で大きな話題を呼びましたが、その後のCA Technologies社の買収にも何かビジョンがあるのでしょうか。

水野 明確な戦略の基にCA Technologies社を買収しました。2017年末にはBrocade社の買収がありましたが、同社はミッションクリティカルな分野で活用されるデータセンター向けのスイッチメーカーであり、当社の半導体事業の顧客であり補完する立場にあります。Brocade社はメインフレームとストレージを接続するスイッチ装置を提供し、その先にはメインフレームが来るわけですが、CA Technologies社はメインフレーム用ソフトウエアの企業です。つまり、この買収によってメインフレーム周辺の当社のプレゼンスが増えることになります。

日本企業の目指すべき活路

日本市場のお客様へメッセージをいただけますか。

水野 日本は地球上に残された小さな楽園かもしれません。市場がある程度大きかった分、閉鎖された社会で気持ちよく暮らすことができました。しかしこれからはグローバルの市場を見据えたマインドセットが必要とされます。かつて携帯電話は、日本がグローバルをリードしていたにもかかわらず、現状はご存じの通りです。日本はひたすらガラパゴス化を進め、グローバルに日本のトレンドを売り込むことができなかったのです。なぜなら、完璧なものを提供することを目指す間に、グローバルのトレンドが先にセットアップされてしまったからです。

 グローバルで競争する上では、いかに再投資できるかが重要です。半導体の市場を見返してみると、時間が経過するごとに、「価格を安く」するという風潮があります。テレビは新製品が出るたびに安くなりますが、自動車の場合そんなことはありませんよね。これでは半導体メーカーのマージンがなくなっていきます。マージンがなければ再投資できず、競争力を持っている製品が出せなくなります。利益が出なければ、M&Aも、優秀なエンジニアを採用・確保することもできず、グローバルで競争することはできません。

 ブロードコムは、高いマーケットシェアを誇る企業の買収によって、その分野で先行する技術やお客様のニーズを熟知し、再投資してまいりました。例えば近い将来、デジタルエコノミーは確実に変わっていきます。当社の得意とするAIやデータセンターおよび自動車でさえもデータは確実に増えていきます。それらをどう管理し利用するかが重要になることは間違いありません。グローバルトレンドに精通した提案ができるブロードコムにお声がけいただければ、競争力のある製品開発にお力添えできると思いますのでぜひご連絡をいただければ幸いです。

お問い合わせ

アバゴ・テクノロジー株式会社
A Broadcom Inc. Company

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URL:https://jp.broadcom.com/